タグ: 成長物語

  • 『さらば、夏の光よ』 遠藤周作, 1982年 感想 | 青春の淡さ、軽さ、冷たさ 

    『さらば、夏の光よ』 遠藤周作, 1982年 感想 | 青春の淡さ、軽さ、冷たさ 

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    
    二人の男と一人の女。
    小太りでモテない気の優しい青年、行動的だけど単純な親友、美しい同級生。
    
    何度も繰り返される普遍的な設定ではあるけれど、遠藤周作にかかれば、やっぱり光る。
    遠藤周作版シラノ・ド・ベルジュラックとも言える。
    青春の淡さ、軽さ、冷たさ。
    真剣で無謀で残酷で、それを一歩向こうから見ている作家本人という構成。
    
    例えば主人公はいい奴だったのか、親友はそんなにいい男だったのか。
    そこにはやはり若さ故に美化された部分があるのでは。
    優しくされればされるほど憎んでしまうという矛盾も。
    
    人間はか弱い小鳥じゃない。
    だからこそ、プライドを傷つけられるし、心はすれ違う。
    反抗し、絶望し、後悔し、残った者はその後の選択をし、そして同じことはまた繰り返される。
    四季がめぐるようにまた、その連鎖は途切れることなく学生たちは親友と愛する人の奪い合いをする。
    
    
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  • 『猛スピードで母は』 長嶋有, 2005年 感想 | 強さと弱さのリアルな日常 

    『猛スピードで母は』 長嶋有, 2005年 感想 | 強さと弱さのリアルな日常 

    🔽 基本情報 🔽
    猛スピードで母は
    長嶋有, 2005
    110 ページ
    2020.07 読了
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    二本の短編。
    ふんわり系と思っていたら、違う。
    最初のストーリーには、少女の目線からの親の離婚とその愛人のことが、
    もう一つには少年から見たシングルマザー母のことが。
    ドラマチックではないし、ふんわり系でもなく、リアルな日常と人には伝えにくい心情の動きや行動がそこにはある。
    
    初めての作家で女性かと思ったら男性だった。
    なのに女の子の心の動きや強い女性のちらりと見せる弱さの背景の動きなどが心地よい。
    
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  • 『パパは家出中』 ハニフ・クレイシ, 2001年 感想 | ロンドン、ロックンロール 

    『パパは家出中』 ハニフ・クレイシ, 2001年 感想 | ロンドン、ロックンロール 

    🔽 基本情報 🔽
    パパは家出中
    ハニフ・クレイシ, 2001
    Gabriel's Gift
    Hanif Kureishi
    2020.06 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    ロンドン、ロックンロール、そしてそこで大人になっていく少年。

    『マイ・ビューティフル・ランドレット』の脚本家なのであの素敵な青春を予想していたけれど、ここはほぼ純粋にロック音楽への賛歌。

    ロックな両親の元に生まれ、両親のロックな環境で育ち、でも小さいときに双子の兄弟を失った主人公。
    そういう特殊な子供時代を少年の目で見つめる、という感じで、そういう感じが好きな人はきっと楽しめる一冊、ただ私はその辺については鈍い。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    “Gabriel’s Gift” Hanif Kureishi (2001) Review | Rock and London
    tag ; 音楽 ロンドン
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    パパは家出中
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  • 『アルジャーノンに花束を』 ダニエル・キイス, 1966年 感想 | 救いに溢れて

    『アルジャーノンに花束を』 ダニエル・キイス, 1966年 感想 | 救いに溢れて

    🔽 基本情報 🔽
    アルジャーノンに花束を
    ダニエル・キイス, 1966
    Flowers for Algernon
    Daniel Keyes, 1966
    2026.02 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    あまりにもチャーリイの障害が身近過ぎて客観的に感動できなかったところはある。
    逆にいうと、だからこそ痛いほどよくわかるところもある。
    なんというか、感動で涙は出ないけど、ただただ痛かった。

    でもできるだけ客観的に。
    小説の感想はいつもはできるだけ内容に触れないようにしているんですが、今回は少し内容に触れているので全く何も知りたくない人は読まないでください。

    この本が問うことは「幸せとは何」というとてつもなく大きな問。

    チャーリイの手術後すぐに、同僚の子が呟いた話にヒントがあるように思う。
    神様は私たちが与えられたもの以上のものを得ようとすることを許さない。
    彼女の考えでは、賢くなることは悪いこと。
    チャーリイは果たして周りの誰よりも賢くなることで幸せになったのか、そして良いことだったのか。
    世界中にあふれている素晴らしい知識を体いっぱい吸収できて彼はきっと、いや間違いなく幸せだったはず。
    それでも超能力がなくなるように、もっと言うと年を取って誰もがそれぞれ呆けたり遅くなっていくかのように、生きていくうえで避けられないサイクルとして、何かを得ても人は必ずその何かを失う。

    知識は力、たまに力が強すぎて害を及ぼすけれど、間違いなく失うものと思えれば、その山と谷をしっかりと自分のものにすればいい。
    得て、失って。
    広い目で見れば失うことだって、不幸と一言では言えない、そんなに狭い視野の話をしていない気がする。

    失ったと思った友情も、いつか戻ってくるかもしれない。
    人は大きな共同体、コミュニティの中での持ち場があるということも考えさせられる。
    (特にアメリカのような超個人主義の中でそれぞれの共同体ということも)

    そして、母親の存在。
    母親は悪い人間だったのか、自分の息子が「普通」であることを望むのは悪いことか。
    道徳の授業で差別はいけませんと教えられていると、他人ごとでは簡単に言える。
    自分の息子は他の子と同じように会話したり仕事をしたりすることはないと絶望した母親には、そんな他人事は通じない。
    それでもチャーリイのことを第一に考えることができればよかったのに、彼女は自分の不幸に集中するあまり息子のことを愛することを忘れていた。

    みんな、自分が一番大切。
    でも周囲の人間を傷つける気持ちもない、ただどちらもこなすのが難しいだけ。
    許しと救いにあふれているストーリーで本当に良かった。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    “Flowers for Algernon” Daniel Keyes (1966) Review | Forgiveness and salvations

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    アルジャーノンに花束を〔新版〕(ハヤカワ文庫NV)
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  • 『きよしこ』 重松清, 2002年 感想 | 力強いメッセージ

    『きよしこ』 重松清, 2002年 感想 | 力強いメッセージ

    🔽 基本情報 🔽
    きよしこ
    重松清, 2002
    291 ページ
    2020.06 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    著者のどもりをテーマにした彼の経験を元にしたストーリー。
    笑い者にされ、可哀想と思われ、それでも大人になっていく。

    どもりのせいで意見を言えず殻に閉じ困ってしまう、こういうことはどもりを持つ本人じゃないと分からないし、逆に同じ境遇の人は皆感じてることだと思う。

    小さくまとまっているように見えて力強いメッセージを送っている。
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    tag
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  • 『火花』 又吉直樹, 2015年 感想 | 上下関係の危うさ >>

    『火花』 又吉直樹, 2015年 感想 | 上下関係の危うさ >>

    🔽 基本情報 🔽
    火花
    又吉直樹, 2015
    192 ページ
    2026.01 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    誰もが知っている一冊。
    芸人でありながらも小説を書き、芥川賞を取る。
    その意外さ通りのストーリー。

    芸人としての10年を描くんだけど、それはあくまで背景であり、メインは師匠と仰ぐ男と主人公の曖昧でギリギリバランスが取れていて実は取れていない関係にある。

    そこまで尊敬できる人に会えることは羨ましいことであり、その関係が10年近く続くことも微笑ましくも見える。
    しかし尊敬できるほどに高い位置に持ち上げた人間の人間らしい弱さ、愚かさいつまで見ないようにできるか。
    関係のバランスは崩れるか。
    どこまで愛情をもって寄り添えるか。
    恋愛感情でもない、同等の立場にある友情でもない、上下関係を基礎とした関係の危うさを暖かく描く。
    🔽 関連ページ 🔽
    tag 友情
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    火花 (文春文庫 ま 38-1)


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  • 『ジェーン・エア』 シャーロット・ブロンテ, 1847年 感想 | ノーという女性 >>

    『ジェーン・エア』 シャーロット・ブロンテ, 1847年 感想 | ノーという女性 >>

    🔽 基本情報 🔽
    ジェーン•エア
    シャーロット・ブロンテ,  1847
    Jane Eyre
    Charlotte Bronte
    2026.01 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    古典って避けてしまう傾向にあるけど、実はエンターテイメント性が高いものが多いんですよね。
    まあ、だからこそ何世紀も愛されるわけですが。

    この本もそう。
    ドロドロのメロドラマもあればロマンスもある。
    強い女性像のイメージがあったのでロマンス要素に関しては想像以上だった。
    一人の女性の惨めな子供時代を経て自らの手で這い上がる成長物語であり、フェミニズム満載であり、宗教の問題も、ちょっと怖めのゴシックでもあり、階級社会、人種、植民地主義などなど当時のイギリスにとっての社会的なテーマが盛り沢山。

    そして当時の批判は目に浮かぶよう。
    家父長制に服従しない女?男にノーという女?地位もなく地味な見た目のくせに?なんということでしょう。

    もちろん今日の社会では見方は変わる(といってもいまだに女のくせにという意見は無きにしも非ず)。
    彼女は男性にただ単に宝石やきれいな服を浴びるように与えられる人生は送りたくない。
    自分も対等に貢献できると確信できる日まで彼女は愛する人をも拒否し続ける。

    あと「屋根裏部屋の狂気の女」もとっても興味深い。
    当時の差別主義が隠さずに描かれており、混血の人間、黒人であるこの女は理性がなく暴力的で、高貴な白人の文明から遠ざけなければいけない。
    そしてジェーン本人はあまり怖がっても憎んでもいないというところも気になる。
    この辺りは本が出ているそうなので、いつか。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review “Jane Eyre” Charlotte Bronte (1847) Review | A woman who says no
    tag 女性主体
    tag フェミニズム
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  • 『葡萄が目に染みる』林真理子, 1984 感想 | 現実に近い青春>>

    『葡萄が目に染みる』林真理子, 1984 感想 | 現実に近い青春>>

    🔽 基本情報 🔽
    葡萄が目に染みる
    林真理子, 1984
    240 ページ
    2025.12 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    キラキラしない青春の物語。

    片田舎の地味な女の子。
    できるだけ存在を隠すようにしたり、好きでもない子と親友になったり、そして圧倒的なスターと言える学生を全校生徒と共に見つめる、という学生生活。
    それは小説や漫画にあるなにか起こりそうな雰囲気ではなく、多くの人が傍観する限りなく現実に近い空気。

    そんな高校生活にある、ちょっとしたざわめき、周囲のちょっとしたセコさ、自分のセコさを細かく描いている。
    片田舎の学生生活は過ぎ去ったあとに懐かしさと共にちょっと切なくなったりする。

    出版から40年以上、作者が自分をかなり重ねたんだろうとも分かるけど、でも個人的だからこそ、やっぱり今読んでも読者には通じるものがある。
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  • 『(ザ・ホワイトタイガー) 』アラヴィンド・アディガ, 2008 感想 | 現代インドのエネルギー >>

    『(ザ・ホワイトタイガー) 』アラヴィンド・アディガ, 2008 感想 | 現代インドのエネルギー >>

    🔽 基本情報 🔽
    The White Tiger
    Aravind Adiga, 2008
    (ザ・ホワイトタイガー)
    アラヴィンド・アディガ
    336 ページ
    2021.04 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    ちょうど、ネットフリックスがプリヤンカー・チョープラー制作主演で映画化したので、観る前に読まねばと。

    想像していた通りの面白さ、激しさ、リアルさ。
    淡々と進んでいくようなストーリーなんだけど実はエネルギーに溢れていて、これこそ現代インドの鏡。
    どうしてもインドを神秘な国と決めつけてしまうけれど、現実にはここには人々が生活をしていて、多くの貧しい若者はなんとか自分の親より良い生活がしたいと突き進む。
    それは当たり前の若者のエネルギーなんだけど、ここはそれでもインド。
    物凄い数の人間が絡み合い、その中でも生まれたときから叩きつけられている身分をわきまえるという常識は自分の中からも消えない。
    日本っぽいところがあるというか、アジア全般での文化はやっぱり繋がるところがある。
    ただ、貧困の層が分厚いインドでのこの物語はとてつもない興奮をまとっている。

    主人公が言うように、自分の生きている間にきっと白い男たちは消え、茶色と黄色の男たちが世界を制するようになる、つまり白人の時代は終わりアジア人の時代が来る、というのはそう間違ってもないかも。

    英語はちょっと難しいかも、というのもインド英語も入ってくるし。

    ネットフリックスの映画(日本語あり)もいいです!
    もちろんボリウッド的な歌もダンスもないけれど、代わりにリアルな暴力と音楽がありさらにこのストーリーを盛り上げる。

    🔽 関連ページ 🔽

    English review “The White Tiger” Aravind Adiga (2008) Review | Energy of young India
    tag インド

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    The White Tiger: WINNER OF THE MAN BOOKER PRIZE 2008 (English Edition)
    
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  • 『岳物語』椎名誠, 1989 感想 | 息子と父の物語>>

    『岳物語』椎名誠, 1989 感想 | 息子と父の物語>>

    🔽 基本情報 🔽
    岳物語
    椎名誠, 1989
    Makoto Shiina
    272 ページ
    2025.11 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    小説というか、ほぼエッセイというのか。
    でも小説ということらしい。
    父親の愛情に溢れた一冊で、しかも思春期の難しい時期に入るまでの息子と父の物語。

    自分に息子がいるとよくわかる。
    こうでした。
    私は母親だしプロセス技もかけないけれど、長男はは家庭内だけでなく社会で育つべきと思っていたし、家族でない人との交流をさせてもらえることがありがたくてしょうがない。
    13歳のときに長い夏休みに日本の私の実家に3ヶ月送り込んだときと、作中におとう(椎名誠)が3ヶ月半の海外での仕事から帰宅した時とが重なる。
    少年として送り出したのに帰ってきたときは青年になっていた。
    単純に身長も抜かれたし、何よりも親がいない、知らない時間を経験をした、ということ。
    普段は学校は片道バスで2時間の街にあるから部活もスポーツも何もしないのに家ではご飯食べて寝るだけ、いよいよ息子との接点もなくなる。
    子供が自分を越えていく、それが子育ての成功した証だと思う。

    岳さんは椎名誠よりシーナ的とも言われてこの本のイメージが強すぎてそれが迷惑な時期もあったそうだけど、家族ってそれぞれで、そんなものなんですね。
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  • 『桐島、部活やめるってよ」朝井リョウ, 2012 感想 | 高校という小宇宙>>

    『桐島、部活やめるってよ」朝井リョウ, 2012 感想 | 高校という小宇宙>>

    🔽 基本情報 🔽
    桐島、部活やめるってよ
    朝井リョウ, 2012
    256 ページ
    2025.11 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    タイトルだけはずっと知ってて内容は全く知らなかったので、こういう感じとは想像もできなかった。

    高校時代、17歳のそれぞれの想い、部活を通じての人間関係や生活そのもの。
    確かに中学や高校にいる間は高校だけが宇宙で、自分のすぐ周りだけが世界。
    なにか大きな事が起こるのではない、なにかの筋の通ったストーリーがあるわけではない、ただその小宇宙で生きている不安定なまだ幼い人間たちの小さな揺れを、当時ほぼ同年代の朝井リョウが描く。
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    桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

  • 『ランチのアッコちゃん』柚木麻子, 2013 感想 | 心を満たすランチパワー>>

    『ランチのアッコちゃん』柚木麻子, 2013 感想 | 心を満たすランチパワー>>

    🔽 基本情報 🔽
    ランチのアッコちゃん
    柚木麻子, 2013
    (Akko-chan and the lunch)
    Asako Yuzuki
    200 ページ
    2025.11 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    やっぱり元気をもらえた!
    アッコちゃんの周りで起きる短編集で、食べ物を取り囲んで冷えきった東京の生活を暖めてくれる物語たち。

    お腹と心を満たすご飯の力なめるな、笑顔で突き進む女の力なめるな。

    先輩のアッコちゃんから元気をもらう美智子、でも実は持ちつ持たれつでお互いは支えあってる、そしてその和がひろがる。
    日本の会社員の生活を知らないので大変そうだなと思うばかりだけど、絶対にこういう人はいる。
    目を凝らせばそっと手を差しのべている人が。
    そこに気付くことができれば、昨日よりちょっと幸せになれる。
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  • 『喪失の響き』 キラン・デサイ, 2006 感想 | 平等、和解、夢、そんなものは存在するのか

    『喪失の響き』 キラン・デサイ, 2006 感想 | 平等、和解、夢、そんなものは存在するのか

    🔽 基本情報 🔽
    The Inheritance of Loss
    Kiran Desai, 2006
    喪失の響き
    キラン・デサイ
    384 ページ
    2022.01 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    友人に進められるままに買ったので、私がいつも気になっている東ヒマラヤのカリンポンの街が舞台とは知らなかった。

    裕福な家庭の女の子が孤児になり、インド料理もナイフとフォークで食べるような厳格な祖父と暮らすことになる。
    そのころ激しくなっていくグルカ運動(ネパール系独立運動)に生活と人生を翻弄される人々。
    少女の想像と妄想と、そして現実。

    祖父と召使いだけの大きな家で、彼女はある貧しい青年に恋をする。
    同じ頃、召使いのニューヨークに住む自慢の息子は実は底辺を這うような生活をしていた。
    一見繋がりのないそれぞれの人生、でもグルカ運動が過激化するごとに確実に狂っていく。
    人一人の人生なんて一瞬にして壊されるなかで、平等、わかり合い、夢、そんなものは存在するのか。

    激しく変化する生活の中で唯一変わらないもの、ヒマラヤ山脈。
    春には淡い希望を運んできて、雨季にはすべてを腐らせる湿気を運んでくる神の宿る山のもとで、その流れに身を任せる。
    日本の表紙のように明るく可愛いストーリーではないです。

    そういう感覚はインドではかなり身に沁みるというか、自分よりも圧倒的に強いパワーというものが現実にあるインド。
    コミカルな場面が余計に悲劇を浮き立たせる、力強い一冊。


    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The Inheritance of Loss" Kiran Desai (2006) Review | Peace, understanding, dream, no such things here
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  • 『老師と少年』 南直哉, 2006年 感想 | 自分とは何か

    『老師と少年』 南直哉, 2006年 感想 | 自分とは何か

    🔽 基本情報 🔽
    老師と少年
    南直哉, 2006
    Jikisai Minami
    120 ページ
    2025.10 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    永平寺で20年修行した曹洞宗のお坊さん、というか、老師。
    テンプルモーニングのポッドキャストで知ったあと、そのお人柄にビックリしていくつか本を入手した中のひとつ。

    自分とは何か、生とは死とはなにか、と少年が老師に色々と聞く、というお話なんだけど、老師は答えをくれるわけではない。
    でもそれが答えなのである。

    こんなに短くて文章も易しいのに、読者の心の、頭の深いところに直接、優しく語りかけてくる。
    気付いていないだけで君は一人じゃない、というところもいい。
    これは何度も開く本になりそう。


    中でも好きだった箇所を二つ。

    「では、『本当の自分』をさがす人はただ愚かなだけですか?」
    「そうだ。しかし、愚かさでしか開けない道もある」

    「『本当の何か』は、見つかったとたんに『嘘』になる。」
    🔽 関連ページ 🔽
    タグ: 仏教
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  • 『罪と罰』フョードル・ドストエフスキー, 1866年 感想 | プライドまみれの青春

    『罪と罰』フョードル・ドストエフスキー, 1866年 感想 | プライドまみれの青春

    🔽 基本情報 🔽
    Crime and Punishment
    Fyodor Dostoyevsky, 1866
    Преступление и наказание
    Фёдор Миха́йлович Достое́вский
    罪と罰
    フョードル・ドストエフスキー
    720 ページ
    2023.12 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    つい最近「カラマーゾフの兄弟」を読み終わって、なんというかカラマーゾフが幽霊のように追いかけてくるんです。この物語よりも素晴らしいものはない、と呟きながら。
    なので、潔く「罪と罰」。

    カラマーゾフと比べて短いし、比較的ストーリーを追いやすい。
    単純に主人公一人だからという理由で。
    でもストーリー、出来事を追いやすいというだけで、決して読みやすい訳ではない。
    その辺に関しては私がグダグダ感想を述べても仕方ない、この本も「偉大な一冊」であることは誰もが知っているから。

    青年ラスコーリニコフは問題児だ。
    でも彼が本の中で問題を起こすから、自分の行動を正当化するからじゃない。
    彼は私達読者に、特に若者に、社会に対して自分勝手な問題を起こしてもいいんだよ、と囁いているからだ。
    この本が若者に与えた影響は簡単に想像できる。
    どの時代もどの国でも、自分は特別なのに不当に扱われているという(もしくは扱われているという妄想であっても)憎しみと怒りは普遍的。

    若いことは美しくはない。若いことは痛みでしかない。
    その上、すこし頭が良くて、自信はないのにプライドにまみれた青春は耐えられない。
    彼のその無知、無垢、妄想の前にはばかるもの、それは生きるということ、人生。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    “Crime and Punishment” Fyodor Dostoyevsky (1866) Review | Intolerable pride
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  • 『フランケンシュタイン』 メアリー・シェリー, 1818年 感想 | 痛々しくも美しい

    『フランケンシュタイン』 メアリー・シェリー, 1818年 感想 | 痛々しくも美しい

    🔽 基本情報 🔽
    Frankenstein
    Mary Shelley, 1818
    Frankenstein: Or the Modern Prometheus
    フランケンシュタイン
    メアリー シェリー
    224 ページ
    2020.12 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    世界で最も有名なホラーのひとつ。
    でも特記すべきは、この物語は当時18歳だった若きメアリー・シェリーが書いたということ。
    しかも、旅行中に天気が悪いからと、同行した二人の男性と「誰が一番怖い話を書くか賭けをしよう」と言うことで書き始めた話は有名。その二人とは詩人バイロンと作家ポリドリ、かなり豪華な遊び。

    さて、物語は原作を知らないとどうしても恐ろしいモンスターの話、と単純に思ってしまうけれど、読んでびっくり、詩的で悲しい、そして痛々しくも美しい物語と私は言い切ってしまいたい。
    この怪物の存在を後悔する二人の男の物語。
    一人は怪物を作った男、もうひとりは怪物本人。
    怪物が怪物的で暴力的なものは仕方がない、彼の意思ではなく自然の原理でしかない。

    どうしても映画や漫画などで単純なイメージが独り歩きしているけれど、原作では単純な悪ではない。
    どちらかというと、望まれない存在である一人ぼっちの怪物の悲しいお話。


    🔽 関連ページ 🔽
    English review “Frankenstein” Mary Shelley (1818) Review | A lonely unwanted creature

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    フランケンシュタイン (新潮文庫)


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  • 『クスノキの番人』 東野圭吾, 2020 感想 | 大きな木の普遍的な不思議な力>>

    『クスノキの番人』 東野圭吾, 2020 感想 | 大きな木の普遍的な不思議な力>>

    🔽 基本情報 🔽
    クスノキの番人
    東野圭吾, 2020
    Keigo Higashino, 2020
    456 ページ
    2023.11 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    東野圭吾の、ちょっとファンタスティックな感動系。
    とにかく彼の本は面白い。
    エンターテイメント、読みごたえ、というか、ふわふわしていないストーリー性がありどんなときでも読みたくなるし、読んでいて面白いし嬉しいというか。

    これもナミキ雑貨店系のドラマで、最後にガツンと感動させられる。
    大きな木というのはきっと不思議な力を持っていると誰もが思っているほど普遍的な力がある。
    そういう安心感が本から滲み出てる。ストーリーからも本自体からも。

    小難しくせずひたすら面白さを追求する、ある意味職人的な小説家。
    いや難しくないわけじゃないんだけど、それでもエンターテインメントの要素をきちんと考えてくれている。

    今回もやっぱり、やられた。
    お、映画化もするんだ、楽しみ。

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  • 『(また恋におちる) 』ラスキン・ボンド 2013年 | 感想 | まるで夢だったように

    『(また恋におちる) 』ラスキン・ボンド 2013年 | 感想 | まるで夢だったように

    🔽 基本情報 🔽
    Falling in love again
    Ruskin Bond, 2013
    (また恋におちる)
    ラスキン・ボンド
    197 pages
    2023.04 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    インド生まれ、インド育ち、でもイギリス系白人の作家、ラスキン・ボンド氏。
    2025年の今年91歳になったインドでも最も重要な作家の一人。
    人種なんか関係ないというのは簡単だけど、運命はそう安易ではない。

    さてこの本は恋愛に関するショートストーリーを集めたもので、彼は17歳の頃から書いているけれど、いろんな時期に書かれたものが集められていて興味深い。
    ただ単に違う時代に書かれたから違う雰囲気、というわけではなく、彼の物語には繰り返し表される表現や風景がある。
    主人公の名前が著者と同じラスキンやラスキーだったり、ロケーションも彼の故郷ヒマチャルプラデシュであることが多いので、彼の少年時代や思い出とは切っても切り離されないはず。
    それだけじゃなく、同じセリフが出てきたり、同じ列車の路線に乗っていたり、違う女の子に同じ名前が繰り返されたり。

    ストーリー自体はみなほろ苦いストーリーが多く、恋愛とはまだ言えない段階であったり、何かが始まる前に失恋したり、まるで夢だったかのように、彼が恋をした女の子はふっと消えていく。

    日本ではあまり作品が出ていないのが残念ですがぜひ探してみてください。
    でも彼の本は子どもにも読まれるように書いてあるので、英語でも比較的簡単な表現で書かれています。


    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    “Falling in love again” Ruskin Bond (2013) Review | Maybe it was a dream

    彼が17歳で書いた作品The Room on the Roofはこちら
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    (彼の作品は日本ではこれが手に取りやすいようです)

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    Falling in Love Again: Stories of Love and Romance (English Edition)


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  • 『恐るべき子供たち』ジャン・コクトー 1929年 感想 | ヌーベルバーグ

    『恐るべき子供たち』ジャン・コクトー 1929年 感想 | ヌーベルバーグ

    🔽 基本情報 🔽
    Les Enfants Terribles
    Jean Cocteau, 1929
    恐るべき子供たち
    ジャン・コクトー
    144 pages
    2025.01 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    大学の教科書でも何度も出てくる一冊をやっと。
    フランスの詩人コクトーの小説。

    とても詩的、とてもコクトー、とてもフランスで、とてもヌーヴェル・ヴァーグ。
    退廃的な少年少女のストーリーで最後の瞬間にすべてが完璧となる。
    パリが好きな人がパリを想うとき、こういう芸術的で自己破滅的で退廃的な風景を想う。
    当時はもちろん社会にショックを与えた一冊だっただろうし、現在においても何度も何度も戻って来る地点がここにある。
    それだけ影響力があるストーリーで、概念としての現代フランス芸術が詰まっている。

    映画もいつか見なきゃ。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review “Les Enfants Terribles” Jean Cocteau (1929) Review | very Nouvelle Vague

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  • 『国宝』 吉田修一, 2018年 感想 | 国家の宝の美

    『国宝』 吉田修一, 2018年 感想 | 国家の宝の美

    🔽 基本情報 🔽
    国宝 上下
    吉田修一, 2018
    日本
    840 pages (408 + 432)
    2025.9 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    映画はここでは観れそうもないのでとにかく原作をと思って。
    そしてもう読む前からわかっている、国宝は凄いはず。

    さて、当然期待は最高峰クラスに高かった、なのにそれ以上だった。
    極道と花道という背景も興奮を煽る設定だし、血筋というのもそう、兄弟同然で生涯の友でライバルというのもそう、全てが面白くないわけがない設定。

    でもその凄さは喜久雄の成長物語の描き方。

    血筋のない一人の人間が運命の気まぐれで底辺に突き落とされ、または拾われて崇められて、堕ちて、を繰り返す中で彼は、その巨大な波に流される人生の中で後ろ楯もplan B代替案がない人生の中で生き延びる最後の砦としての歌舞伎と自らの天才的才能。
    人は大事なものを失うごとに成長する、そこで本来の自分を見つける。
    ひねくれものなので、やっぱり物語は上がって落ちて、堕ちるところまで堕ちるストーリーが圧倒的に面白い。
    でも彼は美そのもの、芸術そのものなのでもう本人の意思は重要ではない。
    国宝という究極の人間の人生を小説を通じて私たちが垣間見れる凄い体験。

    歌舞伎のことを知らない自分が残念、知っていたら更にもっと堪能できたはず。
    芸に生きる、まさに芸を生き抜いた人間の一生。
    一気に読んで一気に疲れる。

    映画でもいつか観てみたいなー、きっと美しさに圧倒されるんだろうなー。
    もちろん吉沢亮と横浜流星の美しさも見たいけど、なによりも素晴らしいであろう田中泯さんの仕草が見たい!
    動画を見てると音楽もいいし、いつかちゃんと劇場でみたい。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Kokuho (National Treasure)" Shuichi Yoshida (2018) Review | National Treasure himself
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    国宝 (上) 青春篇 (朝日文庫)
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  • 『アメリカひじき 火垂るの墓』 野坂明之 1968年 感想 | 消えていく罪悪感

    『アメリカひじき 火垂るの墓』 野坂明之 1968年 感想 | 消えていく罪悪感

    🔽 基本情報 🔽
    アメリカひじき
    火垂るの墓
    Grave of the Fireflies
    野坂明之 1968
    Akiyuki Nozaka
    288 pages
    2024.10 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    映画は辛くなりそうで見れないけど、原作をと思い。

    やっぱり辛い。貧しいなんてレベルじゃなく餓えて病んで死んでいく。
    それはこの短編集のテーマというか底にあるもので、家族なんて綺麗事もなく、少年時代、少女時代という綺麗であるはずの青春もない。
    というか青春の前の12、3歳の時点でどう自分がその日を生き延びるかが大事である戦時中。

    火垂るの墓の場合は、生き抜けなかったのだけど、他の短編集の人物は生き抜いてその後に待つ矛盾した社会との葛藤に悩む。
    アメリカ人への生々しいコンプレックス、きょうだいで自分のみが生き残った罪悪感や傷、そして作者自身が戦後に犯罪を犯していくことで生き延びたこともあり、そういった少年の心情の描写はリアルで心に突き刺さる。

    消えていく罪悪感、空腹、淡々と語られる文章からダイレクトに伝わるおぞましい情景と死の匂い、他人に頼らないと生きれないまだ子供であるコンプレックス、あまりにも身近な、なんというか、生々しい死。

    一番想像していなかったのは、性に関する描写、アメリカひじきでは買春も本番ショーも出てくるけど、それ以上に全身やけどの包帯の下で始まる生理や卵巣を取るということなど妊娠や育児の女性の心理など、女性特有のいわゆる男性が扱いにくい話題も出てくる。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Grave of the Fireflies" Akiyuki Nozaka (1968) Review | Guilt disappears
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  • 『ポリー氏の人生』H.G.ウェルズ, 1910年 感想 | 人生終わらせるつもりが始まった

    『ポリー氏の人生』H.G.ウェルズ, 1910年 感想 | 人生終わらせるつもりが始まった

    🔽 基本情報 🔽
    The History of Mr. Polly
    H. G. Wells, 1910
    Herbert George Wells
    ポリー氏の人生
    H.G.ウェルズ
    アメリカ
    318 pages
    2024.10 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    ミッドライフクライシス、中年の危機、日本語では第二の思春期とも言うんですか。
    まさに人生におけるその数年の葛藤を描いた一冊。
    しかも著者は「SFの父」や「SFの巨人」と呼ばれ、しかも晩年は国際連盟の樹立を提唱したりと幅広く活躍した人物、そこ彼の描く中年の危機のストーリー。

    人生の半ば、多くの人は自分の人生は面白くはない、大したことはないと思う。
    特に大きな選択などもしなくても物事は決まっていき、全部が嫌になる。
    変わりたい、そう思ってももう体力的にも精神的にも疲れていて、もう終わりにしたい…と思ったら!そこで人生がスタートするんです。

    最初の方は読んでいてもダラダラとした感じで当に主人公の人生そのもの。
    でも「もう全部終わりにしたい」からが文章も楽しさやワクワク感が出てきて、いつも観ていた風景にちょっと感動したりそんな些細なことに喜びを感じ、満足感や静かな幸せをきちんと感じ取れるようになる。
    だからそういう面白くない箇所もあっていい。
    人生は先は見えないもので、大概の場合は最後にちゃんと満足できる。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The History of Mr. Polly" H. G. Wells(1910) Review | Life started late

    前に読んだ中年の危機の本
    “Midlife crisis” Kieran Setiya, 2017 / (中年の危機への哲学的な対応)>>
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     mr polly
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  • 『汝、星のごとく』 凪良ゆう, 2022 感想 | 純粋にまっすぐ、強く生きる

    『汝、星のごとく』 凪良ゆう, 2022 感想 | 純粋にまっすぐ、強く生きる

    ★★★★☆ 純粋にまっすぐ、強く生きる。若い人が例えば読書を好きになるきっかけになる素敵な綺麗なストーリー。話題作なはず。良いですね。
    🔽 基本情報 🔽
    汝、星のごとく
    凪良ゆう 2022
    Yu Nagira
    348 pages
    2025.09
    アマゾンで見る
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    話題作。
    前はいつも自分好みの作家ばかり選んでいたので、意識的に話題作もちゃんと読んでる。
    これも本屋大賞を獲る作家、凪良ゆう (といっても名前も聞いたことがあるくらいだったけど、それは私が日本にいないという地理的な問題。)

    タイトルや表紙からもわかる綺麗なラブストーリー。
    自分勝手な親に振り回される高校生の恋から、ぐるぐると回る環境に巻かれ、するりと大人になってしまう二人の物語。

    純粋にまっすぐ、強く生きる。

    意地を張りながら、仕方がないと思いながら、打ちのめされながら、忘れずに自由を望みながら、愛と生をしっかり抱えながら。
    若いって素晴らしいとは言わない。そんなに人生は楽じゃないし、環境や境遇はそう簡単には変えられないし変わらない。

    続編があるそうで、ということはちゃんと他のも読まないと大きな事は言えないけど、若い人が例えば読書を好きになるきっかけになる素敵な綺麗なストーリー、それに尽きると思う。
    私のツボから離れているのは、私がターゲット層じゃないからでストーリーは素敵、おすすめできる。
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  • 『(屋根の上の部屋)』 ラスキン・ボンド, 1956年 感想 | 繊細な少年時代

    『(屋根の上の部屋)』 ラスキン・ボンド, 1956年 感想 | 繊細な少年時代

    🔽 基本情報 🔽
    The Room on the Roof
    Ruskin Bond, 1956
    (屋根の上の部屋)
    ラスキン・ボンド
    184 pages
    2024.08 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    ラスキン・ボンド、日本ではあまり知られてないんですね。
    インド生まれ、インド育ちのイギリス系白人の彼はインドではその優しい文章と切ないノスタルジアに包まれたストーリーで人気。その彼が17歳の時に書いたデビュー作。

    彼自身の少年時代を描いたような小説で、イギリス系インド人の主人公の少年の英国人の保護者やインド人の友人との生活、なんだけど、典型的白人主義の家庭には馴染めず、かといって明らかに見た目も階級も違う自分は地元の友だちと同じ生活ができない。

    少年時代というのは誰もが「ここに馴染めない」と思うんだけど、彼の場合はその悩みはリアルで明確で、どれだけ彼自身が望んでも変えることはできない。

    いつかきっとと思っていた願いは非現実的に見えた。
    著者本人はイギリスに移住するも結局インドに帰ってくる。
    彼の愛する故郷はインドしかない。

    繊細な少年時代を描く一冊。

    日本では下記の作品集に含まれています

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The Room on the Roof" Ruskin Bond (1956) Review | Sense of belonging
    🔽 買えるところ 🔽

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    小学館世界J文学館 青い傘ほか ラスキン・ボンド作品集

    この作品集に含まれています


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  • 『佐賀のがばいばあちゃん』 島田洋七, 2004年 感想 | 大切な夏の思い出

    『佐賀のがばいばあちゃん』 島田洋七, 2004年 感想 | 大切な夏の思い出

    ★★★★☆  親との思い出は忙しくて過ぎ去っていくけど、祖父母との思い出は残る。おばあちゃん、すごい。夏休みにピッタリの一冊。
    🔽 基本情報 🔽
    佐賀のがばいばあちゃん
    島田洋七 2004
    Yoshichi Shimada
    163 pages
    2024.07

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    著者は漫才師らしいけど、彼よりもこの本の名前は知っていた。
    思っていた通り、さらっと読める代わりに楽しくて元気をもらえる一冊。

    親との思い出は忙しくて過ぎ去っていくけど、祖父母との思い出は残る。
    特に田舎で何もない二人だけの生活となるとそうだと思う。おばあちゃん、すごい。
    私もそうだったので、自分の子供が同じように祖父母と思い出を作る時間や場を設けるようにしている。

    夏休みにピッタリの一冊。
    🔽 買えるところ 🔽

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    決定版 佐賀のがばいばあちゃん (徳間文庫) [ 島田洋七 ]
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    決定版 佐賀のがばいばあちゃん (徳間文庫)



  • 『一次元の挿し木』 松下龍之介, 2025 感想 | 壮大でありえなくても面白い

    『一次元の挿し木』 松下龍之介, 2025 感想 | 壮大でありえなくても面白い

    🔽 基本情報 🔽
    一次元の挿し木
    松下龍之介 2025
    256 pages
    2025.08
    アマゾンで見る

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    公募小説新人賞の作品とは知らなかった。しかも大賞じゃない。
    なのに安定感があって面白い。

    上から目線はここまでにして、何が面白いかって、ありえないよね、と分かっているのにストーリーが面白くてテンポが良くてあっという間に読んでしまうこと。
    つまり面白いと現実味があるはイコールではない。

    貧乏ポスドクの小ネタに始まり、笑わない美青年という設定、健気な美少女、暇な主婦にギリシャ神話と、エンターテイメント性たっぷり。
    その上であらすじが「インドの古人骨と失踪した妹のDNAが一致」という壮大なことになってる。それが全然空回りしない。

    まだ若いのできっとこれから熟していくんでしょう。
    東野圭吾のように理系で人間味があってしかもどんどん書いてくれれば、楽しみが増えるわ。
    誰でも惹き付けられるミステリー。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "(Labyrinth of Hortensia and Minotaur)" Ryunosuke Matsushita (2025) Review | Exciting and entertaining, most loved mystery

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    一次元の挿し木 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)



  • 『第2図書係補佐』 又吉直樹, 2011年 感想 | 人生にはいつも読書があった

    『第2図書係補佐』 又吉直樹, 2011年 感想 | 人生にはいつも読書があった

    ★★★★★  一つ一つを見るとその本の話なんてしていないのがいい。ただ彼の人生にはいつも読書があったということ。読書好きは大体は現実逃避してて結果論として利点は多々ある。
    エッセイ、さすが話が面白い
    🔽 基本情報 🔽
    第2図書係補佐
    又吉直樹 2011
    Naoki Matayoshi
    250 pages
    2025.08
    アマゾンで見る
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    書評なのかな、読書感想文なのかな、いや、一つ一つを見るとその本の話なんてしていない。
    ただ、彼の人生にはいつも読書があったということ。

    どうしても今の芸能人には疎いんだけど、又吉直樹が本好きということは知っていた。
    それよりも、暗い感じということは見た目ですでに分かっていた。でもそこに深みや個性があるのは間違いなく本を読み漁っていた結果。

    単純にエッセイ集として面白い。そして本と絡めているのでさらに面白い。

    本を読まない人は、読む人は読むことでなにか学んでいると思っている。
    いやいや、ただ本当に現実逃避しているだけです。結果論として価値観が無制限に広がるという利点はある。

    で、全部読んでみたい。

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    第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)



  • 『Afterlives』 アブドゥルラザク・グルナ, 2020年 感想 | 暴力な世界の中の美しい物語

    『Afterlives』 アブドゥルラザク・グルナ, 2020年 感想 | 暴力な世界の中の美しい物語

    🔽 基本情報 🔽
    Afterlives
    Abdulrazak Gurnah, 2020
    アブドゥルラザク・グルナ
    288 pages
    2024年7月 読了

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    戦争や植民地化という残酷で暴力的な環境の中で語られる美しい物語。

    人々の生活や愛情は、戦争という外部の環境によってボロボロに破壊されるということを忘れてはいけない。
    アフリカの人々の人生は、ヨーロッパ人が勝手に始めた戦争、つまりアフリカに住む人々とは全く関係のない殺し合いビジネスによって左右される。
    それでも彼らは確実に自分たちのものである小さな幸せや悲しみをしっかりと握りしめる。
    そんな狂暴な環境でも、植民地主義上の植民者と先住民でありながらも少しマジカルなでも一人間同士の関係も描かれていて少し希望を持つこともできる。

    2021年ノーベル賞受賞


    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Afterlives" Abdulrazak Gurnah (2020) Review | A beautiful story told in a cruel and violent environment
    🔽 買えるところ 🔽

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    Afterlives: By the winner of the Nobel Prize in Literature 2021



  • 『ロビンソン・クルーソー』ダニエル・デフォー, 1719年 感想 | 主人公がとってもイギリス人

    『ロビンソン・クルーソー』ダニエル・デフォー, 1719年 感想 | 主人公がとってもイギリス人

    🔽 基本情報 🔽
    Robinson Crusoe
    The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe
    Daniel Defoe, 1719
    ロビンソン・クルーソー
    ロビンソン・クルーソーの生涯と奇しくも驚くべき冒険
    ダニエル・デフォー
    384 pages
    2024年6月 読了
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    古典を読んでいた時期に、旅行記の古典といえば。
    この主人公がとってもイギリス人なのが面白い。
    整理整頓を心がけ、この野蛮な地を絶対に(イギリス的な)我が家にしてやる、と奮闘し誇りに思っている。

    あたかも本当の自伝と思わせるように、口語的な英語でしかも語り口は一人称で「本人自筆」とまで書いてある。
    もちろんフィクションだけど当時はこの手法でかなり売れたよう。

    この時代の小説なので植民地主義的、人種差別的な内容は避けられないけれど、良いキリスト教徒としてクルーソーはそれなりに現地人フライデーと打ち解けているのも忘れてはいけない。
    今振り返って良い悪いはあるにしても、300年前に書かれた素晴らしいストーリーであることは否定できない。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Robinson Crusoe" Daniel Defoe (1719) Review | Classic of classics
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  • 『The incendiaries』 R. O. Kwon, 2018年 感想 | パンクなカルト恋愛小説

    『The incendiaries』 R. O. Kwon, 2018年 感想 | パンクなカルト恋愛小説

    🔽 基本情報 🔽
    The incendiaries
    R. O. Kwon, 2018
    214 pages
    2024年6月 読了
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    ダークでリアルでパンクな若者の日々。
    韓国系アメリカ人の魅力的な女の子、その子に惹かれる普通の男の子。
    男の子が見つめる中、女の子はどんどん北朝鮮がテーマの白人の男の子がリーダーのカルト(つまり実態もメッセージも脆い)にハマり行動もエスカレートしていく、という流れ。

    なんかちょっとパンクな感じで、カルトやテロリズムに繋がっていくんだけど、現代文学ゆえ表面的な雰囲気のまま。
    文章の表現がまるで詩のようで新鮮さはあるんだけど、深さがないのが残念ではある。

    複雑な心境にあるはずの女の子にもナレーターである男の子にも感情移入ができない。
    そこを狙っているのかもしれないんだけど、そのせいで私の好みからは外れてしまう。

    🔽 買えるところ 🔽
    English review
    "The incendiaries" R. O. Kwon (2018) Review | A bit of punk, a lot of cult love story
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  • 『若きウェルテルの悩み』ゲーテ, 1774年 感想 | 悲劇のヒロインぶり

    『若きウェルテルの悩み』ゲーテ, 1774年 感想 | 悲劇のヒロインぶり

    🔽 基本情報 🔽
    The Sorrows of Young Werther
    Johann Wolfgang von Goethe, 1774
    Die Leiden des jungen Werthers
    若きウェルテルの悩み
    ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
    144 pages
    2024年5月 読了
    
    
    
    
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    誰もが聞いたことのある古典。というのを読むことにしたのがこの時期。
    想像よりももっと大変なお話だった。
    青年の悲しみや苦しみはそうなんだけど、それよりも彼の自己憐憫、悲劇のヒロインぶりがすごい。

    大人になって恋だの愛だのを経験して読むんじゃなくて、現在進行形で全身で恋愛をしている若い人が読んだら感動が違うだろうし、さらに18世紀に読んだらもっと違うんだろう。
    タイトルにちゃんと、「若き」ヴェルテルとなってるのがみそ。
    ここは多くの若き人々が通る道。

    青年は恋に落ちた。相手の女性の友情を自分への愛情だと勘違いし、苦しみ、そしてその苦しんでる自分にも酔ってしまう。
    自分自身への酔いこそが絶望の源となり、自分では制御できないモンスターになる。
    その悲劇の恋愛の原型のような、これ以降に書かれる報われない恋の物語の原型のような、250年たっても未だに共感する純粋な青年の苦悩。

    🔽 読書記録 🔽
    English review
    "The Sorrows of Young Werther" J W von Goethe, (1774) Review | Self pity is full on
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  • 『最初の人間』アルベール・カミュ, 1994年 (1960年) 感想 | 未完成という完全

    『最初の人間』アルベール・カミュ, 1994年 (1960年) 感想 | 未完成という完全

    🔽 基本情報 🔽
    The First Man
    Albert Camus 1994 (1960)
    Le Premier homme
    最初の人間
    アルベール・カミュ
    282 pages
    2024年5月 読了

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    1960年に事故で亡くなったカミュのカバンにあった未完成の原稿が1994年に未完成のまま出版される。名前や詳細が噛み合っていないのもその生々しさを語る。
    半分自伝、半分小説、未完成、でも完全に心惹かれる。

    アルジェリアに住んでいたときの貧しい生活、でも母、祖母、叔父への愛に溢れていた。
    フランスとアルジェリアという2つの国に引き裂かれた生活には父親がいない、家族の伝統もない、信頼できる人も、自分を育ててくれる確かな存在も、なにもない。
    そんな時に小学校の先生に出会う。

    時に家族や血縁で繋がっていない人が、その溢れる愛情をもって育ててくれることがある。
    この先生がカミュの人生にとってかけがえのない人だったことがよく分かるくらい感動する章。
    そして彼は恋に落ちる - がそこでこの物語は途切れてしまう。
    確かに傑作になっていたと思う。
    愛だろ、愛。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The First Man" Albert Camus, (1994 /1960) Review | Half biography fully touching
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  • 『ファニー・ヒル』ジョン・クレランド, 1749年 感想 | もっとも発禁された本、社会の敵

    『ファニー・ヒル』ジョン・クレランド, 1749年 感想 | もっとも発禁された本、社会の敵

    🔽 基本情報 🔽
    Fanny Hill
    Memoirs of a woman of pleasure
    John Cleland 1749
    ファニー・ヒル
    ある遊女の回想記
    ジョン・クレランド
    176 pages
    2024年5月 読了
    🔽 こんな人、こんなときにおすすめ 🔽
    古典なので読むべき本だけど、その描写についていける人はぜひその後ろにある彼女の人間性や成長を読んでください。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    文学史上もっとも発禁された本。最初のポルノグラフィ小説とも言われている悪名高き古典。
    当時のロンドンは借金を返せない人で牢獄はいっぱいだったそうで、著者クレランドもそのうちの一人でこれは獄中で書かれたもの。

    確かにかなり細かい描写で性の描写に執着しまくってるので、もう少し抑えたくらいが私にはありがたいけど、でもそれではこの本の魅力と意味がなくなる。
    著者は同性愛者だという評論家もいるそうで確かに男性の肉体の描写が細かい、女性のキャラクターの身体の方が数は多いのに、圧倒的に男性に執着してる。

    1749年出版後から1970年の正式な再出版まで続く、発禁、逮捕、海賊版、没収。
    だってこの本、売春、恥を見せない娼婦、同性愛、男性同士の行為の描写、障害者への強制、そしてあっけらかんとした少女は最後にはお金持ちにまでなるという、確かに社会の敵としか考えられない内容。

    何よりも社会、つまり男性社会、家父長制にとっての敵は罰を受けない自由な女性像。
    典型的な悪女の物語は、悪女が悔い改めるか罰を受けるかでハッピーエンドとなる。
    例えばロリータはなんだかんだ言って収まるところこ収まるという社会の罰を受ける。(でもナオミは自由のまま生き続ける、だから谷崎は素晴らしい)
    なので私は世間が言うほどロリータはケシカラン本とは思えない。
    ケシカラン本とは、こういう風に自由に生きて自由のまま終わる女性を描いた本。
    ケシカラン本、バンザイ。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Fanny Hill Memoirs of a woman of pleasure" John Cleland (1749) Review | One of the most banned books
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  • 『キャロル』パトリシア・ハイスミス, 1952年 感想 | 少女は大人の女性と恋に落ちる

    『キャロル』パトリシア・ハイスミス, 1952年 感想 | 少女は大人の女性と恋に落ちる

    🔽基本情報🔽
    Carol
    By Patricia Highsmith, 1952
    The Price of Salt
    キャロル
    パトリシア・ハイスミス
    307 pages
    2024年4月 読了
    
    
    
    
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    映画にもなったキャロル。まだ見ていないけど、確かにケイト・ブランシェットはこの雰囲気にピッタリ。
    発表当時はあからさまな女性同士のラブストーリーに世間が騒いだと思う、けどこれがパトリシア・ハイスミスの名前で出ていたらもっと騒がれたと思う。
    つい最近サラ・ウォーターズを読んだのでどうしても比べてしまいたくなるけど、キャロルの方はミステリーやサスペンスではなく、恋愛小説。

    クリスマスの運命の出会いからお互いに惹かれ、あてのない逃走劇も始まる。でも純粋な恋愛かどうか。どうも、愛する二人が醸し出すピンと張った空気とは違うテンションがある。ある少女が女性になる過程にようなテンションが。

    少年がおとなになるという物語はよくあるけど、これも同じような雰囲気。
    そういうほろ苦さのある雰囲気。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Carol" Patricia Highsmith, (1952) Review | Bittersweet love story

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  • 『デミアン』ヘルマン・ヘッセ, 1919年 感想 | 普遍的な物語

    『デミアン』ヘルマン・ヘッセ, 1919年 感想 | 普遍的な物語

    🔽 ログ 🔽
    Demian
    By Hermann Hesse, 1919
    デミアン
    ヘルマン・ヘッセ
    135 pages
    2024年4月 読了

    
    
    
    
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    「デミアン」はある少年シンクレールSinclairが友人デミアンを通じて、安全を保証された親元その光りに包まれた生活を離れ、悪意や暗闇を知りおとなになる物語。

    最初からリアルな生活が描かれるんだけど、徐々に決定的なリアル、戦争の中での生活となる。
    でも大丈夫、シンクレールは友情を通じて自分を見つけ出すことができていたから。友情がもたらす影響力、そしてまたその影響下を離れて彼は自分を確立していった。

    子供の頃は善と悪と二手に分かれていただけだった。でもこの世は実はどちらでもあり、そして自分の居場所もその中にある、確実に。

    本としては短いけれど、シンクレールが少年から青年となる成長をじっくりと追っていく。急がない、成長するのに急ぐ必要はない。だからこれは普遍的で出版から100年経っても未だに心を打たれる。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Demian" Hermann Hesse, (1919) Review | Growing up, so universal


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  • 『傲慢と善良』 辻村深月, 2019年 感想 | 社会が突きつけてくる物差し

    『傲慢と善良』 辻村深月, 2019年 感想 | 社会が突きつけてくる物差し

    🔽 ログ 🔽
    傲慢と善良
    辻村深月 2019年
    Mizuki Tsujimura
    504ページ
    2025年7月 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    人気の小説というのは知っていたけど、実は読んだことない作者だし、第一、日本の現代文学は自分の好みではないと決めつけている私がいて。
    それじゃいけないと読む幅を広げるという意味で手にした本。
    自分の固定観念に挑戦した結果、この本が読めた。でかした、自分。

    社会という暗い大きな闇が突きつけてくる物差し。
    いい子は誉められます、きちんと親のいうことを聞いて、嘘をつかずに、でしゃばらずに。
    それが今のこの日本社会で子供のときから受ける教育。
    一昔前はそうだったんだから、あなたもそうしなさいという上の世代からの教育。

    私自身はさっさと国外に出たので自分の境遇とは違う、だけど、だからといってこれを読んで心が痛まないわけはない。

    恋愛小説でありながら、突如いなくなる婚約者、真実(まみ)のあとを追うミステリー風でもある。つまり読みごたえがある。
    ちょっとずつ彼女の過去や思考の霧が晴れていく中で、これはいま結婚を「するべき年齢」といわれる日本の若者誰もが痛く感じさせられる現実であると思い知らされる。
    家族ぐるみのお見合いではない、自分が定めた数ある基準から相手の点数を見定める婚活。
    そこで見定められるものは本当は何なのか。

    ヨーロッパでは親からの結婚の期待はあるのはあるけど、私の自由です放っておいて、と突き放すもしくは宥めることの方が多い。
    それは、日本のようながんじがらめのレールを敷く社会を思春期で体感しないから。
    間違っていようが自分の意見をいうことが奨励される社会で育つとそこまで多くの人は彼女に自分を投影しない。
    そして他のアジアの国の多くは未だに家族が決めるお見合いも多い。よくも悪くも結婚とは家庭とはそういうものという考え方もある。
    つまり日本はそのどちらからも外れた、自分の意見も主張できず家族の提供する安心感も浅い中でプレッシャーと疲労感だけが高まる孤独な活動となる。

    でも、それでも、ネタバレ阻止で詳しくは言えないけど、彼女は確実にいわゆる大人の階段を上る。
    遅いか早いかは、周りから見れば遅いかもしれない。しかし遅すぎることはない。

    まだ間に合う、まだ失敗しても大丈夫、人生はいつだって方向転換ができる、まだここが終わりじゃない。よかった。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "(Arrogance and Virtue)" Mizuki Tsujimura (2019) Review | Not so comical "Pride and Prejudice" in Japan
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    傲慢と善良 (朝日文庫)






  • 『哀愁の町に霧が降るのだ 上下』椎名誠, 1981年 感想 | 楽しくて切なくて、突っ走る

    『哀愁の町に霧が降るのだ 上下』椎名誠, 1981年 感想 | 楽しくて切なくて、突っ走る

    ★★★★☆ 椎名誠は面白い、それにつきる。
    彼の青年時代の話が中心だけど、やっぱりこの時代は活気があった。楽しくて切なくて、突っ走る。風邪でダウンしていたので軽く読める本として。
    実際、上下一日で読んでしまう

    🔽 ログ 🔽
    哀愁の町に霧が降るのだ 上下
    椎名誠 1981年
    Makoto Shiina
    416 + 400 pages
    2024年1月 読了

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    椎名誠は面白い、それにつきる。
    彼の青年時代の話が中心だけど、やっぱりこの時代は活気があった。楽しくて切なくて、突っ走る。
    でもそういう外界の影響と言うのもあるだろうけど、やっぱり彼の回りにいた人間が面白いやつだった、そして現在も友人関係が続いていると言う羨ましい話。

    まあ残念なことに風邪と熱で、しっかり読んだわけでもないし、大した読書感想文も書けない。
    言えるのは、ただ純粋に面白かった。
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  • 『Piglet』 ロッティ・ハゼル, 2024年 感想 | 頑張って作り上げた自分像を壊すか

    『Piglet』 ロッティ・ハゼル, 2024年 感想 | 頑張って作り上げた自分像を壊すか

    🔽 ログ 🔽
    Piglet
    Lottie Hazell 2024
    ロッティ・ハゼル
    282 pages
    2025年7月 読了
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    現代女性の怒りのストーリー。頑張りすぎて、人の意見や期待に合わせてばかりな彼女。そして食、食べることについて。

    結婚2週間前のテンションマックスのピグレットというあだ名の女性は相手の男性から裏切りの告白を受ける。頑張って作り上げた自分像をこの期に及んで壊すか、それとも頑張り続けるか、嫌いだった実家に戻るか。

    いや、高級スーパーで買い物するわたしを見て。おしゃれな料理を作るわたしを認めて。

    今の働く女性、頑張ってる女性、期待に応えようと走り続ける女性はやっぱり共感してしまう。


    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Piglet" Lottie Hazell (2024) Review | Will you break the perfect life?
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    Piglet: ‘If I owned a bookstore, I’d hand-sell Piglet to everyone’ New York Times Book Review (English Edition)





  • 『Small Worlds』 ケイレブ・アズマー・ネルソン 2023年 感想 柔らかい気持ちが長く続く

    『Small Worlds』 ケイレブ・アズマー・ネルソン 2023年 感想 柔らかい気持ちが長く続く

    🔽 ログ 🔽
    Small Worlds
    Caleb Azumah Nelson, 2023
    ケイレブ・アズマー・ネルソン
    256 pages
    2025年5月 読了
    🔽 こんな人、ときにおすすめ 🔽
    移民の集まる南ロンドンカルチャー好き、90年、2000年の音楽好き。
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    Small Worlds THE TOP TEN SUNDAY TIMES BESTSELLER【電子書籍】[ Caleb Azumah Nelson ]


    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    今人気の最近の小説をまとめてロンドンで買った中の1つ、なので相変わらず内容も知らないまま購入。でもそれがよかった。

    とても詩的。パッと表紙を見ただけでは予想できない雰囲気。
    表紙のエッジーな雰囲気は背景で、移民、黒人文化、南ロンドン、音楽、そういうものからは暴力的で騒がしいものを連想するけど、でもこれはそういう社会の渦の中にある、彼らの住む小さなスモールワールド。
    愛情に溢れ、優しさに包まれ、自由、家族、夢や悲しみの小さな世界。

    主人公は幼馴染みをひたすら想い続け、保守的な父親との関係に苦しむ、つまり誰もが共感できる誰もが住んでいる各々のスモールワールド。

    背景に聞こえるリズムと静かで深い愛、読み終わったあともその柔らかい気持ちが長く続く。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Small Worlds" Caleb Azumah Nelson (2023) Review | Tender feeling of understanding and belonging
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  • 『The Dream-Pedlars Parade』 マーク・バウシャー, 2025年 感想 | ダークな雰囲気

    『The Dream-Pedlars Parade』 マーク・バウシャー, 2025年 感想 | ダークな雰囲気

    🔽ログ🔽
    The Dream-Pedlars Parade
    Mark Bowsher, 2025
    594 pages
    2025年4月 読了
    
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    The Dream-Pedlars' Parade Book 2 in the exhilarating Myrthali series【電子書籍】[ Mark Bowsher ]


    🔽🔽読書記録🔽🔽
    ロンドン映画会社時代の友人の本、Myrthaliシリーズ第2作目。最初のも良かったけどこの続編もいい。

    作者曰く、もっとダークな雰囲気とのことで確かにそう。前回から成長した主人公、1作目はもっと体力的にきつい冒険だったのが今度は精神的きつい冒険に。対面する人物や挑戦に対し、そして自分に対し不安や疑問を抱く。真夜中の世界で夢の中での自分の弱さとの戦い。

    このYA(ヤングアダルト、ティーン向け)の本が好きな理由はもうひとつ、いわゆる典型的な人物像に静かに挑戦していること。主人公はインド系イギリス人の少年だったり、パッと見分からない障害をもっていたり、ジェンダー、年齢、能力など、読者が勝手にステレオタイプを想定している要素に反抗している。でも決してそれ自体はストーリーに無関係であくまでバックグラウンドとして。

    珍しくe bookで読んだ一冊、500ページ越えの長編だけど面白いのでどんどん進める。シリーズ第3作も楽しみ
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The Dream-Pedlars Parade" Mark Bowsher (2025) Review | Darker sequel
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    The Dream-Pedlars' Parade: Book 2 in the exhilarating Myrthali series (English Edition)
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