
ジョヴァンニの部屋
ジェームズ・ボールドウィン, 1956年
Giovanni's Room
James Baldwin
306 ページ
白水社
2026年8月 読了
アマゾンであらすじと詳細を見る
🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽
✔ パリに住むアメリカ人青年デイビッドはイタリア人バーテンダーのジョヴァンニと出会いお互い強く惹かれる
✔ 戦争で破壊されたヨーロッパの青年、いつでも自分たちの自由の国に帰れるアメリカの青年
✔ あえて人種のテーマを除いて、恋愛、ロマンス、愛情の不幸な形を痛々しい正直さで描く
★★★★★ 戦後のパリで出会う、堕ちていく運命を止められず止めることもしない二人の青年の物語。同性愛者の男性にとって、伝統的に受け入れられているストーリーラインは結果的に不幸になること。悲劇だからといって強い愛情がなかったわけではない。恋愛、ロマンス、愛情の不幸な形を痛々しい正直さで描く。
🔽🔽 読書記録 🔽🔽
ロマンチックでありながら、ニヒリズムに満ちていて決定的に悲劇的。
戦後のパリで出会う、堕ちていく運命を止められず止めることもしない二人の青年の物語。
ストーリー自体の裏側には、ヨーロッパに住むアメリカ人という「外側の人間」感が漂う。
ただ、この作品の特記するべき点は、すべて白人であるということ。
アメリカ人で黒人で同性愛者である作者ジェームズ・ボールディンにとって人種差別のテーマは人生において最大のテーマであったにも関わらず、人種には触れない。
ただ単に白人アメリカ人とヨーロッパ人だけを登場させることで、恋愛感情の上下関係、欲望、罪悪感、絶望感、そして新大陸と旧大陸のセンシティビティを浮かび上がらせる。
読者は主人公デイビッドの罪悪感を感じながらも優柔不断であることを選ぶ生き方をストレートに受け取れる。
パリで何もせずに暮らすアメリカ人青年デイビッドは、自己を見つける旅としてスペインに滞在しているガールフレンドの帰国を待っている間に、イタリア人バーテンダーのジョヴァンニと出会う。
戦後のヨーロッパ人がアメリカ人に抱く憧れというか神話的な幻想、それはアメリカ人はみな自由で、幸福で、裕福で、自分たちとは違う道徳観を持っているということ。
戦争で破壊されたヨーロッパの街に住む自分たちとは違う道徳観、アメリカ人はいつでも自分たちの自由の国に帰れる。
それに比べやっと再建した街や村の生活に縛られるヨーロッパ人、彼らは留まる選択肢しかない、ここに居続け、自分たちの生活や感情に正直にい続けるしかない、間違っていても間違った相手であっても情熱的に愛するしかない。
そしてアメリカ人デイビッドは自分のつらい過去を思い起こすことがあっても、恋人の人生を滅ぼしても、自分からは何も決めず、いや、唯一決めたことそれは自分が生み出す責任に深入りせずに歩き去ったことと言えるかも。
もっと明白なテーマはもちろん同性愛というテーマ。
典型的な同性愛者の男性の人間関係を皮肉を持って描いていると思う。
同性愛者の男性にとって、伝統的に受け入れられているストーリーラインは結果的に不幸になること。
デイビッドとジョヴァンニの恋愛も悲劇で終わる。
しかし悲劇だからといって、結果的に冷たい雰囲気になったからと言って、強い愛情がなかったわけではない。
短期間であっても強い関係で結ばれ、互いを引きずり込みあい、運命は一人の青年を人生の崖から突き落とした。
痛みつけることで存在できる場所、ジョヴァンニの部屋からは出てこれない。
恋愛、ロマンス、愛情の不幸な形を痛々しい正直さで描く。
ジェームズ ボールドウィン、もっと読まなきゃ。
🔽 関連ページ 🔽
English review
“Giovanni’s Room” James Baldwin (1956) Review | Self destructive romance in Paris
🔽 買えるところ / あらすじ、詳細 🔽
●●● アマゾン ●●●

ジョヴァンニの部屋 (白水Uブックス)