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『インドカレー伝』 リジー・コリンガム, 2005年 レビュー | 歴史と食習慣とドラマチックなカレー


インドカレー伝 (河出文庫)
インドカレー伝
リジー・コリンガム
Curry: A tale of cooks and conquerors
Curry: A Biography of a Dish
(カレー、料理人と侵略者たち)
Lizzie Collingham, 2005
433  ページ (日本語)
河出書房新社
2026年7月 読了
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🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

✔ インドと料理と各々の侵略者がもたらした影響と彼らの食習慣をめぐる歴史書
✔ カレーはどこからきて、どこへ向かうのか
✔ 同じ本だがA Biography of a dish と A tale of cooks and conquerorsというタイトルで出版されたそう

★★★★★ インド亜大陸の料理の歴史と、各々の侵略者がもたらした影響と彼らの食習慣をめぐる。そしてどう日本のカレーまで辿り着くか。複雑でカオスでまるで人間の人間としての移り変わりが凝縮されたかのような壮大さとダイナミズム。

🔽🔽 読書記録 🔽🔽

日本ではもちろん、世界中で愛されているカレー。
でも知れば知るほど「で、結局カレーって何」という質問に対する簡単な答えがないと気付かされる。
ただの概念であり、コンセプトであり、インドの豊かでドラマにあふれた歴史だからこそ生まれてきたカレーを巡る。
ハチャメチャ感。

今日においても、インドを一つの国としてとらえるのは実は無理がある。
すごく大まかにいうと北と南と分かれているがその中でも文化、言語、習慣、食生活は細かく分かれている。
古代は中央アジアからの影響を受け、その後も外部からの影響を受け続け、ムガール帝国がヨーグルトやお米を食べる習慣を広めたし、ポルトガルは彼らが新大陸で発見した唐辛子やトマトをもたらし、それ以外にも今のインド人の食卓に上る野菜や果物がこの時にインド亜大陸にやってきた。
そして大英帝国がインドを植民地化する過程で、それぞれの地方の料理を彼らの舌に合わせたものに変化しながらそれまで存在しなかった彼らのためだけの「インド料理」を作り上げた。

その後はイギリス人が本国に持ち帰り、巡り巡って「イギリス人のインド料理」であるカレーが、あの、小麦粉とリンゴを入れる「洋食」であるカレーが、日本にやってくることになる。
そしてインド人自身が移住する場合もインドの食文化をしっかりと同行させるので、今やアジアやアフリカの多くの地域でも試行錯誤された地域化したカレーがある。
すごいよね。
カレーは結局何なのか、どこから来て、どこへ向かうのか。

日本のカレーがインドのカレーと全然違うのは今は常識だけど、日本ではなぜリンゴを入れるかもやっとわかった!
そうか、そうよね。

料理と歴史というのはしっかりがっちりと繋がっていて切り離せないけど、インドの食文化はとにかく深い。
人間の歴史は移動する歴史なので地理的な影響やその時誰が攻めてきたかとかにもよるけど、インドの場合はそこに宗教やヒンドゥー教内のいわゆるカースト制のしきたりがあり、口にしてよいもの悪いものはもちろんのことながら、食べる行為自体をもっともっと複雑にする。
統治をしているのは白人イギリス人なのに、インド人たちの方が穢れるからという理由でイギリス人と食事を一緒にするのを拒むというダイナミックさ。
イギリス人がインド人の食材に近づきすぎてもNGなので、調理中のご飯を捨てることになったりも。
徹底的。
もちろん当時のイギリス人が食べているものも変というかおかしいというか、イギリス人も徹底的。
ヨーロッパで育つ野菜を食べるのがステータスだから美味しくもない野菜の缶詰を食べたり、クリスマスに七面鳥を食べたいけれど手に入らないので孔雀の肉をパサパサなのに我慢して食べたり。
この辺のイギリス人の食事の様子はこの前に読んだThe Raj at Tableの方が詳しい。

この2冊を読んでまず思うのは、インド人にインド料理という概念がないというのが、大げさに言うと人間の人間としての歩みを象徴している。
一言で一括りにできないのが文化とか社会とか人間とか食べるとかという行為であり、それを外の人間は一言でまとめようとするんだよね。

そして、ポルトガルありがとう。
新大陸から唐辛子が来たからこそ、今日のインドの料理は辛くておいしい。
そして、インド人に紅茶を頑張って広めようとしたイギリス人ありがとう。
彼らは「正しい紅茶の飲み方」を広めることには失敗したけれど、だから今のインドにはチャイがある。

このハチャメチャ感。
インドらしいカオスな歴史や料理がこの本からも匂ってくる。

あと本とは関係なく余談。
インドでは普通に手で食べるけど、親が子に手でご飯を食べさせるという行為がシンプルに素敵で愛情表現の凄く根本的なものだと思う。
親から子だけでなく、大切な人に対し「この手であなたにご飯を食べさせます」つまり「大切なあなたを大事にします」というシンプルな表現。
箸やフォークでは表せないこの愛情表現を目の当たりにすると、進化とか文明とかを考えさせられる。
 

ややこしいけれど、同じCurryという本がA Biography of a dish と A tale of cooks and conquerorsという別のサブタイトルで出版されたそうで、日本語版はA Biographyのほうを使って『インドカレー伝』になったと思う。

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