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『(シッキムとブータン)』 J. Claude White, 1909年 レビュー | 120年前の東ヒマラヤの王国


Sikhim And Bhutan Twenty-One Years On The North-East Frontier 1887-1908
(シッキムとブータン)
J. クロードホワイト, 1909年
Sikhim and Bhutan
Twenty-One Years on the North-East Frontier 1887-1908
J. Claude White
2026.04 読了
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🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

✔ 1887-1908年の間にシッキム王国に滞在した英国人による手記
✔ 当時のシッキムやブータンの政治と人々の様子
✔ 雪山を何週間もかけて移動する政治家でありながら冒険家

★★★★☆ 21年間シッキム王国に滞在したインド帝国生まれの英国人による手記。ビックリするくらいずっと辺境を歩いている。当時、ブータン、シッキム、チベットと英国が友好的であったのは彼の人間性もあるのでは。

🔽🔽 読書記録 🔽🔽

1887-1908年の間にシッキム王国に滞在したインド帝国生まれの英国人による手記。
彼はインド帝国(つまり大英帝国インド、今のインド共和国よりかなり広いエリア)の役人のPolitical Officerとしてシッキム王国に滞在していて、そこからシッキム北部の山岳部の調査にいったり、ブータンに行ったりしたときの記録。

そして1887年から21年間、ビックリするくらいずっと辺境を歩いている。
ここはヒマラヤ山脈の裾。
この地域を移動するとなると、雪山を何日も何週間も歩いての移動がデフォルト。
その様子もくわしく書かれていて冒険日記でもあるし、ブータン初代の国王との友情の記録でもあるし、変化の激しい現地の政治の記録でもある。


シッキムもブータンもチベットもインド帝国、つまり大英帝国の一部ではなく独立国なのでPolitical Officer、行政官、というのはその外国の地においてインド帝国政府の代表という立場。
現実にはかなり影響力という権力がある、つまり偉い人なんだけど当時はあのヒマラヤの雪山の中を自分の足で歩くしかないのでかなりヤバイ冒険家じゃないと勤まらない。
この本も、もちろん政治的な用事のことも書いてあるけどかなりのページにおいてその移動の大変さや寝泊まりしたキャンプや小屋の様子、山奥の寺院、咲いている花、と記録しているのものは細かく幅が広い。
これは現代の私が読んでもその価値はわからない。
当時は彼は西洋人どころか現地の知識人も足を踏み入れたことのない集落に向かっている、という意識が強く、川の流れや渡り方、橋の様子、咲いている花や標高は何フィート、現地の祭り衣装まで、使命感をもって細かく書き残しているんですね。

日本語に翻訳されていないし、今後されるかどうかもわからないし、第一この英語版だって簡単に手に入らないので少し詳しく書きます。

まずはシッキム王国について。
彼が長く勤務していたシッキムを初めて訪問したときのことや、歴史、習慣など。
首都ガントクを出発点として各地にに遠征に行って自分の足で自分の目で全ての地域の生活の様子を観察したようで、今の感覚だと、ふーん、と思ってしまうけれど、ここはヒマラヤ山脈の袖。
ちょっとの距離も何日も歩くし暴風雨のなかでテントで寝たり、当然凄い荷物で移動するのでとにかく感心してしまう。
ただそれぞれの遠征の描写は長いのでよっぽど雪山とかが好きじゃないと退屈だし、同じようにやはり政治家なので王族や官僚の描写も長い、そこは乗り越えるしかない。

原住民のレプチャの生活の様子なども記録されているけれど、全体を通して彼にはいわゆる白人至上主義の視線がない。
確かに水のない地域の住民は体を洗えないので汚い、寝床も蚤だらけで眠れない、雪山で原始的な生活を送る人間の習慣は彼とはかけ離れているでもそれはその事実を書くだけで、だから現地の人間はどうだこうだとは一切言わない。

この後、英国人にも国境を解放したブータンにすぐに向かい(すぐといっても何週間も歩いて)、彼の前の時代の英国人がブータン人を無礼な奴らと残していることに対し、それは自分が今体験している事実とは違う、ブータン人は自分を心から歓迎してくれている、当時の英国人が正しくない態度であったからブータン人はそういう反応をしただけだろうと書く。
これって信じられないくらい立派な態度で、当時は白人というだけで完全に優位な立場であったにも拘らず、現地のこの人は素晴らしい、あの人は賢い、彼らはとても親切にしてくれた、ととにかく誉める。
そしてブータン王国の最初の王のウゲン•ワンチュクとは友人として交流があり、互いに何度も別れを惜しむ様子を書き残している。
割合としてはブータンに関する章の方が大きく、彼以前にブータンを訪問した英国人たちの記録のセクションもある。

この当時、ブータン、シッキム、そしてチベットと英国が友好的であったのは彼の人間性もあるのでは。

これは彼に引退された本。
特にブータンに関してはあと数年で引退というタイミングで王国が生まれた場に立ち会ったこともあり、貧しい小さな国ブータンをとても心配している。
素晴らしいリーダーを選んだブータンだが現実的にどうやって経済を発展させるか。
京都の話もちらっと出てるけど彼は日本にも行ったのだろうか。

インド帝国と中国の間で揺れ動く東ヒマラヤのこの地域の厳しい状況のなかで大事な位置にいたホワイト。
雪山の峠越え、観察力、人間力。
彼自身の言葉と貴重な写真の一冊。

🔽 関連ページ 🔽
English review
“Sikhim and Bhutan” J. Claude White (1909) Review |Small kingdoms of himalaya 120 years ago



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