★★★★★ 細密画のなかには宇宙と神々と共同体としての人の営みが詰まっている。個人という枠を軽々と越え、時間と空間の壁を越え、宇宙と神と一体になるという感覚。音や絵を通じてしか伝えられない古代から続く感覚。
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インド ミニアチュール幻想
山田和, 2009
511 ページ
2025.11 読了
🔽🔽 読書記録 🔽🔽
細密画のなかには宇宙と神々と共同体としての人の営みが詰まっている。
そしてこの本はそれを我々に伝えようとする。
細密画を通じてインドを旅行するような本。
ただここでは、街から街へという移動ではなく、インドという空間と歴史を移動する感じ。
16世紀から18世紀に渡り栄えたインドの細密画文化はラジャスタンを中心としたヒンドゥー教色の濃いラジプート派と、ムガール帝国時代の華やかな文化を象徴した、ムガール細密画と大きき二つあるよう。
そして有名なのは筆。
私が聞いたのはリスを毛を、一匹からは毛一本しか抜かない、というものだったけれど、ここではバサッとハサミで切るそう。
それでも、一匹からは筆一本しかつくらない。
もちろんそのリスには危害を加えないように細心の注意を払いつつ。
そういう全体的なミニアチュールに関する章もあるし、画家個人を追った章、または蒐集家を追った章もある。
細密画コレクターの友人でありライバルと、骨董屋から安く買い取るやり取りの様子も、蒐集に取り憑かれて犯罪や詐欺にに手を染める男たちもと、とにかく幅広い内容でどんどんよ読み進めてしまう面白さ。
そして最後の方にはインド思想という壮大な時空の中にある細密画の位置付けと意義とでもいうのか、細密画に見る美の存在自体を追求する。
最後に参考文献がたくさん並んでいるので、できる限り揃えたい。
芸術であり宗教的であり、作者一人の人生を越えたもの。
だから描いた人のサインはされない。
画家はもちろん画家のカーストに生まれたから、父から祖母から受け継いだ精神で自らの人生全てで細密画に向かう。
個人という枠を軽々と越え、時間と空間の壁を越え、宇宙と神と一体になるという感覚。
音や絵を通じてしか伝えられない古代から続く感覚。
この前読んだのNine Livesに通じるものもあるけれど、同じようにその感覚が近代化のなかでなくなりつつあるという危機感も持ってしまう。
日本だって音楽や芸術を通じて自然と繋がる感覚がなくなっているように。
やっぱりラジャスタンいかなきゃなー。
最近どのインドの本みても、ラジャスタン州が出てくる。
超観光地だから前回ためらったけど、毎日移動に車で8、9時間という現実を受け入れればまだ近代化してないインドに会えるんだろうなー
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