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  • 『(テヘランの女獅子たち)』 Marjan Kamali, 2024年 レビュー | 戦い続ける女性たちへ捧ぐ物語

    『(テヘランの女獅子たち)』 Marjan Kamali, 2024年 レビュー | 戦い続ける女性たちへ捧ぐ物語

    The Lion Women of Tehran: The life-affirming BBC Radio 2 Book Club pick (English Edition)
    (テヘランの女獅子たち)
    Marjan Kamali, 2024年
    The Lion Women of Tehran
    333 ページ
    2026.03 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る
    日本語未出版


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ テヘランに住む環境の違う二人の女の子の友情
    ✔ 大きくなったら全力で働く女性を夢見た少女たちの現実
    ✔ イランの情勢の移り変わりと、立ち向かい続ける女性たち

    ★★★★★ テヘランで戦い続ける女性たちへ捧ぐ物語。大きくなったらイランの社会の役に立つのだと勉強に励む二人の少女。古い伝統と不平等な社会の間にいながら決してあきらめない。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    古く強い伝統を持つペルシアの都、テヘラン。
    そこで戦い続ける女性たちへ捧ぐ物語。

    この少し前にもイランの女性の小説を読んだばかり。
    こちらの方が少女の友情やその後を描いていて読みやすい内容ではあるけれど、やはりパワフル。
    1950年のテヘランで出会った二人の少女の友情。
    大きくなったらライオンの心を持つ女性となってイランの社会の役に立つのだと勉強に励む。

    しかしテヘラン大学に入学後にイランの社会は怒涛の時代に入り、彼女たちの生活は急変し夢は断たれる。
    スラム街に住むホマは活動家となり危険な人生を選び、裕福なエリーは主婦となりアメリカへ去る。
    ホマはどんなに酷い仕打ちを受けても戦い続ける、なぜか。
    彼女は、そしてイランの多くの人は希望を捨てていないからだとしか思えない。

    エリーと母親の関係も面白い。
    伝統の中で世間体の中で、でも娘のためだけに生きてきた母親と新しい世代であるエリー。
    でも伝統が悪いということではなく、どちらでも選ぶ権利があるということ。

    立て続けに読んだイランの女性を主人公とする小説、どちらも強い。
    どの道を選んでも強い心を持ち続けるのは、彼女たちは希望とイランへの愛国心を捨てていないからだと思う。
    そして小説は常に全くのでっちあげでなく現実の鏡、実際にイランには同じように戦い続ける女性と男性が今もいる。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The Lion Women of Tehran" Marjan Kamali (2024) Review | Powerful story about friendship of 2 girls
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    The Lion Women of Tehran: The life-affirming BBC Radio 2 Book Club pick (English Edition)
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  • 『そして、バトンは渡された』 瀬尾まいこ, 2018年 レビュー | 同じ屋根の下で愛情があれば家族

    『そして、バトンは渡された』 瀬尾まいこ, 2018年 レビュー | 同じ屋根の下で愛情があれば家族


    そして、バトンは渡された (文春文庫 せ 8-3)
    そして、バトンは渡された
    瀬尾まいこ, 2018年
    432 ページ
    2026.03 読了
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    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 血が繋がっていたり繋がっていなかったりの家族の形
    ✔ それぞれの愛情を受けて育つ高校生が主人公
    ✔ 読みやすく心を打たれる、高校生にもぜひ

    ★★★★★ どんな形であっても家族であることは間違いない。血が繋がっている繋がっていない、一緒に暮らし同じご飯を食べること、無理したり冷めてみたりしても、そこに愛情があればうまくいく。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    
    油断していた。
    最初は、子供の頃から次々と親が変わり家族の形が変わる中で、自分の配偶者を見つけるっていう恋愛ものだと思ってた。
    いや、あらすじを書くとそうなんだけどここにはもっと深い愛情がある。
    
    血が繋がっていること、繋がっていないこと、お互いを大切に思い一緒に暮らすこと、同じご飯を食べること、無理したり冷めてみたりしても、そこに愛情があれば、愛し愛されていれば、うまくいく。
    
    どんな形であっても家族であることは間違いない。
    
    みんなそれぞれの形でそれぞれが幸せになれる、という幸せ。
    最後の方はじんわりと流れる涙を拭いながら、これが本屋大賞なのが痛いくらい分かるわと嘆いてしまう。
    素直に受け入れられる読みやすさなので、高校生にも読んでもらいたい。
    心に偏見が生まれる前にぜひ家族の自由な愛情の形を。
    
    
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    そして、バトンは渡された (文春文庫 せ 8-3)
    そして、バトンは渡された (文春文庫 せ 8-3)


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  • 『告白』 湊かなえ, 2008年 レビュー | 告白式ストーリーテリングの力

    『告白』 湊かなえ, 2008年 レビュー | 告白式ストーリーテリングの力



    告白
    湊かなえ, 2008年
    320 ページ
    2026.03 読了
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    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 教師が娘はこのクラスの生徒に殺されたという告白から始まる
    ✔ それぞれの関係者からの告白という形で進む
    ✔ 人間的な弱さや嘘も絡む心理的なミステリーも

    ★★★★★
    ストーリーテリングのパワー。英語のタイトルはConfessionsつまり複数でこの複雑さを物語る。誰が真実を知っていて誰の弱みが出てきているのか。人間の弱さと怖さ。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    このストーリーテリングのパワー。
    教師の告白、そして単純に娘の死の責任の追求と憎しみという一面的な物語を想像していたんだけど、英語のタイトルはConfessions、つまり複数で、そこで初めてこの本の複雑さに気づかされた。

    告白形式なので真相が分かる流れは、誰がどの部分を勘違いしているかもしくは嘘をついているかによって明らかになっていく。
    自分が知っていると踏んでいる人間の本来の姿を知っていく作業のなかで、それぞれの人間的な弱さを暴いていく。
    少年Aの弱さと少年Bの弱さと、強かったり弱かったりの多様な母親像。
    自分ならどうする、って絶対思ってしまう強い引力の一冊。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    “Confessions” Kanae Minato (2008) Review | Japanese school life at extreme
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    告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)


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    告白 (双葉文庫) [ 湊 かなえ ]
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  • 『ベル・ジャー』 シルヴィア・プラス, 1963年 レビュー | 繊細で普遍的な物語

    『ベル・ジャー』 シルヴィア・プラス, 1963年 レビュー | 繊細で普遍的な物語


    ベル・ジャー
    ベル・ジャー
    シルヴィア・プラス, 1963年
    The Bell Jar
    Sylvia Plath, 1963
    388 ページ
    2026.03 読了
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    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 成長物語のモダンクラシック
    ✔ 若い女性の怒りや不安と表面的な成功とのギャップ
    ✔ 若くして死を選んだ詩人が著者の世界観

    ★★★★★ 優秀な学生のエスター、派手だけれど空虚な生活から帰宅したタイミングで精神のバランスを崩す。成功している見た目の裏でギリギリの精神状態だった若い女性の普遍的な物語。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    モダンクラシックの一冊。
    貧しい家庭でありながら優秀な学生のエスター、勉強に励みいろんな賞をもらう生活。
    すべてがうまくいっているように見えるが、ニューヨークでの派手だけれど空虚な夏の仕事体験から帰宅したタイミングで精神のバランスを崩し後半は施設での生活が始まる。

    若者に読んでほしい、とか思う反面、これを自分が10代、20代に読んでいたら衝撃がありすぎて立ち直れないかもというくらい生々しい。
    主人公の抱える説明のできない恐怖は多くの若い女性が抱えるもので、その怒り、絶望感、憎しみ、といったすべての感情は同感してしまう。
    ちゃんとしっかり生きているんだけど、ひとつの過ちですべてが流れて行ってしまう感覚。

    成功してる雰囲気とは裏腹にギリギリの精神状態という危うさ。
    著者はこの本の出版された数週間後に自殺をしているのも有名。

    1960年代に書かれたので、確かに今の社会の状況とは違うし今はあからさまな生きづらさは見えないかもしれない。
    それでも現在の女の子たちはやはり主人公と同じような違和感を抱えてるし、今後もそう簡単には変わらない。
    この本はやはり何十年も先も読まれ続けることになるであろうと思う。
    🔽 関連ページ 🔽

    English review
    “The Bell Jar” Sylvia Plath (1963) Review | Young woman and her uncertainty
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    ベル・ジャー
    ベル・ジャー (I am I am I am)


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    ベル・ジャー (I am I am I am) [ シルヴィア・プラス ]
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  • 『ファザーファッカー』 内田春菊, 1995年 レビュー | 堕ちるところまで堕ちる自伝的小説 

    『ファザーファッカー』 内田春菊, 1995年 レビュー | 堕ちるところまで堕ちる自伝的小説 



    ファザーファッカー
    内田春菊, 1995
    160 ページ
    2018年 読了
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    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 漫画家の著者による初の小説
    ✔ 養父による性的虐待から逃れ職を転々とする自伝的長編小説

    ★★★★☆ 悲しいというよりも絶望的で、堕ちるところまで堕ちた実母と義父の元で育つ少女。逃げるという選択肢がなかなか出てこないという受け入れがたい現実も。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    「ところが、私は思い出した。十五歳のとき、私は娼婦だったのだ。売春宿のおかみは私の実母で、ただ一人の客は私の育ての父だった。」

    暗いストーリーというのはわかっていたけど、やっぱり暗い。
    悲しいというよりも絶望的で、堕ちるところまで堕ちた実母と義父の元で育つ少女。
    被害を受けた人間にとって逃げるという選択肢がなかなか出てこないという受け入れがたい現実も。

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    ファザーファッカー (文春文庫)


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  • 『(ペルシャ人一家)』Sanam Mahloudji 2025年 レビュー | 誇り高きイラン人女性の物語 

    『(ペルシャ人一家)』Sanam Mahloudji 2025年 レビュー | 誇り高きイラン人女性の物語 


    The Persians: A Novel
    (ペルシャ人一家)
    Sanam Mahloudji, 2025
    The Persians
    384 ページ
    2016.02 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る
    日本語未出版


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 3代にわたるイラン人女性を描くデビュー作
    ✔ イラン革命前と後、アメリカ移住後のそれぞれの世界
    ✔ プライドの高い彼女たちと家族のつながり

    ★★★★★ イラン革命、テヘランに残る祖母と孫娘、アメリカにわたる残りの家族。「アメリカなんてママの宝石よりも短い歴史しかないのよ」高貴で傲慢でわがままで美しく愛らしい女性たち。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    この月は勝手に読書テーマを女性と決めて、最初に読んだのがこれ。
    パーフェクトな選択。

    イランの英雄を祖先とする由緒正しきValiat家、70年代のイラン革命で家族は二手に分かれる。
    テヘランに残る祖母と孫娘、アメリカにわたる残りの家族。
    『ペルセポリス』のあの雰囲気があるけれど、こちらもしっかりと当時のテヘランでの状況を伝える。
    つまり、表ではちゃんと髪の毛を隠す女性も違法のクラブでは性と薬物に手を染め、でも同時に政治的な活動もする、という一筋縄ではいかない現状。
    そしてアメリカへ渡った残りの家族は今度はアメリカで贅沢な生活を続けるも、こちらも酒に薬物にゴシップにまみれた現状。
    地理的に二手に分かれているうえに、1940年代のテヘランを生きた祖母と1980年代のテヘランを生きた孫娘の環境の差も浮き出てきて、まさにダイナミックな物語。

    「アメリカなんてママの宝石よりも短い歴史しかないのよ」

    それぞれの分かれた世界で生きる3世代のイラン女性たち、高貴で傲慢でわがままで美しく愛らしい女性たち。
    彼女たちの望みは、好きなように生き、好きなように愛し、好きなように捨て、それでもお互いに向き合うこと。

    世界最古といわれる文明を持つイラン、その伝統の中できちんとしたプライドの中で生きてきたイラン人女性の葛藤。
    ずっと続いてきた欧米中心の思考から少し目をそらすと複雑で圧倒的な世界が広がっていることを、特に今のご時世では知っておくべきだと思う。

    日本語はないようですが、英語は少し難しいかも、くらいのレベルです。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    “The Persians” Sanam Mahloudji (2025) Review | Dynamics of the women
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    The Persians: A Novel
    The Persians: A Novel (English Edition)


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    The Persians【電子書籍】[ Sanam Mahloudji ]
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  • 『侍女の物語』 マーガレット アトウッド, 1985年 レビュー | 女性嫌悪の最終地点ディストピア 

    『侍女の物語』 マーガレット アトウッド, 1985年 レビュー | 女性嫌悪の最終地点ディストピア 



    侍女の物語
    マーガレット アトウッド, 1985年
    The Handmaid’s Tale
    Margaret Atwood
    337 ページ
    2018年 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 2017年テレビドラマ化されて再度人気
    ✔ 環境汚染などで出産率が急激に下がる近未来のSF
    ✔ タスクのためだけに存在する女と社会を支配する男

    ★★★★★ 近い未来に起こりそうなディストピア。女性嫌悪の最終地点とでも言うべきか、女性は生身の人間ではなく役割を果たすことのみを許された道具。起こりうる可能性が無きにしも非ずの怖さ。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    アトウッド大ファンのカナダ人の友人に借りたんですが、当時入院中だった身には暗かった...

    近い未来に起こりそうなディストピア。
    出生率の低さが戦争をも引き起こす社会で、主人公オブフレッドは妻の分身として子供を作るという役割を割り当てられた侍女の一人。
    この地に残されたわずかな妊娠できる体を持つ女性である彼女は少し前までの自分の夫と子供との生活を忘れられずにいた。

    女性嫌悪の最終地点とでも言うべきか、女性は生身の人間ではなく役割を果たすことのみを許された道具。
    妻という存在も象徴であり、夫婦間の愛情はない。
    分析しようとすると永遠に終わりそうにないけど、この物語を80年代に書いてしまうアトウッドの才能の恐ろしさ。

    ただ、ストーリーが面白くて惹かれるだけでなく、ひょっとしたら20年後には世界はこうなってるのかも、という怖さに引き付けられる。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The Handmaid's Tale" Margaret Atwood (1985) Review | Interesting yes but scary
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    侍女の物語


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    侍女の物語 (ハヤカワepi文庫) [ マーガレット・アトウッド ]
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  • 『小さきものたちの神』 アルンダティ ロイ, 1997年 レビュー | 感動が迫ってくるインド人作家の非線形の語り

    『小さきものたちの神』 アルンダティ ロイ, 1997年 レビュー | 感動が迫ってくるインド人作家の非線形の語り


    小さきものたちの神
    小さきものたちの神
    アルンダティ ロイ, 1997
    The God of Small Things
    Arundhati Roy, 1997
    2019.12 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ インドの作家、活動家の非線形の語り口のデビュー作
    ✔ 南インドを舞台とした伝統的な文化や家庭のあり方への問
    ✔ ブッカー賞受賞

    ★★★★★ 少し少なめに愛されていると認識する子供時代と少しずつ少しずつ壊れていく日常。その繊細な美しさに驚き憑りつかれ、読み終わって本を閉じた時にじんわりと感動が迫ってくる。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    インドの作家で、同僚にオススメしてもらったもの。
    なので全く予備知識もなく読んで、その繊細な美しさに驚いて、読み終わって本を閉じた時に、じんわりと感動が迫ってきた。

    たしかに読みづらい。
    それは事件を明確にしないまま時系列的にあちこちに飛んでいくという点と、インドの文化を知らないとついていけない部分があるという点で。
    分からない単語やコンセプトも多く、調べながらの読書。
    まさにトラウマを抱える人が、一番重要な事件を記憶の先頭に立たせるのに、その他の事についてぐるぐると思い起こすかにように話はあちらこちらへ飛んでいく。

    これがインド人(インド系でなく、インド人)女性によって書かれたという意義。
    アジア人、インド人の女性としての感覚、視点、描写は、西洋の中で生まれ育ってしまうと光ってこない。
    「不可触民」がいるという生活、母であり、女であり、邪魔者であるという生活。
    少し少なめに愛されていると認識する子供たち(双子) 、コンプレックス、差別、トラウマ、嫉妬、愛情、繋がり、禁断の愛、無。
    少しずつ少しずつ壊れていく。

    「子供たちが昼間慕う男性、母が夜に愛するその男性」という表現を含め、時に美しく時に冷たく、時に率直な表現が散りばめられていて、それを追うのが困難でもあり、この本の楽しみでもあり、取りつかれたように次のページに進んでしまう。
    さすがブッカー賞。

    これを読んで、ケーララ州に行きたくなって、実際に行ってカタカリという古典舞踊も一応見てきましたよ。

    背景がすでに日本の日常からかけ離れているので、詩的なこの本の美しさを訳すのは大変そう。
    オンラインでは日本語での定価がなさそうなので古本で探してみてください。
    イギリスではいまだに売れている本だけどやっぱり日本にはなじみがなかったのかな。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The God of Small Things" Arundhati Roy (1997) Review | Haunting, emotional, beautiful
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    小さきものたちの神
    小さきものたちの神


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    ーー

  • 『続氷点』 三浦 綾子, 1971年 レビュー | 辛いメロドラマの続編 

    『続氷点』 三浦 綾子, 1971年 レビュー | 辛いメロドラマの続編 


    続氷点(上) (角川文庫)

    続氷点
    三浦 綾子, 1971
    768 ページ (上下 368 + 400 ページ)
    2019.06 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ シリーズ続編
    ✔ 家族に愛されずも健気に生きる少女のその後
    ✔ 北海道の厳しい冬景色が舞台

    ★★★★☆ あの辛い辛いメロドラマの氷点の続編。母の夏枝のジェラシーとエゴがもっと全面に出てきて、もっとひどい状態にもなるけどだけどやっぱり面白くて、上下巻あっという間。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    
    来た、あの辛い辛いメロドラマの氷点の続編。
    前回は苦しみ歪んでいない愛情を知らずにひたすら健気に生きる陽子ちゃんのストーリー。
    今回は自殺未遂後のその後の家族との生活。
    
    単純な憎さではなくて、母の夏枝のジェラシーとエゴがもっと全面に出て、さらには陽子を性的対象として見る兄と父。
    そして、産みの親とその家族。
    
    絵にかいたようなメロドラマだけど、やっぱり面白くて、上下巻あっという間に読んでしまう。
    しかしみんな自分勝手もいいところ。特に男たちは見事に。でも夏枝の僻みが一番怖い。
    最後の方はいままで暗に示されていたキリスト教の教えもしっかりと絡まってきて、北海道の厳しい景色とも重なり、壮大な物語となっていく。
    
    
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    続氷点(上) (角川文庫)
    続氷点(上) (角川文庫)

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  • 『猛スピードで母は』 長嶋有, 2005年 レビュー | 強さと弱さのリアルな家族の日常 

    『猛スピードで母は』 長嶋有, 2005年 レビュー | 強さと弱さのリアルな家族の日常 


    猛スピードで母は (文春文庫)
    猛スピードで母は
    長嶋有, 2005
    110 ページ
    2020.07 読了
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    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 家族ドラマの短編集
    ✔ 少女視点の親の離婚と少年視点のシングルマザーの二本
    ✔ 子供のリアルな心境の動き

    ★★★★☆ ドラマチックではないし、ふんわり系でもない家族ドラマ。リアルな日常と人には伝えにくい心情の動きや行動がそこにはある。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    
    二本の短編。
    ふんわり系と思っていたら、違う。
    最初のストーリーには、少女の目線からの親の離婚とその愛人のことが、
    もう一つには少年から見たシングルマザー母のことが。
    ドラマチックではないし、ふんわり系でもなく、リアルな日常と人には伝えにくい心情の動きや行動がそこにはある。
    
    初めての作家で女性かと思ったら男性だった。
    なのに女の子の心の動きや強い女性のちらりと見せる弱さの背景の動きなどが心地よい。
    
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    猛スピードで母は (文春文庫)
    猛スピードで母は (文春文庫)


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  • 『乳と卵』 川上未映子, 2008年 レビュー | 女性の普通をタブー視する社会への挑戦 

    『乳と卵』 川上未映子, 2008年 レビュー | 女性の普通をタブー視する社会への挑戦 


    乳と卵 (文春文庫 か 51-1)
    乳と卵
    川上未映子, 2008
    144 ページ
    2020.05 読了
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    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 主人公と姉とその娘の3人の3日間
    ✔ 女であること、女の身体のことを新鮮な文体で描く
    ✔ 世界的にヒットした芥川賞受賞作

    ★★★★★ 女であること、というテーマから、具体的にツールになる身体のパーツ、女同士を見る事見られる事。実は日常茶飯事だけど、タブーになる女性の普通を、不思議な文章で表す。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    こんな作品は他にない。

    女3人の3日間。
    女であること、というテーマから、具体的に性的なツールになる胸、生殖のツールになる卵子、その過程である生理、女同士を見る事、見られる事。
    男の役割はなんなのか。
    そういう実は日常茶飯事だけど、タブーになる女性の普通を、不思議な文章で表す。
    読みにくい長文と入り混じる大阪弁で読者を惹きつけて離さない。

    本には実は2作品が収められていて、もうひとつの方は繰り返す日常の中で女性が抱く淡い希望について。

    二作品とも地に足がついていて、日常の真実を語っていて、テーマや物語は鋭いのに、文体は優しく温かい。

    世界中でファンが多い著者、私もロンドンで知って日本語で読む機会を待っていました。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Breasts and Eggs" Mieko Kawakami (2008) Review | Women's normality, society's taboo
    tag 女性主体
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    乳と卵 (文春文庫 か 51-1)
    乳と卵 (文春文庫 か 51-1)


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    乳と卵 (文春文庫) [ 川上 未映子 ]
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  • 『春にして君を離れ』 アガサ・クリスティー, 1944年 レビュー | 母の苦悩を描く名作

    『春にして君を離れ』 アガサ・クリスティー, 1944年 レビュー | 母の苦悩を描く名作



    春にして君を離れ
    アガサ・クリスティー, 1944
    Absent in the Spring
    Agatha Christie, 1944
    イギリス
    336 ページ
    2020.04 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ アガサクリスティーの別名での作品
    ✔ 家族のために犠牲にしていると思う女性
    ✔ 背景はバグダットから英国への帰国の旅路

    ★★★★☆ 多くの人、特に母親が歩む道である被害者妄想というか。家族のために自分を犠牲にして、過ちを犯さないようレールを敷いてあげているのに。当時の彼女の別ペンネームの作品。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    いわゆるアガサ クリスティのミステリーではない、当時の彼女の別ペンネームの作品。

    何も知らずに読んだけど、途中からなぜこの本が面白いのかだんだんわかってくる。
    それは、多くの人が歩む道であり、たぶん母親となる女性に多いのかもしれないけど、これは被害者妄想というべきか。

    バグダッドから一人帰国する旅の途中、彼女は自分の家族について考える。
    家族のために自分を犠牲にしてやってあげてるのに、過ちを犯さないようレールを敷いてあげているのに。
    そういう独り善がり。
    さらには、夫はたしかに優しいし、優しさから、主人公が好きな事をしてもらう。
    でも最終的にそれは彼女にとっての幸せか。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
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    春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)


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  • 『密やかな炎』 セレステ•イング, 2017年 レビュー | 女たちの内なる怒りを描く

    『密やかな炎』 セレステ•イング, 2017年 レビュー | 女たちの内なる怒りを描く



    密やかな炎
    セレステ•イング, 2017
    Little Fires Everywhere
    Celeste Ng, 2017
    2020.03 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 社会的地位や家族構成の違う二つの家族
    ✔ 母親と娘の関係
    ✔ アマゾンでドラマ化

    ★★★★☆ 二つの家族、二つの逆の生き方。フェミニズムを語るときそこには常に人種や貧富の差、社会的地位、イデオロギーの違いなどが確実に存在している。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    この映像化に関わったので同僚から借りた本。

    静かにゆっくりと始まる、まさにこの原題のように小さな炎があちらこちらで生まれていく。
    二つの家族、二つの逆の生き方、異なる母親像に、異なる娘像、そして異なる運命。


    登場人物はほの女性で彼女たちの内側の怒りを描くんだけど、ここで重要なのは女性と言っても一つの存在ではなく、社会的地位と貧富の差が女性を分け隔てるということ。
    フェミニズムを語るときに重要なことは、そこには常に人種や貧富の差、社会的地位、イデオロギーの違いなどが確実に存在しているという事実。
    フェミニズムの一言でまとめられる問題じゃない。

    女性同士の問題を、なんというか心持ち分かりやすくしすぎている気がしてそこがちょっと気になるけど、でも私のいつもの屁理屈なだと思う。

    もうちょっと壊れていく感じを出していたら私の好みにもっと近づくのではと密かに思う。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review “Little Fires Everywhere” Celeste Ng (2017) Review | Women’s inner anger
    tag フェミニズム
    tag 女性主体
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    密やかな炎


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  • 『(ケシの海)』アミタヴ・ゴーシュ , 2008年 レビュー | アヘン戦争直前の奴隷船にて

    『(ケシの海)』アミタヴ・ゴーシュ , 2008年 レビュー | アヘン戦争直前の奴隷船にて



    Sea of Poppies
    Amitav Ghosh, 2008
    (ケシの海)
    アミタヴ・ゴーシュ
    559 ページ
    2025.12 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る
    日本語未出版



    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ アヘン戦争へ向かう時代のインドが舞台の歴史小説3部作
    ✔ 人種も階級も超えて奴隷船の上でつながる登場人物たち
    ✔ 植民地主義をテーマにするアメリカ在住の英語インド人作家

    ★★★★ 大英帝国が治めるインド、そこで行われるケシの栽培、そしてアヘン戦争の匂いを受けて奴隷船に乗り込む人々。それだけでもう本を開く前から自分好みなのは一目瞭然。3部作、先が気になる。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    噂には聞いていたけど、やっぱり圧倒的に面白かった。

    大英帝国が治めるインド、そこで行われるケシの栽培、そしてアヘン戦争の匂いを受けて奴隷船に乗り込む人々。
    それだけでもう本を開く前から自分好みなのは一目瞭然。

    開けてみると、個性的な登場人物がどんどん出てくる。
    辛い結婚生活から逃げた主人公の女性ディーティ、フランス人ポーレットとインド人ジョドゥの兄妹愛、破綻した繊細なラジャに、秘密を持ったアメリカ人船乗りザッカリー、などなどがそれぞれの思いを胸にモーリシャス諸島へ向かう奴隷船アイビス号に乗り込む。
    その流れだけで分かるよう、壮大なストーリーがこの3部作で描かれるのです。

    女性たちの無謀さと、それについて行ってる男性たちだったり、騙されて人生が一転するラジャの変化などがエンターテインメントを込めて書かれているのでこの後どうなるのか。
    まだ最初の一冊を読んだばかり、先が気になる。

    日本ではまだ翻訳されてないので残念。
    英語はちょっと難しいです、というかインド英語やそれぞれの訛りなどもあり分かりにくい。


    🔽 関連ページ 🔽
    English review “Sea of Poppies” Amitav Ghosh (2008) Review | Leading up to Opium War
    category 文学 インド 南アジア/Indian S. Asian Lit.
    tag インド/India
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    Sea of Poppies: Ibis Trilogy Book 1 (English Edition)

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  • 『葡萄が目に染みる』林真理子, 1984年 レビュー | 現実に近い青春の緩さ

    『葡萄が目に染みる』林真理子, 1984年 レビュー | 現実に近い青春の緩さ



    葡萄が目に染みる
    林真理子, 1984
    240 ページ
    2025.12 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 片田舎の地味な女の子の青春小説
    ✔ いわゆる地味な高校時代というリアルなストーリー
    ✔ 過ぎ去る青春の切なさ

    ★★★☆☆ 片田舎の地味な女の子。それは小説や漫画にあるなにか起こりそうな雰囲気ではなく、多くの人が傍観する限りなく現実に近い空気。ちょっとしたざわめき、周囲のちょっとしたセコさ、自分のセコさ。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    キラキラしない青春の物語。

    片田舎の地味な女の子。
    できるだけ存在を隠すようにしたり、好きでもない子と親友になったり、そして圧倒的なスターと言える学生を全校生徒と共に見つめる、という学生生活。
    それは小説や漫画にあるなにか起こりそうな雰囲気ではなく、多くの人が傍観する限りなく現実に近い空気。

    そんな高校生活にある、ちょっとしたざわめき、周囲のちょっとしたセコさ、自分のセコさを細かく描いている。
    片田舎の学生生活は過ぎ去ったあとに懐かしさと共にちょっと切なくなったりする。

    出版から40年以上、作者が自分をかなり重ねたんだろうとも分かるけど、でも個人的だからこそ、やっぱり今読んでも読者には通じるものがある。
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    葡萄が目にしみる (角川文庫 緑 579-8)


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  • 『パチンコ』 ミン・ジン・リー, 2017年 レビュー | 韓国から日本へ渡る女性のストーリー

    『パチンコ』 ミン・ジン・リー, 2017年 レビュー | 韓国から日本へ渡る女性のストーリー



    Pachinko
    Min Jin Lee, 2017
    パチンコ
    ミン・ジン・リー
    512 ページ
    2021.10 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 1910年の韓国から日本に渡った主人公
    ✔ 家族を抱えて貧困も戦争も生き延びる母の姿
    ✔ 韓国と日本の関係と歴史が一人の女性を通じて見えてくる

    ★★★★★ 韓国から日本に渡った一人の女性、彼女の人生で絶えることなく続く苦労と小さな幸せと愛。人生はパチンコの如く。負けると決まっている勝負、なのに続けてしまう。力強いエピック。


    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    1910年の韓国から日本に渡った一人の女性、彼女の人生で耐えることなく続く苦労と小さな幸せ。

    一人の女性の焦点を当てることで、より戦時中のリアルな苦しみが浮かび上がり、かえって普遍的なストーリーとなっていく。
    在日コリアンの歴史、日本と韓国の歴史、もしくは日本人と韓国人の歴史といったほうが正しいのか、その関係は簡単には概要を掴めない、というのも今日もまだ続き変わり続けているから。
    戦争は間違いなく関係悪化の要素の一つだけれどそれだけでもない。

    この本はいかに一瞬の不運やタイミングの違いでその後の人生が大きく揺らされるかを豊かな表現で描く。
    アジア人でないと分かりにくいところはあると思うけれど、アメリカ出版で世界中でベストセラー(むしろ日本の反応が遅くて鈍かった)

    韓国はドラマもそうだけどストーリーテリングが上手。
    ドラマチックな流れで、でも実際に戦時中や戦後はこんなスピードで人生は流れていったんだろう。

    フェデリコ•フェリーニは、人生は祭りだというけれど、この本は、「いや、人生はパチンコだ」といっている。
    フェアじゃない。負けると決まっている勝負。それでも続けてしまう。

    AppleTVのシリーズも観てみたい。



    🔽 関連ページ 🔽

    English review “Pachinko” Min Jin Lee (2017) Review | Korean-Japanese epic
    tag 日本史
    tag 植民地主義
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  • 『未完の肖像』アガサ クリスティー, 1962年 レビュー | 未知の世界に触れたい女性の苦悩

    『未完の肖像』アガサ クリスティー, 1962年 レビュー | 未知の世界に触れたい女性の苦悩



    未完の肖像
    アガサ クリスティー
    Unfinished Portrait
    Agatha Christie, 1962
    559 ページ
    2022.05 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ クリスティーの別名メアリ・ウェストマコットでの作品
    ✔ 良妻賢母である女性が抑え続ける願望
    ✔ 母と娘の微妙な関係、細かな心の動きを描く

    ★★★★☆ 外に出たい、未知の世界に触れたい、でも妻であり母である女性にとってそれは抑え続けるべき欲望。そして母と娘の微妙な関係。アガサ・クリスティのさすがのストーリーテリング。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    またもやミステリーではないアガサ・クリスティ。
    メアリ・ウェストマコットという名で書かれた本の一つ。
    よく女性を理解し、特に感情を内に制限された、一昔前のご婦人の心の動きを細かく描く。

    親との幸福な子供時代の家庭のあとの、夫との幸福であるべきだった家庭。
    外に出たい、未知の世界に触れたい、でも妻であり母である女性にとってそれは抑え続けるべき欲望。
    そして母と娘の微妙な関係。
    彼女の頭の中でぐるぐると渦巻いている、さすがのストーリーテリング。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review “Unfinished Portrait” Agatha Christie (1962) Review | Christie without mystery
    タグ: 女性主体
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  • 『あの家に暮らす四人の女』 三浦しをん, 2018年 レビュー | 現代版細雪

    『あの家に暮らす四人の女』 三浦しをん, 2018年 レビュー | 現代版細雪

    
    
    
    
    
    🔽 基本情報 🔽

    あの家に暮らす四人の女
    三浦しをん 2018
    Shion Miura
    368 pages
    2025.9 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 同居する4人の女性の日常を描く
    ✔ 谷崎潤一郎の細雪をベースに
    ✔ 正しいカタチなんてない、普遍的でない「家族」

    ★★★★☆  同じ年代の女性なら思うだろう、「なんか、いいなあ」。正しい家族はない。家族は普遍的ではない。みんな違ってみんないい、は個人だけじゃなく家族にも当てはまる。本物の女の絆ほど強いものはない。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    同じ年代の女性なら思うだろう、「なんか、いいなあ」
    なるほど、谷崎潤一郎の細雪をベースにしたものなのか。

    最近は家族という概念についてよく考える。
    どうも家族というのは揺るぎないもので理想の形があってみんな同じような「家族」を作り上げるべきで、そうじゃない人たちが変わってる、と思いがちなことについて。
    みんな違ってみんないい、は個人だけじゃなく家族にも当てはまる。
    正しい家族はない。家族は普遍的ではない。
    血が繋がってたらもちろんいいよね、でもそれは一つの要因。
    第一そんなことにこだわっていられるほど人生は長くない。
    なんとなく手に取ったこの本も、前に読んだ「汝、星のごとく」もそうで、いわゆる理想じゃない家族の形を肯定する。
    きっと今の日本は特にそう言ってくれるものが必要なのかもしれない。
    社会が定めた理想なんて、もう無理。

    細雪は大昔に読んだので記憶が定かじゃないけど、こんな感じで女たちが忙しそうにうろうろしてる話だった。
    本物の女の絆ほど強いものはない。
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  • 『 (アカバドーラ) 』ミケラ・ムルジア 2009年 レビュー | サルデーニャで終止符を打つ女性

    『 (アカバドーラ) 』ミケラ・ムルジア 2009年 レビュー | サルデーニャで終止符を打つ女性



    Accabadora
    Michela Murgia, 2009
    (アカバドーラ)
    ミケラ・ムルジア
    208 pages
    2024.11 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る
    日本語未出版



    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ イタリア、サルデーニャ州の伝統「終止符を打つ女性」
    ✔ 保守的な社会における女性の立場や魔力
    ✔ サルデーニャを代表する作家の有名な小説

    ★★★★★ イタリア、サルデーニャで末期患者やその親族の苦しみに終止符を打つ女性のこと。善か悪か、天使か悪魔か死神か、それはもう問題ではない。圧倒的な威厳を持った一冊。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    小説「アカバドーラ」現代サルデーニャ文学の最高峰。
    アカバドーラとは、末期患者やその親族の苦しみに終止符を打つ女性のこと、そう、その町で暗黙の了解の中、患者に安楽死をもたらす役目を背負った女性。

    とてもサルデーニャ的でとても地中海文化的。
    土埃の立つ乾いた家の壁、バールに座っている男たち、一日中家事に追われる女たち。
    草原に緑はなく茶色に乾いた草がいつこの地を炎に包もうかと小さな火花を待つ。

    生を与える助産婦が女性なら、生を終わらせるのも女性。
    少女マリアを引き取ってくれた独り身の女性は時折真夜中に黒尽くめの服を着て静かに家を出る。そして翌朝何もなかったかのように帰って来る。

    善か悪か、天使か悪魔か死神か、それはもう問題ではない。
    いま行われるべきか否か。

    サルデーニャでは実際に存在していたと考えられている。
    窒息という方法か、もっと有名なのは槌を使用する方法。
    現在も安楽死の問題は解決しないし、間違いなく客観的に100%正しいという答えは出てこないかもしれない。

    伝統に縛られた厳格な小さな町で、その大きく揺れる心境を圧倒的な力強さと威厳を持って描く一冊。
    日本語もいつか出るといいですね。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Accabadora" Michela Murgia, (2009) Review | A woman who ends life
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    Accabadora (English Edition)


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    ★★★★★ Accabadora, a woman in Sardinia who ends the suffering of very ill and their families. Is she an angel or a devil? That’s not the point any more to them. A book with an unusual dignity.

  • 『ハピネス』 桐野夏生, 2016年 レビュー | みんな嘘と見栄ばっかり

    『ハピネス』 桐野夏生, 2016年 レビュー | みんな嘘と見栄ばっかり



    ハピネス
    桐野夏生, 2016
    Natsuo Kirino
    456 pages
    2024.07
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ タワマンに引っ越して始まったプチセレブ生活
    ✔ ママ友の関係に縛られ嘘と見栄に縛られた日常を描く
    ✔ 気疲れするけれど、爽快な読了感

    ★★★★☆ 一生縁はないであろうプチセレブ生活。ママ友は家にあげないというのが面白い。あくまで外面しか見せない。結局みんな苦労してて、嘘と見栄ばっかりで、小さな世界でもがいてる、そういうもの。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    一生縁はないであろうプチセレブ生活。

    ママ友関係で縛られて、タワマンのランクを常に意識してお受験して、着るものにとことん気を配って、でも家庭内のことは秘密ばかり。

    すっごいセレブじゃなくてプチセレブというのがポイント。
    ママ友は家にあげないというのが面白い。あくまで外面しか見せない。結局みんな苦労してて、嘘と見栄ばっかりで、小さな世界でもがいてる、そういうもの。

    主人公がちょっと幸せ向かう感じになるのは嬉しい。失敗は恐れなくていい。
    続編もあるんだとか。
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  • 『The incendiaries』 R. O. Kwon, 2018年 レビュー | パンクなカルト恋愛小説

    『The incendiaries』 R. O. Kwon, 2018年 レビュー | パンクなカルト恋愛小説

     
    The incendiaries
    R. O. Kwon, 2018
    214 pages
    2024年6月 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る
    日本語未出版


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 魅力的な韓国系の女の子に恋をする白人青年
    ✔ 彼女がハマるカルトの世界に引き込まれていく
    ✔ 文章の表現が詩的で新鮮な読書体験

    ★★★☆☆ 韓国系の魅力的な女の子に惹かれる普通の男の子の視点。彼女はカルトにハマり行動もエスカレートしていく。文章の表現がまるで詩のようで新鮮さはある。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    ダークでリアルでパンクな若者の日々。
    韓国系アメリカ人の魅力的な女の子、その子に惹かれる普通の男の子。
    男の子が見つめる中、女の子はどんどん北朝鮮がテーマの白人の男の子がリーダーのカルト(つまり実態もメッセージも脆い)にハマり行動もエスカレートしていく、という流れ。

    なんかちょっとパンクな感じで、カルトやテロリズムに繋がっていくんだけど、現代文学ゆえ表面的な雰囲気のまま。
    文章の表現がまるで詩のようで新鮮さはあるんだけど、深さがないのが残念ではある。

    複雑な心境にあるはずの女の子にもナレーターである男の子にも感情移入ができない。
    そこを狙っているのかもしれないんだけど、そのせいで私の好みからは外れてしまう。

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    English review
    "The incendiaries" R. O. Kwon (2018) Review | A bit of punk, a lot of cult love story
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  • 『美は傷』 エカ•クルニアワン, 2002年 レビュー | 地に宿る魂の苦しみと共にある女性

    『美は傷』 エカ•クルニアワン, 2002年 レビュー | 地に宿る魂の苦しみと共にある女性



    Beauty is a wound
    Cantik Itu Luka
    Eka Kurniawan, 2002
    美は傷
    エカ•クルニアワン
    原語=インドネシア語
    読了=英語訳
    480 pages
    2024年4月 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 死んだはずの有名な売春婦の霊が娘に会いに戻ってくる
    ✔ インドネシアのつらい歴史と共に生きた女の壮大なストーリー
    ✔ 美しいことは不幸を呼ぶ、唯一の醜い娘に希望を託す

    ★★★★★ その地に宿る魂の苦しみ、植民地としての過去、蔑ろにされる女性の尊厳、生きていくための手段。暴力と愛と呪い。痛々しくマジカルリアリズム、強く生きる女たちの壮大な物語。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    インドネシアの町に死んだはずの売春婦の女性が戻ってきた。

    強く美しい女たちの物語は、いつも男たちによって泥沼にされる。
    その地に宿る魂の苦しみ、植民地としての過去、蔑ろにされる女性の尊厳、生きていくための手段。暴力と愛と呪い。なるほど、マジカルリアリズム。

    女性は自分の美しい娘の成長した姿を確認するまでは死ぬに死にきれず、唯一の醜い娘の幸福を確信する。だって外見の美しさは歴史、人種、宗教や政治、権力を越え、その子の人生の傷でしかないから。

    自分は何とか生き抜いた、でもそれぞれの子にそれぞれの苦しみと呪いがある、まるでマルケスの百年の孤独のような何代にも渡る一族のストーリーを、痛々しくリアルに描く。

    この物語はインドネシアだからこそ生まれてきた物語であり、世界中の人の心を揺さぶった。
    一度ページをめくったらやめられない、強く生きる女たちの壮大な物語。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Beauty is a wound" Eka Kurniawan (2002) Review | Mix of history, religions, power, and abuse


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    美は傷 (アジア文芸ライブラリー)



    Beauty is a Wound (English Edition) Kindle版




  • 『黄昏の彼女たち』サラ・ウォーターズ, 2014 レビュー | 女性二人の恋愛と犯罪

    『黄昏の彼女たち』サラ・ウォーターズ, 2014 レビュー | 女性二人の恋愛と犯罪



    The Paying Guests
    Sarah Waters, 2014
    黄昏の彼女たち
    サラ・ウォーターズ
    595ページ
    2024年3月 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 同性愛をテーマにしたミステリーを描く著者の作品
    ✔ 母と暮らす家に下宿人を取った主人公、美しい若妻に恋をする
    ✔ ついに起きた犯罪、いつ捕まってもおかしくない緊迫した状況

    ★★★★★ 保守的な母親と静かに暮らしていくはずの女性、下宿人の若い夫婦。女性は控えめで美しい妻の方に惹かれてゆく。サラ•ウォーターズだから期待どおりハラハラドキドキの一冊。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    サラ•ウォーターズだから期待どおりハラハラドキドキの一冊。
    描写も細かくて、どんどん爆走が続いてこっちまで、いやちょっとそれはまずいんじゃない、と突っ込みたくなる。

    「荊の城」よりストーリーを追いやすいけど、浅い物語というわけではない。
    ここでも、一筋縄では行かない女性が中心。

    第一次大戦後、ロンドン郊外で保守的な母親と静かに暮らしていくはずだった女性。
    裕福な家庭だったのに戦争で男手を失くし、唯一の収入源として部屋を貸し出すことになり下宿人としてやってきた若い夫婦。
    そして女性は美しい妻の方に惹かれてゆく。そして徐々に良くない方向に。
    これは操りなのか純粋の愛なのか。誰が誰を操っているのか。

    控えめな下宿人の妻、「荊の城」のように仕方がない私が守ってやろう的な心構えだったのに、なんというか結局翻弄され振り回される、のだけどそこにはきっと愛がある。きっと。

    馴染めないロンドン郊外の敵意のある冷淡な社会の渦のなか、二人は自分達だけの無垢な世界を作れるのか。


    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The Paying Guests" Sarah Waters (2014) Review | But who manipulates who
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    黄昏の彼女たち 上 (創元推理文庫)



    黄昏の彼女たち 上 (創元推理文庫)



    The Paying Guests: shortlisted for the Women's Prize for Fiction




  • 『傲慢と善良』 辻村深月, 2019年 レビュー | 社会が突きつけてくる物差し

    『傲慢と善良』 辻村深月, 2019年 レビュー | 社会が突きつけてくる物差し


    gouman
    傲慢と善良
    辻村深月 2019年
    Mizuki Tsujimura
    504ページ
    2025年7月 読了
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    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 傲慢と偏見の現代日本版
    ✔ 結婚を「するべき」といわれる年代の人へ
    ✔ 社会の物差しを通しての恋愛、そしてその先

    ★★★★★ 社会が突きつけてくる物差し。これを読んで心が痛まないわけはない。恋愛小説でありながらミステリー風。つまり読みごたえがある。結婚を「するべき年齢」といわれる誰もが痛く感じさせられる現実。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    人気の小説というのは知っていたけど、実は読んだことない作者だし、第一、日本の現代文学は自分の好みではないと決めつけている私がいて。
    それじゃいけないと読む幅を広げるという意味で手にした本。
    自分の固定観念に挑戦した結果、この本が読めた。
    でかした、自分。

    社会という暗い大きな闇が突きつけてくる物差し。
    いい子は誉められます、きちんと親のいうことを聞いて、嘘をつかずに、でしゃばらずに。
    それが今のこの日本社会で子供のときから受ける教育。
    一昔前はそうだったんだから、あなたもそうしなさいという上の世代からの教育。

    私自身はさっさと国外に出たので自分の境遇とは違う、だけど、だからといってこれを読んで心が痛まないわけはない。

    恋愛小説でありながら、突如いなくなる婚約者、真実(まみ)のあとを追うミステリー風でもある。つまり読みごたえがある。
    ちょっとずつ彼女の過去や思考の霧が晴れていく中で、これはいま結婚を「するべき年齢」といわれる日本の若者誰もが痛く感じさせられる現実であると思い知らされる。
    家族ぐるみのお見合いではない、自分が定めた数ある基準から相手の点数を見定める婚活。
    そこで見定められるものは本当は何なのか。

    ヨーロッパでは親からの結婚の期待はあるのはあるけど、私の自由です放っておいて、と突き放すもしくは宥めることの方が多い。
    しかし日本では自分の意見も主張できず家族の提供する安心感も浅い中でプレッシャーと疲労感だけが高まる孤独な活動となる。

    でも、それでも、ネタバレ阻止で詳しくは言えないけど、彼女は確実にいわゆる大人の階段を上る。
    遅いか早いかは、周りから見れば遅いかもしれない。しかし遅すぎることはない。

    まだ間に合う、まだ失敗しても大丈夫、人生はいつだって方向転換ができる、まだここが終わりじゃない。よかった。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "(Arrogance and Virtue)" Mizuki Tsujimura (2019) Review | Not so comical "Pride and Prejudice" in Japan
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  • 『遠い山なみの光』 カズオ•イシグロ, 1982年 レビュー | 普通の人の嫌味や僅かな悪意

    『遠い山なみの光』 カズオ•イシグロ, 1982年 レビュー | 普通の人の嫌味や僅かな悪意



    A Pale View of Hills
    Kazuo Ishiguro, 1982
    カズオ•イシグロ
    遠い山なみの光
    183 pages
    2025年2月読了
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    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ ノーベル賞受賞の著者の最初の長編
    ✔ 故郷長崎の戦後の苦しみとノスタルジアのあやうさ
    ✔ 母と娘の葛藤と、母自身の葛藤

    ★★★★★ イシグロ作品にはいつも普通の人の嫌味や僅かな悪意という隠し味がある。ここには狂気も。静かでありながらしっかりと人間の内面を絞り出している。つい最近映画化。


    🔽🔽読書記録🔽🔽

    カズオ•イシグロの最初の長編小説。読んだのは2月だけどここを更新する7月にはちょうど日本の映画が公開されたばかり。

    故郷長崎の戦時中の生活を想う悦子。当時出会ったとある女性と娘。
    今は年老いてイギリスに住んでいる。
    彼の物語の特徴である、すごく日本的でありながらもすごく英国的という点がよく出ていて、やっぱり彼のようにすごく上手に二つのセンチメントを操る人はいない。

    イシグロ作品にはいつもちょっと普通の人の嫌みや僅かな悪意という隠し味がある。それって人間的でいたって当たり前。ここではサチコと娘の些細な狂気が常に漂っていて、そして周囲のお行儀の良い人たちの自分勝手さなんかがそう。

    戦時中、戦後の空しさと苦しみ。女たちの過去、未来、後悔。
    終わらない母の苦しみと降り積もる娘の苦しみの物語。

    エツコは何度も自分の記憶の頼りなさをつぶやく。年老いて十分に苦労した自分をもう傷つけないために、思い出が曖昧になる。でもそれの何が悪いのか、彼女は十分に自分を苦しめた、ちょっと位曖昧にしたって、いい。

    やっぱりイシグロ作品は面白い。静かでありながらしっかりと人間の内面をしぼりだしている。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "A Pale View of Hills" Kazuo Ishiguro (1982) Review | slight malice of "normal" kind people
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