
ある男
平野啓一郎, 2000年
384 ページ
文藝春秋
2026年10月 読了
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🔽 一言レビュー 🔽
★★★★★ 愛した夫が本当は別人だった、と相談を受ける弁護士の主人公がこの夫の本当の姿、本当の存在を追う。大きな嘘を前に、変わらずその人を愛せるか、それとも裏切りと感じ遮断するか、それとも割りきって信じ直せるか愛し直せるか。その描写方法自体が人間の複雑さを描いている。
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初めての平野啓一郎。
やはり想像していた通りにしっかりとした流れで、現代文学っぽいフワフワとした軽さがなくて、私の好きな世界観だった。
人気のフワフワ感やfeel good感が苦手で人気作品は慎重になってしまうが、平野啓一郎に関しては今まで食わず嫌いだった自分を責めている。
愛した夫が本当は別人だった、と相談を受ける弁護士が主人公でこの夫の本当の姿、本当の存在を追う。
自分とはなにか。
愛するとはなにか。
回りの人間がいるからこそ存在する自分の定義の曖昧さ。
自分とは過去からの積み上げによるものか、それとも今ここにいるこの瞬間だけの存在か。
人を愛するとき過去現在未来全てを愛するのか、愛せるのか。
大きな嘘を前に、変わらずその人を愛せるか、それとも裏切りと感じ遮断するか、それとも割りきって信じ直せるか愛し直せるか。
読みながらそういう問いが次々と生まれるけれど、それと同時に社会と自分の関係の曖昧さにも恐怖を覚える。
システムを盲目に信じてしまう私たちの目は簡単に騙せる。
システムに縛り付けられていると思いがちだが実はその気になれば抜け道はある。
依頼人の里枝の2歳で病死した次男のことが度々出てきて辛い。
一生忘れることができない悲しさ、自分のルーツや両親の人生など自分では変えることのできない過去や運命は誰もが抱える。
それを乗り切る方法は別人になる人生を選ぶこと。
微妙な調整ではなく「別人として生きるの人生」の強い魅力、隣の芝。
これこそ全く違う人間のアイデンティティーであったり、違う国籍であったり、結婚や離婚であったり、名字を変えたり、別に犯罪めいたことでなく、ただの人生の再スタート、やり直し、も。
でもそのやり直しのチャンスを掴めるか、どんな人間にでもやり直す価値はあるのか。
色々なやり直しのケースを描くなかで、隅に追いやられがちな人々、人生に流されユラユラとしてしまう人々のケースを描く。
一見、ストーリーがあちらこちらに動いているようで、まさにその描写方法自体が人間の複雑さを描いている。
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ある男 (文春文庫 ひ 19-3)