
台湾漫遊鉄道のふたり
楊双子, 2020年
臺灣漫遊錄
楊双子
中央公論新社
2026年6月 読了
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🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽
✔ 日本の植民地である台湾で出会う日本人の作家と台湾人の通訳の二人の女性
✔ 食いしん坊な二人の友情は植民地主義が引き起こす見えない権力の構造によってギクシャクしたまま
✔ 言語の中に見え隠れする権力のバランスや僅かなニュアンスを丁寧に描く
★★★★★ 1930年代、自由奔放な日本人作家と多彩で細かく気が利く台湾人通訳の二人の女性。人間は複雑で、逆説的で、時には相手の勘違いや思い違いを正すこともしない。二人の間に確実に存在する「上下」の関係。圧倒的な社会の権力の構造と、一緒に食事をすること、同じデザートを食べることの儚くも確かな幸せ。
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🔽🔽 読書記録 🔽🔽
1930年代、日本の植民地だった台湾へ向かった日本人作家の女性と通訳となった台湾人の女性。
その日本人の回想録という形であるけれど、実は台湾人の作家が書いた小説(厳密には二人の作家、しかし双子の一姉妹の一人は出版前に亡くなってしまったそう)
そして、イタリアに住む日本人である私が、日本人が書いたという体の台湾小説を英語で読む。
友情の始まりは単純だった。
自由奔放な日本人作家と多彩で細かく気が利く台湾人通訳。
ただ、本当は単純においしいものを食べ歩く楽しい生活なだけではなかった。
人間は複雑で、逆説的で、時には相手の勘違いや思い違いを正すこともしない。
日本語で話す二人は、その時点ですでに権力構造の中で「上」と「下」になる。
英語版では台湾の町や場所の名前は日本語の発音で書かれているので、ここは日本の植民地だということを数ページに一回は必ず思い出すように仕組まれている。
台北はTaipeiではなく、Taihoku。
この力関係は、もし人物が欧米人とその他、だったり、男と女、だった場合は「普通のこと」と認識され、もしくは当たり前のこととして気にも留めないかもしれない。
しかしここはアジア人女性二人という関係を持ってこの権力システムを描く。
当然二人とも抑制された立場なんじゃないの?と思わせておいて、二人の間に確実に存在する「上下」。
ネタバレをしないようにどこまでコメントできるかちょっと難しいけれど。
作家とその通訳者兼アシスタントという仕事柄ではあるけれど、ここでは二人の人間のうち片方が圧倒的な権力を持つ。
その権力は社会の構造から生ずるもので人々の心の中にしっかりと根付いているがゆえに権力を持った方は気が付いていない。
また男女の場合を例に挙げるとわかりやすいかも。
男性が女性のために何かしてあげた場合、それは彼が自分にとって行うべきで行いたかった善意であり、社会もそれを紳士的だと持ち上げる。
それは社会から権力を与えられた側の特権であり、「俺がしてあげたことになんで感謝をしないんだ」と逆ギレするのも権力者の特権である。
そして唯一、ギリギリ許されていること、それは権力者に自分の気持ちを説明しないこと。
結局は言語の壁を取り除くこともできないまま、しないまま、説明しないまま、「ロスト イン トランスレーション」でロスしたものは、もうそのままにしておく。
なにかがずれているということだけはわかってはいるけれど、それ以上は明確ではない。
なぜ善意を拒否するのか。彼女の秘密とは。一緒に日本へ行こうということはどういう意味か。二人がお互いから隠そうとしている共通の感情とは何なのか。
この物語の悲しさはすれ違いから発生した悲しさよりも、それでもどこか奥深くでは共通した感情、愛情を持っていることから発生した悲しさの方が強い。
二人の間には確実に幸せな瞬間が何度かあった。
同じテーブルを囲い一緒に食事をすること、同じデザートを食べること。
悲しさの中にある儚くも確かな幸せが生まれる時だけ社会という存在は消えていた。
英語で読むということはちょっと複雑。
やはりこの英訳が国際ブッカー賞を取ったから、という気持ちもあったし、読んでみると日本語の発音を意識せざるを得ないという意味でもよかった点はある。
ただ、やはり元々日本語で書かれたという設定なので、日本語の方が色々とストレートに伝えられている分があるんじゃないかと想像する。
なので、日本語でも読まなきゃ。
そして、ああ、台湾!料理!
次のR. F. Kuangの作品も舞台が台湾だそうだし、旅行者が増えそう!
前回台北に行ったとき、青草茶のパックを買ってこなかったことを一年以上ずっと後悔している。
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English review
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