タグ: 世界史

  • 赤パンの3冊 | #005 「母と娘」

    赤パンの3冊 | #005 「母と娘」



    「母と娘」
    いい母といい娘、近すぎて苦しい関係


    選んで気づいたけど、三冊とも日本の本ではないのに日本とその歴史に関係する本。
    故郷の長崎での出会いを想う母、在日コリアンとして家族を支える母、日本の植民地インドネシアで売春婦として生き抜いた母。
    そして彼女たちの娘たち。強い。


    1.カズオ•イシグロ
    遠い山なみの光, 1982
    A Pale View of Hills
    Kazuo Ishiguro
    183 ページ (英語)

    【おすすめポイント】
    故郷長崎の戦時中に出会った女性と娘を想う悦子。戦争の空しさと苦しみ。女たちの過去、未来、後悔。終わらない母の苦しみと降り積もる娘の苦しみの物語。
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    2.パチンコ
    ミン・ジン・リー, 2017
    Pachinko
    Min Jin Lee
    512 ページ (英語)

    【おすすめポイント】
    1910年の韓国から日本に渡った女性。在日コリアンとしての彼女の人生で絶えることなく続く苦労と小さな幸せと愛。母から娘へ続く生き方。人生はパチンコの如く。
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    3.美は傷
    エカ•クルニアワン, 2002
    Beauty is a wound
    Cantik Itu Luka
    Eka Kurniawan
    480 pages (英語)

    【おすすめポイント】
    インドネシア。この地に宿る魂の苦しみ、植民地としての過去、蔑ろにされる女性の尊厳、生きていくための手段。暴力と愛と呪い。最後の望みは醜く生まれてくれた娘。強く生きる女たちの壮大な物語。
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    【関連ページ】
    『遠い山なみの光』 カズオ•イシグロ, 1982年 感想 | 普通の人の嫌味や僅かな悪意

    『パチンコ』 ミン・ジン・リー, 2017 感想 | 韓国から日本へ

    『美は傷』 エカ•クルニアワン, 2002年 感想 | その地に宿る魂の苦しみ
  • 『(ペルシャ人一家)』Sanam Mahloudji 2025年 レビュー | 誇り高きイラン人女性の物語 

    『(ペルシャ人一家)』Sanam Mahloudji 2025年 レビュー | 誇り高きイラン人女性の物語 


    The Persians: A Novel
    (ペルシャ人一家)
    Sanam Mahloudji, 2025
    The Persians
    384 ページ
    2016.02 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る
    日本語未出版


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 3代にわたるイラン人女性を描くデビュー作
    ✔ イラン革命前と後、アメリカ移住後のそれぞれの世界
    ✔ プライドの高い彼女たちと家族のつながり

    ★★★★★ イラン革命、テヘランに残る祖母と孫娘、アメリカにわたる残りの家族。「アメリカなんてママの宝石よりも短い歴史しかないのよ」高貴で傲慢でわがままで美しく愛らしい女性たち。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    この月は勝手に読書テーマを女性と決めて、最初に読んだのがこれ。
    パーフェクトな選択。

    イランの英雄を祖先とする由緒正しきValiat家、70年代のイラン革命で家族は二手に分かれる。
    テヘランに残る祖母と孫娘、アメリカにわたる残りの家族。
    『ペルセポリス』のあの雰囲気があるけれど、こちらもしっかりと当時のテヘランでの状況を伝える。
    つまり、表ではちゃんと髪の毛を隠す女性も違法のクラブでは性と薬物に手を染め、でも同時に政治的な活動もする、という一筋縄ではいかない現状。
    そしてアメリカへ渡った残りの家族は今度はアメリカで贅沢な生活を続けるも、こちらも酒に薬物にゴシップにまみれた現状。
    地理的に二手に分かれているうえに、1940年代のテヘランを生きた祖母と1980年代のテヘランを生きた孫娘の環境の差も浮き出てきて、まさにダイナミックな物語。

    「アメリカなんてママの宝石よりも短い歴史しかないのよ」

    それぞれの分かれた世界で生きる3世代のイラン女性たち、高貴で傲慢でわがままで美しく愛らしい女性たち。
    彼女たちの望みは、好きなように生き、好きなように愛し、好きなように捨て、それでもお互いに向き合うこと。

    世界最古といわれる文明を持つイラン、その伝統の中できちんとしたプライドの中で生きてきたイラン人女性の葛藤。
    ずっと続いてきた欧米中心の思考から少し目をそらすと複雑で圧倒的な世界が広がっていることを、特に今のご時世では知っておくべきだと思う。

    日本語はないようですが、英語は少し難しいかも、くらいのレベルです。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    “The Persians” Sanam Mahloudji (2025) Review | Dynamics of the women
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    The Persians: A Novel
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  • 『荊の城』 サラ・ウォーターズ, 2002年 レビュー | 女の子二人と犯罪と愛のミステリー 

    『荊の城』 サラ・ウォーターズ, 2002年 レビュー | 女の子二人と犯罪と愛のミステリー 


    荊の城 上 (創元推理文庫)
    荊の城
    サラ・ウォーターズ, 2002
    Fingersmith
    Sarah Waters
    2020.10 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 自身もレズビアンの英作家の犯罪ミステリー
    ✔ ヴィクトリア朝のロンドンの下町のスリの娘と令嬢の恋愛
    ✔ 韓国で「お嬢さん」として映画化

    ★★★★★ ある令嬢のメイドとなり騙すつもりが二人の関係は深まっていく。ちょっとずつ始まる狂気。騙し騙され、また騙され。女の子二人と犯罪と愛、面白くないわけがない。韓国で映画化。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    パク・チャヌク監督の韓国映画「お嬢さん」の原作。
    と前置きしているいうことはつまり私は先に映画を見てしまったんです。
    映画は映画ですごかったのでどうしても原作をということで。

    詐欺を生業とする「家族」の孤児スウは次の大掛かりな詐欺のためにとある令嬢の下でメイドとして雇ってもらうが、彼女たちの関係はどんどん深まっていく。

    映画では叔父は浮世絵を集めているけれど本では書物、言葉。
    それに象徴されるかのようなことだけど当然映画のほうがドラマチックな流れになるので仕方がないんですが、映画を先にみるとどうしても比べてしまう。

    だからと言って本の良さは色褪せることはない。
    世間知らずのお嬢さん、詐欺の男、ちょっとずつ始まる狂気。
    背景となるビクトリア朝のロンドンの下町なども描写も面白くて、いくつかの物語を一つの本にまとめたような。
    女の子二人、犯罪、そして愛情。

    誰が誰をだましているのか、そう来るか、と思ったらまた違った展開に、と思ったら今度はそっちか、と緊張感が続く。

    ネタバレにならないように最後に一言、彼女はただの繊細な真珠ではなく、自分自身をやっと見つけた女性として輝き始める。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Fingersmith" Sarah Waters (2002) Review | Girls in crime and in love
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    荊の城 上 (創元推理文庫)
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  • 『密教』 松長有慶, 1989年 レビュー | 合理性を求めない真理の密教史

    『密教』 松長有慶, 1989年 レビュー | 合理性を求めない真理の密教史


    https://akapannotes.com/2026/02/17/%e3%80%8e%e6%97%a5%e6%9c%ac%e4%bb%8f%e6%95%99%e5%8f%b2%e3%80%8f-%e6%9c%ab%e6%9c%a8%e6%96%87%e7%be%8e%e5%a3%ab-1992%e5%b9%b4-%e6%84%9f%e6%83%b3-%e4%bb%8f%e9%99%80%e3%81%ae%e6%95%99%e3%81%88%e3%82%92/
    密教
    インドから日本への伝承
    松長有慶, 1989
    278ページ
    2026.02 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 密教の歴史書
    ✔ 伝承の流れをインド、中国、日本と詳しく説明する
    ✔ 密教の教義の背景

    ★★★★☆ 密教は合理性を求めず真理を人格化する、なので歴史を追うのは難しい。この本はその伝承の流れをインド、中国、日本と詳しく説明するので難しいが全体像がよく見える。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    「現実世界の時間•空間を越えたあるもの、聖なるもの、神秘的体験の秘密の世界は、経典の中で、非合理的な神話的な手法によってかろうじて現実化されている。」

    密教が一番自分にとっては、これだけは分かりそうもない、と勝手に思ってた宗派。

    密教はつまりは上記の通りで合理性を求めない、さらには真理を人格化する。
    合理性は重要じゃないけれど、その教義が言葉や文字で伝えられないから師匠の存在が重要になり、つまり伝承の正当性が最重要になるんですね。

    この本はその伝承の流れをインド、中国、日本と非常に詳しく説明されているので初心者には難しすぎた。
    理解どうこうというより、聞いたこともない名前や漢字20字の経典がどんどん出てきてしかもサンスクリットの漢訳の日本版、とややこしさが重なっていく。
    しかも合理性を重視しないということは、神話と化していて年代に辻褄が合わなかったり、造り上げられた出来事も時代や地域によって違ってたり、そういうのを行き来するので付いていくのが難しい。

    現代社会ではそういう宗派は多くの信者はいないだろうけど、その大切さも分かる。
    目に見える曼陀羅や大日如来の姿に安心するし祈りの対象に適しているのは当然。

    ただこの本は教義の内容ではなく、あくまでその密教史を掘り下げるものです。
    すでに仏教や密教の知識のある人がより楽しめると思う。
    あと、この本は何度かリニューアルしているのでリンクの新しいバージョンをぜひ。
    🔽 関連ページ 🔽
    『日本仏教史』 末木文美士, 1992年 感想 | 仏陀の教えをローカライズ

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    https://akapannotes.com/2026/02/17/%e3%80%8e%e6%97%a5%e6%9c%ac%e4%bb%8f%e6%95%99%e5%8f%b2%e3%80%8f-%e6%9c%ab%e6%9c%a8%e6%96%87%e7%be%8e%e5%a3%ab-1992%e5%b9%b4-%e6%84%9f%e6%83%b3-%e4%bb%8f%e9%99%80%e3%81%ae%e6%95%99%e3%81%88%e3%82%92/
    密教 インドから日本への伝承 (中公文庫BIBLIO)


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  • 『(茶の歴史)』 ロイ・モクサム, 2003年 レビュー | 情報の詰まった茶の歴史本

    『(茶の歴史)』 ロイ・モクサム, 2003年 レビュー | 情報の詰まった茶の歴史本


    A Brief History of Tea
    (茶の歴史 中毒と搾取と帝国)
    ロイ・モクサム 2003
    A BRIEF HISTORY OF TEA:
    Addiction Exploitation and Empire (Brief Histories)
    Roy Moxham 2003
    2020.08 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る
    (日本語未出版)


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 茶をめぐる英国、中国、インドの歴史
    ✔ 大英帝国の支配のシステム
    ✔ アフリカなども関わってくる現在に至るまでの流れ

    ★★★★☆ 茶の歴史、ということで地域としてはもちろん英国、中国、インドを中心とした歴史の本で、つまりは英国がいかにシステマチックに中国のモラルを破壊し、インドを陥れたか。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    Brief、簡潔なという名のシリーズだけれどかなりの情報量でさらっと読むものではない。

    茶の歴史、ということで地域としてはもちろん英国、中国、インドを中心とした歴史の本で、つまりは英国がいかにシステマティックに中国のモラルを破壊し、インドを陥れたか。
    お茶が好きな誰もが忘れてはいけない植民地主義の歴史。

    現在はヨーロッパにもっと近いアフリカのケニアで安価な茶葉が作られる。
    同じような運命をたどったのはチョコレートで、同じくアフリカでかなり安く作られる。
    砂糖もそう、嗜好品の歴史はどれも苦い。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "A BRIEF HISTORY OF TEA" Roy Moxham (2003) Review | An informative history book around tea

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    A Brief History of Tea
    A Brief History of Tea: Addiction, Exploitation, and Empire (Brief Histories)


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  • 『(メアリ・シーコール)』 ロン・ラムディン, 2005年 レビュー | ジャマイカ生まれの看護婦の伝記 

    『(メアリ・シーコール)』 ロン・ラムディン, 2005年 レビュー | ジャマイカ生まれの看護婦の伝記 


    Mary Seacole
    (メアリ・シーコール)
    ロン・ラムディン, 2005年
    Mary Seacole
    Ron Ramdin, 2005
    2020.07 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る
    日本語未出版


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ ジャマイカ出身の看護婦の伝記
    ✔ クリミア戦争で活躍した、ナイチンゲールと同じ時期の人物
    ✔ 近年その活動が再認識されている

    ★★★★★ ジャマイカ出身の混血の看護婦。クリミア戦争で肌の色を理由に英国ナイチンゲールに拒否されるも自費で向い戦線で兵士たちの心と身体の傷を癒す。「混血版ナイチンゲール」ではない。彼女はシーコールという一人の独立した英雄である。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    ジャマイカ出身の混血の英国人の看護婦の伝記。
    幼少期から医療や看護に携わるも混血であること、女性であることで大きく差別を受ける。
    クリミア戦争のとき英国のボランティア看護師を志願するも、白人でないことでフローレンス・ナイチンゲールに拒否される。

    それでも自分の経験と知識は役に立つと信じ、自費でクリミアに入り、ナイチンゲールたちが後方の安全なエリアで看護をしている中、戦場にかぎりなく近い場所で看護施設を設ける。
    食堂のようなビジネスを立ち上げ資金稼ぎにするという偉業。
    戦場で兵士にとってのくつろげる場所を提供し、その売り上げを兵士の身体的な傷を癒す。

    拒否られようが差別されようが、とにかく怯まない、自分の能力を最大限に使って人を助けるために生きる、すごい。

    英国人、白人である兵士たちを「息子たち」と呼び、彼らからも信頼され愛される存在になる、これはのちに彼女が破産したときに当時の兵士たちが助けたということでも証明されている。

    逆に神経質で有名なナイチンゲールの暗い部分を浮かび上がらせる話でもある。
    人手が足りないのに人種差別を優先したあとも、戦線で生き生きと兵士たちの心と体の看護に徹したシーコールを、兵士に酒を飲ませた、うるさい、と非難。
    そして英国という国もシーコールの偉業を100年近く闇に葬り、ナイチンゲールのみを全面的に「天使」化した。

    決して忘れてはいけないのはシーコールは「混血版ナイチンゲール」ではない。
    彼女はメアリ・シーコールという一人の独立した英雄である。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    “Mary Seacole” Ron Ramdin (2005) Review | Determination to help her "sons"
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    Mary Seacole
    Mary Seacole (Life & Times) 英語


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  • 『日本仏教史』 末木文美士, 1992年 レビュー | ローカライズする仏教の強さ

    『日本仏教史』 末木文美士, 1992年 レビュー | ローカライズする仏教の強さ


    日本仏教史―思想史としてのアプローチ (新潮文庫)
    日本仏教史
    思想史としてのアプローチ
    末木文美士, 1992
    412 ページ
    2026.02 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ その時代、その地域に合わせた仏教の思想の変化
    ✔ 学校で習う出来事の本当の背景と意味
    ✔ 思想を辿って知的アドベンチャー

    ★★★★★ 仏教はその時代その時代に形を変え、その都度「日本の仏教」として存在してきた。仏教と神道とキリスト教をも平然と受け入れる理由にも通じる日本の強み。思想を辿って知的アドベンチャー的な読書。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    日本にやってきた仏教が、どう「日本の仏教」になったのか。
    とにかく脳みそ刺激されまくり。
    裏表紙にもある通り、知的興奮に満ちた旅、そう、知的アドベンチャー。

    偶然手に取った本が自分の想像以上に興味のど真ん中に命中することがある。
    私は仏教に興味があるし、その考えで気分がふっと軽くなることがあるので本を読んだりするけど、信者かと問い詰められたら答えに困る。
    そんな典型的日本人である私が興味を持つ理由は正にこれ、ここにじっくりと紹介されている。

    なぜ、どう「日本の仏教」になったのか。

    祈祷の仏教、先祖のための葬式仏教、ルール重視の仏教、いま浄土確定のコスパのいい仏教、そして神道と仏教がどちらも文化として存在する日本。

    そういう観点から日本における仏教の江戸時代くらいまでの歴史を紹介するのがこの本。
    仏教史に詳しくない私は次々と出てくる名前や文献に唸ってしまったけれど、知らなくても大丈夫、この本が重視するのは思想史であり仏教史の暗記じゃない。

    終章で遠藤周作の『沈黙』が出てくるけど、日本という土地の特徴は結局はこれ。
    (読んで最後に納得してもらうためここでは「これ」としか書きませんよ)
    仏教と神道とキリスト教を平然と受け入れる日本。
    日本以外の国の人にはわかりづらいし国内外で批判だってされる。
    でも私はこれは考えようによっては日本の強みだと思う。
    仏陀の教えを「日本の仏教」に変えた強み。


    その後の明治以降の日本の仏教の流れも気になる。
    🔽 関連ページ 🔽
    tag ; 仏教
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    日本仏教史―思想史としてのアプローチ (新潮文庫)
    日本仏教史―思想史としてのアプローチ (新潮文庫)


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  • 『The Other Middle Passage』 ロン・ラムディン, 1994年 レビュー | 新しい奴隷制度の一例

    『The Other Middle Passage』 ロン・ラムディン, 1994年 レビュー | 新しい奴隷制度の一例


    The Other Middle Passage: Journal of a Voyage From Calcutta to Trinidad 1858
    The Other Middle Passage:
    Journal of a Voyage From Calcutta to Trinidad 1858
    ロン・ラムディン, 1994
    Ron Ramdin, 1994
    62 ページ
    2020.06 読了


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 奴隷制度廃止後のインドからのクーリー貿易の一例
    ✔ 労働者の輸送中のコンディションなどを解説
    ✔ 1858年のとある船長の妻の日記を含む

    ★★★★★ いわゆる奴隷制度がなくなっても、当時のカリブ海では全く人手が足らない状態で、アフリカではなく今度はインドから過酷な状況下の労働に人々を輸送。その子孫の著作。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    インド系トリニダード人の友人の著作。
    インドから西インド諸島、カリブ海地域に送られたクーリー貿易(苦力貿易)といわれる新しい形の奴隷制度のついて。

    冒頭は輸送された労働者のコンディションについて、特に一つの船の状況を詳しく書いている。
    1858年に出向したその船は、108日かかった輸送で324人中124人が死亡。

    奴隷制度がなくなっても、当時のカリブ海ではサトウキビなどの栽培で全く人手が足らない状態になり、アフリカではなくインドから自由を奪って過酷な状況下の労働のためだけに人々を輸送。

    後半になるとその船内の様子や船長の奥さんの日記などによって当時の状況が詳しく書かれている。
    といっても、つまりは病気になって当たり前の環境で毎日人が病気になり、毎日人が死んでいく様子が綴られる。

    友人の彼も、クーリーとして送られて来た人の子孫で、白人の下に黒人、その下にインド人がいるという子供時代を過ごす。
    日本ではこの本は手に入りにくいので、もし興味があればご連絡ください。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    “The Other Middle Passage” Ron Ramdin, (1994) Review | Another slave trade
    tag 植民地主義 インド
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    The Other Middle Passage: Journal of a Voyage From Calcutta to Trinidad 1858
    The Other Middle Passage: Journal of a Voyage From Calcutta to Trinidad 1858

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  • 『黒い皮膚・白い仮面』 フランツ・ファノン, 1952年 レビュー | 劣等感と優越感の心理的構造

    『黒い皮膚・白い仮面』 フランツ・ファノン, 1952年 レビュー | 劣等感と優越感の心理的構造



    黒い皮膚・白い仮面
    フランツ・ファノン, 1952年
    Black skin, white masks
    Peau noire, masques blancs
    Frantz Fanon, 1952
    2020.05 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 人種差別の裏にある心理的構造と恐怖を説く
    ✔ 植民地マルティニーク出身の精神科医
    ✔ 留学中の当時のフランスにおける人種差別に向けて

    ★★★★★ 黒人は白人社会に身を置いて初めて黒人となる。その植民地主義の世界で黒人は常に自らを否認しながら生活する。複雑で解決方法がなくても、目を背けない、そのためにこの本を読む。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    ポストコロニアリズムの古典。
    黒い皮膚を持ちながら白人として生きるとはどういうことか。
    いやもっというと、白人としていきたいと思うこととは、どういうことか。

    著者ファノンはフランスの植民地マルティニーク出身の精神科医。
    精神科医ということは潜在意識の専門家であり、つまり制御された欲求、つまり性的欲求、もしくは恐怖の専門家。

    黒人は、白人社会に身を置いて初めて黒人となる。
    白人社会とは植民地主義の世界であり、黒人は常に自らを否認しながら生活する必要がある。
    自己否定を避けることができても、主体的にはならない。
    逆に白人は、自分たちが勝手に作り上げた黒人像に怯えながら生活する必要がある。
    野蛮で、なにより性的に強力な黒人像。
    面白いのは、恐怖症という怯えは実は深いところにある欲求から生まれるという論点。
    つまり、差別主義者は心の奥では黒人に脅かされたいという欲求がある、と。

    もう一つ面白い点は、彼はフランスの植民地主義について語るという点で、奴隷制度の廃止はアフリカ人が戦って得たものではなく、白人のご主人様から与えられたものだという観点。

    もちろん、黒人だけでなく私自身のように白人社会で生きる白人以外の人間は常に自分の皮膚の色がもたらす余計な意味について意識しながら生活するわけで、どこにいても白人が一番優位である事実は避けられない。
    日本は植民地化されていないので、日本にいる限り自分の肌の色から生まれる原罪を意識することはほとんどない。
    むしろ日本人特有のコンプレックスでアジアにおける「黄色い皮膚・白い仮面」というちょっと違う側面もあるが、それはここではさて置き。

    あと、上記にもちょっと書いたように、もちろん映画や娯楽、アート、文化において黒い皮膚というのは悪と描かれるので、アジア人を含む共同的なイマジネーションにおいて、その歴史を知っていなくても「黒=悪」という方程式が植えつけられる。

    ファノンは、植民地主義に植民地化されたくないという。
    黒人は劣等感から解き放たれ、白人は優越感から解き放たれるべきだと。

    そして70年以上たった今。
    人種を超えたコミュニケーション、友情、恋愛関係は普通になって、人種差別をする人間は見下される世の中になった。
    でも、私たちは本当の意味で人種から自由になったのか。

    ファノンの苦悩はなくならなかった。
    例え知識人として知的な発見をしたとしても、サトウキビ畑で労働を強いられている8歳の子の生活は変わらないと。
    問題は単純に皮膚の色だけでもない。
    白人社会で生きるミドルクラスの黒人の苦しみと、その日の生活がやっとの黒人の苦しみ、二人の問題は同じものではない。
    人種の問題は多くの段階を含み、層を含み、複雑である。

    でも、それでも、たとえ複雑であっても解決方法がなくても、目を背けない、そのためにこの本を読む。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    tag 植民地主義
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    黒い皮膚・白い仮面 【新装版】



    フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い仮面』 2021年2月 (NHK100分de名著)
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  • 『ゴータマ・ブッダ』 2011年 レビュー | ブッダの人生を知る入門書

    『ゴータマ・ブッダ』 2011年 レビュー | ブッダの人生を知る入門書



    Gautama Buddha
    The Life and Teachings of The Awakened One
    Vishvapani Blomfield, 2011
    (ゴータマ・ブッダ)
    416 ページ
    2020.02 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る
    日本語未出版


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ ブッダの個人としてのバイオグラフィー
    ✔ 経典や教えというよりもその生き様の入門書
    ✔ 当時のインドの様子や周囲の人間の環境も

    ★★★★☆ 飾らずミステリアスにならないように書かれたブッダの伝記。経典ではなく個人としてのブッダの人生を知る入門書であり、そしてなぜあの時代のインドで仏教がスタートしたかがよく分かる一冊。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    できるだけ飾らずミステリアスにならないように書かれたブッダの伝記。

    なんといっても2500年前なので順序よく語るのが難しいはずだけど、ブッダの人生を忠実に追い、当時のインドの様子もきちんと描写されている。(といってもこれまた大昔なので現実ではありえないことになる場合もある)

    経典ではなく個人としてのブッダの人生を知る入門書であり、そしてなぜあの時代のインドで仏教がスタートしたか、なぜ現代においても多くの人を魅了するのかということ、ということがよく分かる一冊。
    ただ読むのは難しかった。だって今もだけどこの時代のインドの人の名前はとても長くてしかも色んな人が出てきて誰が誰かわからなくなる。
    なので英語自体はちょっと上級者向き。


    🔽 関連ページ 🔽

    English review “Gautama Buddha” Vishvapani Blomfield (2011) Review | Intro to Buddha’s own life
    tag 仏教
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  • 『(私がなぜ人種についてもう白人にはなさないのか) 』2019年 レビュー | 人種差別と対話

    『(私がなぜ人種についてもう白人にはなさないのか) 』2019年 レビュー | 人種差別と対話



    Why I’m No Longer Talking to White People About Race
    Reni Eddo-Lodge, 2019
    (私がなぜ人種についてもう白人に話さないのか)
    2020.01 読了
    アマゾンであらすじと詳細を見る


    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 英国の黒人女性が現代の人種差別へ立ち向かう
    ✔ 表紙のデザインは「白人たちに気を使う」というテーマから
    ✔ 人種差別も女性差別も無視せず声を上げる姿勢

    ★★★★★+❤ この本がなぜ今重要なのか。白人が人種差別主義者とレッテルを張られることは、黒人が人種差別を受ける事よりも酷いことという考えがまかり通る今の社会。実際に人種差別がなくならない理由はなにか。「何が」問題なのか。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    とてもパワフルな一冊。 
    まずはカバーがいい。彼女の怒りや苛立ちを思う存分に表現してる。
    そして中身、今の英国にとってとても重要な内容。
    英国の歴史の中での黒人やアジア人がどうか変わってきたのかという観点から始まり、英国にシステムがいかに差別的か、またその差別が正当化されているか。
    (正確には黒い人と茶色の人という言い方でいわゆる東洋人、黄色人種ではない)
    何が人種差別を生むのか。そこで人々が抱える恐怖とは。
    フェミニズムと人種、階級と人種、と続く。

    この本が、なぜ今、重要なのかは英国に住んでいれば分かる。
    つまりここ5年ほどで、人種差別は正当化されているから。(当時2020年)
    白人が人種差別主義者とレッテルを張られることは、黒人が人種差別を受ける事よりも酷いことという考えがまかり通る社会。
    そして今まで、英国に特化した人種差別を問う本や議論の場というのは数えるほどしかなく、ほとんどはアメリカから輸入されたものであったという事実。
    つまりそれだけタブーであるということ。

    フェミニストでもある著者は、フェミニズムの土俵で、人種のことに触れると突き放されるという。
    別の場所でやってくれ、と。
    まるでフェミニズムは比較的裕福な白人女性のためだけの場であるかのように。
    多くのメインストリームの場で女性の権利は支持されるのに、人種差別に反対することは、理論的なレベルで支持されても、日常レベルでは見て見ぬふりをされる。
    しかも「これは人種差別じゃないから」と開き直って。

    実際に人種差別がなくならない理由はなにか。
    「何が」問題なのか。
    明らかに白人主義に問題がある、もちろん。
    どうやって白人のセンチメンタリズムを傷つけずに、白人を優位な立場から引きずり降ろさずに議論するか。
    怖い黒人女性と決めつけられずに意見を主張する方法があるのか。
    そういった葛藤の中で、彼女は、もう白人に人種の話はしない、と宣言したわけです。
    もちろんこれは、さらに数年前のブログのタイトルで、そこから彼女はやっぱり言わなければいけない、ということでこの本を書いているわけですが
    沈黙は自分を守ってくれない。黙っていても自分の立場は良くならない。

    挑発的なこの本は、まさに多くのセンチメンタルな白人を追い詰めて、彼らを罪悪感に浸らせてしまった。
    どうしていいかわからないと頼ってくる白人たち。
    イベントのQ&Aでモノローグを始め勝手に泣き崩れる白人。
    でも彼女は言う。
    罪悪感を感じる余裕があれば、自分の行動範囲内で声をあげてみればいい。
    一人ひとりが行動をし、一つのムーブメントとなる。

    日本にいればたしかにこの感覚は分かりづらい。
    でも、やっと外国人が日常で増えてきて対岸の火事ではなくなった。

    それでもこれはやっぱり重要な本である。
    英国人歌手のStormzyが言ったように、英国には例えばイタリアのようなあからさまな人種差別はないかもしれない。
    でも確実に存在していて、差別主義者は今まで陰口を言っていただけだけど、今日の英国で大声で言える権利を得たと勘違いしている。
    そしてそれはとっても恐ろしいことだ、と。

    この若い英国人黒人女性によって書かれた本がベストセラーになっていることは、間違いなく英国各地で議論のきっかけになった。
    ちょっと希望が持てる気もしてくる。


    🔽 関連ページ 🔽
    English review “Why I’m No Longer Talking to White People About Race” Reni Eddo-Lodge (2019) Review | silence won’t protect us

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    Why I’m No Longer Talking to White People About Race: The #1 Sunday Times Bestseller
    
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  • 『(ダージリン; インドのフェアトレード茶畑における労働と正義)』サラ・ベスキー,2014 感想 | ダージリンの現実>>

    『(ダージリン; インドのフェアトレード茶畑における労働と正義)』サラ・ベスキー,2014 感想 | ダージリンの現実>>

    🔽 基本情報 🔽
    The Darjeeling Distinction: Labor and Justice on Fair-Trade Tea Plantations in India (California Studies in Food and Culture Book 47)
    Sarah Besky, 2014
    (ダージリン ディスティンクション; インドのフェアトレード茶畑における労働と正義)
    サラ・ベスキー
    258 ページ
    2022.11 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    まさに探していたトピックの本。
    ダージリンのお茶と産業と労働者の関係。

    ダージリンは世界で一番高級な茶であり、世界中で知られていてステータスもある、なのになぜダージリンの労働者は貧しいのか。
    ダージリンのお茶一杯の値段はお茶を摘む仕事の女性の一日の給料より圧倒的に高い。
    高級感を売り物にするダージリンの現実は静かに隠されている。

    ダージリンやシッキム州のいわゆる広い意味でダージリン茶を作るエリアは実は最近まではインドではなかったし、18世紀に英国人が周辺の発達のためにネパールから大量の労働者を連れてきたので、人種的にもほとんどがインド人ではない。
    90年代に盛んだったグルカ運動はいまも消えたわけではないけれど、これだけ商品価値のある商品を作るダージリン、インドは、西ベンガル州は何があっても手放さない。
    グルカもネパール系の人々は何代もの間この産業を支えているのに実質的に何も所有できない、他の道も少ない、自分たちの歴史さえ曖昧になっている。
    フェアトレードの観点から言うと、フェアトレードを押し付けられるせいで現地の人間の生活はより厳しくなったとも。

    高級茶の代名詞のダージリンは現地の人々からの搾取によって支えられている。

    🔽 関連ページ 🔽

    English review “The Darjeeling Distinction” Sarah Besky (2014) Review | Dark side of the posh tea
    tag 東ヒマラヤ

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  • 『インド ミニアチュール幻想』 山田和, 2009 感想 | 宇宙と神々と人の営みが詰まっている >>

    『インド ミニアチュール幻想』 山田和, 2009 感想 | 宇宙と神々と人の営みが詰まっている >>

    🔽 基本情報 🔽
    インド ミニアチュール幻想
    山田和, 2009
    511 ページ
    2025.11 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    細密画のなかには宇宙と神々と共同体としての人の営みが詰まっている。
    そしてこの本はそれを我々に伝えようとする。

    細密画を通じてインドを旅行するような本。
    ただここでは、街から街へという移動ではなく、インドという空間と歴史を移動する感じ。
    16世紀から18世紀に渡り栄えたインドの細密画文化はラジャスタンを中心としたヒンドゥー教色の濃いラジプート派と、ムガール帝国時代の華やかな文化を象徴した、ムガール細密画と大きき二つあるよう。

    そして有名なのは筆。
    私が聞いたのはリスを毛を、一匹からは毛一本しか抜かない、というものだったけれど、ここではバサッとハサミで切るそう。
    それでも、一匹からは筆一本しかつくらない。
    もちろんそのリスには危害を加えないように細心の注意を払いつつ。

    そういう全体的なミニアチュールに関する章もあるし、画家個人を追った章、または蒐集家を追った章もある。
    細密画コレクターの友人でありライバルと、骨董屋から安く買い取るやり取りの様子も、蒐集に取り憑かれて犯罪や詐欺にに手を染める男たちもと、とにかく幅広い内容でどんどんよ読み進めてしまう面白さ。
    そして最後の方にはインド思想という壮大な時空の中にある細密画の位置付けと意義とでもいうのか、細密画に見る美の存在自体を追求する。
    最後に参考文献がたくさん並んでいるので、できる限り揃えたい。

    芸術であり宗教的であり、作者一人の人生を越えたもの。
    だから描いた人のサインはされない。
    画家はもちろん画家のカーストに生まれたから、父から祖母から受け継いだ精神で自らの人生全てで細密画に向かう。

    個人という枠を軽々と越え、時間と空間の壁を越え、宇宙と神と一体になるという感覚。
    音や絵を通じてしか伝えられない古代から続く感覚。
    この前読んだのNine Livesに通じるものもあるけれど、同じようにその感覚が近代化のなかでなくなりつつあるという危機感も持ってしまう。
    日本だって音楽や芸術を通じて自然と繋がる感覚がなくなっているように。

    やっぱりラジャスタンいかなきゃなー。
    最近どのインドの本みても、ラジャスタン州が出てくる。
    超観光地だから前回ためらったけど、毎日移動に車で8、9時間という現実を受け入れればまだ近代化してないインドに会えるんだろうなー


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  • 『9つの人生』ウィリアム・ダルリンプル, 2013 感想 | もう人間ではない聖なるもの / >>

    『9つの人生』ウィリアム・ダルリンプル, 2013 感想 | もう人間ではない聖なるもの / >>

    🔽 基本情報 🔽
    Nine Lives: In Search of the Sacred in Modern India
    William Dalrymple, 2013
    9つの人生 現代インドの聖なるものを求めて
    ウィリアム・ダルリンプル
    305 ページ
    2025.11 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    今まで読んだダルリンプル氏の他の本とはちょっと違った感じ。
    形としては旅行記なんだけど、旅先の土地の様子ではなく、その土地が「創り上げた」人々の話。

    9つの聖なる人生、9人の人間のストーリー。
    彼らは人間ではあるけれど、「聖なるもの」として崇められすでに人間ではない生活を送っている。
    例えば自己を捨て聖人としてただ流れに任せて生きている人や、女神に仕える女性として生きているけれどでもやっていることは売春婦でしかないひと、または宗教的な踊りや歌を受け継ぐ人、本当にそれぞれの宿命を背負って生きている。

    私がダルリンプルの書く文章が大好きな理由はもちろん、彼のすべてをありのままに受け止め、深い情熱と愛を持って世界に届けようとする徹底したその姿勢。
    いまインドの社会は大きく変化している。
    それは日本のように人々が宗教から離れていくという減少ではなく、その土地その町の超ローカルな信仰が薄れていき、代わりに、意図的に、インド全国規模の統一されたヒンドゥー教が彼らの生活に入り込んできているということ。
    何百年も語り継がれてきた地元の信仰とは違う、インド全土で統一されたラーマの物語が全国放送のテレビを通じて短期間で人々の脳内の記憶を塗り直すナショナリステックなラーマフィケーション(Rama-fication、ラマ化)が進む中、あと何十年、あと何年でローカルな信仰や伝統は忘れ去られるのか。

    その最後をきちんと書き残してくれる歴史家がいるって素晴らしい、の一言に尽きる。
    🔽 関連ページ 🔽

    English review “Nine Lives” William Dalrymple (2013) Review | Being holy in India today
    tag インド
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    9つの人生 現代インドの聖なるものを求めて (集英社新書)

    
    
  • 『(歴史上の100人の邪悪な女たち)』 Hannah Jewell, 2019年 感想 | 構わず偉業を残した女性たち

    『(歴史上の100人の邪悪な女たち)』 Hannah Jewell, 2019年 感想 | 構わず偉業を残した女性たち

    🔽 基本情報 🔽
    100 Nasty Women of History:
    Brilliant, badass and completely fearless women everyone should know
    Hannah Jewell, 2019
    (歴史上の100人の邪悪な女たち)
    376 ページ
    2022.03 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    100人の女性の伝記コレクション。
    トランプがナンシー・ペロシ史をnasty と呼びいつものように低俗なあだ名で呼んでいたのにかけて、歴史上の100人のやり手な女性を集めた本。

    著者ごとく、彼女たちについて深く読んでいく前に私達は彼女たちが間違いなく存在したという事実をきちんと受け止めるべきだと。
    歴史のホコリにまみれて人の目のつかない場所に追いやられた女性たち。
    男性と同じ様に成果を残しても、女性は常に男性より以下。男性の偉業ほど大事ではない。
    もし仮に、女性が何かを成し遂げたとしてもそれはただの偶然で、女性は英雄ではなく男社会にとってただnastyなだけ、邪悪なだけ。

    カテゴリー別に分かれていてそれぞれは短くて読みやすく、ジョークや口の悪い文章が連なるけれど、やりすぎずちょうどいい。
    ここからそれぞれの女性について読みすすめるガイドブック的な本。

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    100 Nasty Women of History: Brilliant, badass and completely fearless women everyone should know (English Edition)
  • 『喪失の響き』 キラン・デサイ, 2006 感想 | 平等、和解、夢、そんなものは存在するのか

    『喪失の響き』 キラン・デサイ, 2006 感想 | 平等、和解、夢、そんなものは存在するのか

    🔽 基本情報 🔽
    The Inheritance of Loss
    Kiran Desai, 2006
    喪失の響き
    キラン・デサイ
    384 ページ
    2022.01 読了
    アマゾンで見る
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    友人に進められるままに買ったので、私がいつも気になっている東ヒマラヤのカリンポンの街が舞台とは知らなかった。

    裕福な家庭の女の子が孤児になり、インド料理もナイフとフォークで食べるような厳格な祖父と暮らすことになる。
    そのころ激しくなっていくグルカ運動(ネパール系独立運動)に生活と人生を翻弄される人々。
    少女の想像と妄想と、そして現実。

    祖父と召使いだけの大きな家で、彼女はある貧しい青年に恋をする。
    同じ頃、召使いのニューヨークに住む自慢の息子は実は底辺を這うような生活をしていた。
    一見繋がりのないそれぞれの人生、でもグルカ運動が過激化するごとに確実に狂っていく。
    人一人の人生なんて一瞬にして壊されるなかで、平等、わかり合い、夢、そんなものは存在するのか。

    激しく変化する生活の中で唯一変わらないもの、ヒマラヤ山脈。
    春には淡い希望を運んできて、雨季にはすべてを腐らせる湿気を運んでくる神の宿る山のもとで、その流れに身を任せる。
    日本の表紙のように明るく可愛いストーリーではないです。

    そういう感覚はインドではかなり身に沁みるというか、自分よりも圧倒的に強いパワーというものが現実にあるインド。
    コミカルな場面が余計に悲劇を浮き立たせる、力強い一冊。


    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The Inheritance of Loss" Kiran Desai (2006) Review | Peace, understanding, dream, no such things here
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    喪失の響き (ハヤカワepiブック・プラネット)

  • 『(大英帝国とグルカの関係)』 GL・ライジムダー, 2007年 感想 | 大英帝国とインドの間で

    『(大英帝国とグルカの関係)』 GL・ライジムダー, 2007年 感想 | 大英帝国とインドの間で

    🔽 基本情報 🔽
    Anglo-Gurkha Relations: Historical Account of how the Gurkhas Bestowed upon Queen Victoria the Gift of Indian Empire
    GL Rai-Zimmdar, 2007
    (大英帝国とグルカの関係)
    211 ページ
    2023.12 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    自主出版だと思うけれど、大英帝国とインドの側で歴史を紡いてきたネパールに関する独自の見解で興味深い。

    いままでの大英帝国とグルカ、ネパールの関係や歴史を語る本は間違えている、というところから出発しているので、この本のミッションとしてはそれを正すことのよう。
    なので大英帝国とグルカの関係自体について学ぶ本ではないのが私の希望から外れていた。
    ただ、英国とインドという巨大な渦のせいでネパールの存在が軽視されてきたという点には納得。
    なので、私はまずはオーソドックスにネパールの歴史を学ぶべきです。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review “Anglo-Gurkha Relations” GL Rai-Zimmdar (2007) Review | Britain and Nepal
    タグ: 東ヒマラヤ
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    Anglo-Gurkha Relations: Historical Account of how the Gurkhas Bestowed upon Queen Victoria the Gift of Indian Empire


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  • 『茶の世界史 緑茶の文化と紅茶の社会』角山栄, 1980年 感想 | 茶の歴史と経済学

    『茶の世界史 緑茶の文化と紅茶の社会』角山栄, 1980年 感想 | 茶の歴史と経済学

    🔽 基本情報 🔽
    茶の世界史
    緑茶の文化と紅茶の社会
    角山栄, 1980
    Sakae Tsunoyama
    239 pages
    2023.06 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    サブタイトルがまさに的を得ている。
    経済学という視点から出発しているので、よくあるただ歴史を辿る本とは違う。
    なぜ茶は欧米で受け入れられ、なぜ紅茶が圧倒的に広がったのか、なぜ砂糖をいれるのか。

    当時の世界的ブームのスタート地点は日本の茶道であったにも関わらず、近代において日本の茶は売れなかった。
    そこには元々、西洋の東洋に対する優れた文化に対するコンプレックスがあった。
    しかし西洋はあっという間に優れた技術と社会を作り出し、もう盗用に対し引け目を感じなくなった。
    そして茶を得るためにそれと平行して発達した近代工業化。
    つまり、プランテーションに負けた中国と日本。

    やっぱり茶の文化、歴史は面白い。
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    茶の世界史 改版 - 緑茶の文化と紅茶の世界 (中公新書 596)


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  • 『(シッキム)』アンドリュー・ダフ 2015年 感想 | シッキム王国の歴史と魅力

    『(シッキム)』アンドリュー・ダフ 2015年 感想 | シッキム王国の歴史と魅力

    🔽 基本情報 🔽
    Sikkim
    Requiem for a Himalayan Kingdom
    Andrew Duff, 2015
    (シッキム ヒマラヤ王国へのレクイエム)
    アンドリュー・ダフ
    320 pages
    2023.01 読了
    日本未出版
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    シッキム王国がインドに吸収される前の数十年を詳しく書いたシッキムの歴史の本でありながらも、その最後のチョギャル(王様)であるトンドゥプ・ナムゲルのストーリー。

    シッキム、現インド シッキム州はネパール、ブータン、チベットなどに囲まれたヒマラヤ山脈の東に位置するエリア。
    地形的に厳しいエリアでありながらも重要な国々に囲まれた特殊な地理もあり、17世紀からはチベット系の王チョギャルが治めていて、1975年にインドに吸収される。

    知れば知るほど面白くて仕方がないのです。
    この本のスコットランド人著者は、幼い頃に祖父が語ってくれたシッキムに憧れ、ついにその地を訪れる。
    ペリンの町の外れにあるペマヤンツェ寺院で、ちょっと変わったに僧に出会い、お前はシッキムの何を知っているんだ、と言われ、ある本を渡された。
    そこから彼の本格的な研究が始まる。
    その僧こそ、当時国王の側近であった人物であり、その本が最近私もやっと読めた本Smash and Grabなんですね。

    ヒマラヤの文化が集中しているシッキム、元は現地民が住んでいたけれど、チベット系の王ができたことで文化的に仏教中心になっていって、でも19世紀ごろからは大英帝国も入り込んできて、農業改革を行うに当たり、歴史的にも敵対していたネパール人をシッキムに移住させる。
    チベットや中国が権利を主張するもイギリスの保護国となったシッキム、インド独立後はその権利を引き継いだインドの保護下になるも、最後のチョギャル、トンドゥプ・ナムゲルの方針はシッキム独立であったため、ネパール系に多かった親インド派と国内で対立が続き、親インド派を手懐けたインドの後押しで王政は崩壊、あっというまにインド軍に囲まれ、アメリカに亡命。
    と、簡単な歴史はこんな感じで、この本は最後のチョギャルに焦点を置いたものでありながら、前後の流れもわかりやすい。
    インド、中国、イギリスと巨大な権力がこの小さな王国の上で渦巻いている。
    自分の王としての権利にしがみつき、若いアメリカ人の王妃(東洋のグレース・ケリー)に操られているんだ、出来損ないの政治家だ、と色んな意見はあるけれど、結局のところシッキム王国に何ができたか。
    インドの手下となったネパール系の反対派との動きの詳しい本はこちら。
    “Smash and Grab” Sunanda K. Datta-Ray 1984 >>

    インドとなった現在もインドからシッキム州に行くには検問を通ります。
    私は2023年に行ったけど、外国人は要ビザ。
    シッキム州でシッキム人以外が不動産を買ったりビジネスを始めるのはかなり困難。
    面白いのは、18世紀から圧倒的にネパール系が多いのに、観光地も含め主要な寺院はチベット仏教系。
    自然が豊かなので次回行くときはぜひもっと北部に、それこそこの著者が訪れたペリンに。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    “Sikkim, Requiem for a Himalayan Kingdom” Andrew Duff (2015) Review | Fell in love with Sikkim
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    Sikkim Requiem for a Himalayan Kingdom【電...
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    Sikkim: Requiem for a Himalayan Kingdom (English Edition)


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  • 『遺伝学者、レイシストに反論する』アダム・ラザフォード, 2020 感想 | 事実は事実

    『遺伝学者、レイシストに反論する』アダム・ラザフォード, 2020 感想 | 事実は事実

    🔽 基本情報 🔽
    How to argue with a racist
    Adam Rutherford, 2020
    遺伝学者、レイシストに反論する
    差別と偏見を止めるために知っておきたい人種のこと
    アダム・ラザフォード
    224 pages
    2023.01 読了
    アマゾンで見る
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    人種差別の理論がいかに科学的でないか、という本。

    著者の専門は遺伝子で、一般的に「人種」ということで、肌の色の違いで人類がさらにカテゴリー別に存在するように思われがちだけど、遺伝子という観点でもそうではないということを分野別にきちんと説明している一冊。

    人種差別主義者、レイシストは「人種的に」黒人はああだ、中国人はどうだ、という言い方をする。
    そして100年、200年前に奴隷制度や白人至上主義を肯定するためなんかに言われていた古い考えを何度も繰り返したり、また根拠のない理論を用いる。

    DNAや遺伝子、歴史、古代史など難しくなりがちなものを分かりやすく、興味深くかいている。

    ほんと、よくあることだけど彼らの主張は自分に都合の良い言葉にしがみついて、自分が気分が良くなるためだけのものであり、そういう人に事実を語っても無駄と思ってしまうことは多い。
    でも、だからといっても事実は事実であり、根拠のない差別的な発言はつまりは嘘。
    そこを知らされない人(差別は無知から)に対して、でも言っても無駄だから、そんなの常識だからわかるはず、と放っておいた結果がまたトランプが大統領になった大きな理由だったりするわけで。

    事実を淡々と伝え、嘘の中で生きる差別主義者を言い負かせ、その事実を受け入れてもらえるようにする、やっぱり一般教育は大事なんですね。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    “How to argue with a racist” Adam Rutherford (2020) Review | Facts are facts
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    遺伝学者、レイシストに反論する [ アダム・ラザフォード ]
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    遺伝学者、レイシストに反論する 差別と偏見を止めるために知っておきたい人種のこと


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  • 『 (アカバドーラ) 』ミケラ・ムルジア 2009年 感想 | 終止符を打つ女性

    『 (アカバドーラ) 』ミケラ・ムルジア 2009年 感想 | 終止符を打つ女性

    🔽 基本情報 🔽
    Accabadora
    Michela Murgia, 2009
    (アカバドーラ)
    ミケラ・ムルジア
    208 pages
    2024.11 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    小説「アカバドーラ」現代サルデーニャ文学の最高峰。
    アカバドーラとは、末期患者やその親族の苦しみに終止符を打つ女性のこと、そう、その町で暗黙の了解の中、患者に安楽死をもたらす役目を背負った女性。

    とてもサルデーニャ的でとても地中海文化的。
    土埃の立つ乾いた家の壁、バールに座っている男たち、一日中家事に追われる女たち。
    草原に緑はなく茶色に乾いた草がいつこの地を炎に包もうかと小さな火花を待つ。

    生を与える助産婦が女性なら、生を終わらせるのも女性。
    少女マリアを引き取ってくれた独り身の女性は時折真夜中に黒尽くめの服を着て静かに家を出る。そして翌朝何もなかったかのように帰って来る。

    善か悪か、天使か悪魔か死神か、それはもう問題ではない。
    いま行われるべきか否か。

    サルデーニャでは実際に存在していたと考えられている。
    窒息という方法か、もっと有名なのは槌を使用する方法。
    現在も安楽死の問題は解決しないし、間違いなく客観的に100%正しいという答えは出てこないかもしれない。

    伝統に縛られた厳格な小さな町で、その大きく揺れる心境を圧倒的な力強さと威厳を持って描く一冊。
    日本語もいつか出るといいですね。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Accabadora" Michela Murgia, (2009) Review | A woman who ends life
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    ★★★★★ Accabadora, a woman in Sardinia who ends the suffering of very ill and their families. Is she an angel or a devil? That’s not the point any more to them. A book with an unusual dignity.

  • 『権力、政治、文化 エドワード・W・サイード発言集成』2001年 感想 | パレスチナ二国家解決

    『権力、政治、文化 エドワード・W・サイード発言集成』2001年 感想 | パレスチナ二国家解決

    🔽 基本情報 🔽
    Power, Politics and Culture
    Interviews with Edward W. Said, 2001
    権力、政治、文化
    エドワード・W・サイード発言集成
    アメリカ
    512 pages
    2024.11 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    エドワード・サイード教授とのインタビューや彼の発言を集めたもの。
    第一部は文化的な分野、つまり文学、音楽、芸術などに焦点を置いたもので、第二部は政治的な内容の2つのセクション。
    私にはそういうクラシックな教養がないので前半はわかりにくかったというのが正直な感想。
    でも後半は違う。パレスチナ、ガザで起きていることを知らない人はいない。
    彼が何十年も訴え続けたパレスチナの二国家解決は利己的な権力者に継続的に否定され、いま現在、常識的にありえないはずのパレスチナ人のジェノサイドが私達の目の前で起こっている。

    彼自身は自分を救いようのない楽観主義者と呼んでいた。
    一部の人間は彼を敵とみなしテロリストとも呼んでいた。
    しかし世界中の多くの人間は彼の情熱的なヒューマニズムに心を打たれた。
    イスラム教を崇めるわけでもなくユダヤ教を否定するわけでもない。
    彼がとても人間らしいのは、人間は矛盾していることを理解し、それでも互いに寄り添うことを目指したということ。

    キリスト教徒パレスチナ人。
    典型的なアラブの植民地主義的なクラシックな教育を受け、長年コロンビア大学で英文学と比較文学を教えていたサイード教授。
    世界中で何らかのリベラルアーツ、一般教養を学んだ人間には、彼の唱えたオリエンタリズムはあまりにも有名。
    教育の場以外でも生涯をかけてイスラエルとパレスチナの共存を訴え続けた。
    二国家解決以外はありえない、もう誰も覚えていない歴史や神話に執着せず、今現在その土地に住んでいる人の暮らしを尊重するしか道はない、そうすれば共存はできる、と。

    アメリカの問題は、その昔誤ってアラブを野蛮なテロリストだと位置付けしたあと、その間違いを認めずに野蛮人として描写することに意地になっていることだと。
    そしてもちろん、イスラエルがガザを侵略することによって膨大な利益を受けていることも知らない人はいない。

    サイード教授が亡くなって20年ちょっと。
    憎み合うことが当然という社会で生きてきた人々にとっても彼は大切な灯火であり、憎しみを利用する政治家にとって彼は敵だった。
    それでも訴え続けた人生のまっすぐな言葉がこの本に詰まっている。

    「イスラエルだってパレスチナ人を永遠に邪険に扱い、その存在を永遠に否定し続けることは不可能だ。パレスチナ人を完全に抹殺することはありえないんだから」
    世界中が見ているなかで正にそのありえないことが起きている。
    彼のような人間味の溢れた知識人の声はもう届かないのだろうか。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Power, Politics and Culture, Interviews with Edward W. Said" (2001) Review | Coexist
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  • 『(シャタード・ランド)』 サム・ダルリンプル, 2025年 感想 | 5つのアジア分離独立

    『(シャタード・ランド)』 サム・ダルリンプル, 2025年 感想 | 5つのアジア分離独立

    🔽 基本情報 🔽
    Shattered Lands
    Five Partitions and the Making of Modern Asia
    Sam Dalrymple, 2025
    シャタード・ランド
    5つの分離独立と現代アジアの誕生 (日本語訳なし)
    サム・ダルリンプル
    528 pages
    2025.09 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    現代アジアを造り上げた分離独立、パーティション。
    その背景は日本人だけでなく、当事者のインド周辺の現地の人にも、英国人にも世界中でも知られていない。
    バングラデシュ、ミャンマー、カシミヤ、そういうニュースで見る地域の問題は、自然発生したものではなく、もちろん現地の人が単純に暴力的だからでもない。
    何事にも理由がある。

    日本での第二次世界大戦の終戦日のぴったり2年後、インド帝国が英国から独立。
    それは有名だけれど、そのインド帝国、つまり現在のイエメンからミャンマーまでの壮大なエリアがその前後にどう分けられていったかはあまり知られていない。
    というか、イエメンからミャンマーまで、その間に現在のカタール、アラブ首長国連邦、ブータン、など無数の藩王国があったのすら知られていない。
    5つの分離、つまりミャンマーの独立、アラビア半島の独立、インド・パキスタン分離独立、印パによる500ほどの藩王国の吸収、バングラデッシュの独立。

    「知られていない」と繰り返し書いているけれど本当にそうなのだから仕方がない。
    英国はインド帝国の利益によって支えられていたけれど、大英帝国の人口は当時の世界の人口の25%!
    戦争により経済が崩れ世界の4分の1の人口を支えきれなくなった英国はできるだけ早く撤退することをモットーに、アジアなんて行ったこともないロンドンの役人が駆り出されどんどん地図上に線を引いていき、しかもインド帝国に借りていたお金もほぼ無視で、しかも「せっかくなら日本を敗戦させた8月15日に独立させよう」と言い出し、十分な準備もなく独立。大英帝国といえば、どこにいっても嘘をつき続け、右に左に騙し続け、最後は自分の手は汚さずさっさと逃げ出す、いつも同じパターン。
    私もそこは知っていた。エリザベス女王の旦那フィリップ殿下の叔父、インド総監マウントバッテンの当時の適当さも知っていた。そこまでは有名。
    それ以外のすべてが「知られていない」、知らなかった。

    Shattered Lands、粉々になった土地、というタイトルの通り。
    戦時中にまずミャンマーが分離。(しかも当時ミャンマーの現ヤンゴンが世界で人の出入りが激しい港、つまりニューヨークなんか追い越した大都会だったと。なんと。)
    当時人口の16%いたインド系の人間はミャンマー人じゃない、と追い出される。
    この本は5つの独立分離について非常に詳しく描かれているけれど、5つとも現地の人々の反応、待遇、対応、残酷さはすべて似ている。
    民族や宗教の枠を超えてコスモポリタンな社会に生きていた人々。
    今まで近所付き合いのあった人びとが突然、民族が違うから、宗教が違うから、という理由で追い出し合い、憎み合い、殺し合う。
    その度に何百万という人間が新しく引かれた国境を超え、もちろん多くは難民となり、少なくない数の人が虐待、強姦、そして殺された。
    粉々になった土地、ばらばらに引き裂かれた人々。
    カシミア紛争を含むインド・パキスタン情勢、ロヒンギャ難民問題などその多くは解決していない。
    他のところで聞いたことだけど(彼のお父さんのポッドキャストで)、この時代を生きた人は、それこそ戦争に駆り出された日本のおじいちゃんたちもそうかも知れないけれど、多くを語りたがらない。
    彼らはその恐怖と過ちと恥を墓まで持っていくつもりで口は開かない。
    その子どももなんとなく聞きづらくて追求しない。
    でも今、孫の代になって初めて真相が明らかになっているという現象が起きているらしい。

    細かく言うと色々とあるんだけど、それはいつかきっとこの本が日本語に訳され日本でも多くの人の手にわたることを願い省くとして(ミャンマーには日本もかなり関わってきます)、全体として印象深かったのは、分離独立前は各々の地域によって生活習慣も違っていたのに、セキュラ―な社会、非宗教的な社会だったということ。
    完全に平和かといえばそうじゃなかったにしてもギリギリのバランスは保たれていた。
    それが突如、超宗教的で、国民主義的、ナショナリズムに走ったはっきりいって差別的で軍事的で暴力的な社会を次々と生み出してしまった。
    英国の下で植民地化された社会が良いとは言えないけれど、じゃあ紛争のないアジアを目指したとき、人々はセキュラ―であることを目指し宗教や伝統を蔑ろにしたほうがいいのか。
    共同体が与えてくれる安心感は過去の産物になるのか。
    伝統は狂暴なのか。

    この本には毎ページに驚きが隠されている。
    素晴らしい歴史本は大概まるで物語を読んでいるように感じるけれど、この本もそう。
    28歳の著者サム・ダルリンプル氏はヒューマニズムに溢れ人間的で、情熱を持った人物だと言うのが手に取るようにわかる。
    これだけ残酷な歴史を語る本の中にも、それでも宗教の違う友人が命をかけて助け合った話をきちんと残してくれるし、彼自身も独立分離によって故郷に帰れない人の代わりに国境を超えて代理で会いに行くという活動もしている。

    もちろん父親がウィリアム・ダルリンプルということはプラスに働いているけれど、彼は20代にして初出版にして、もう自分の足で立っている歴史家の一人。
    インドでもダルリンプル親子がベストセラーのチャートにずっと上ってたし、インド史周辺はなかなか面白いことになりそう。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Shattered Lands" Sam Dalrymple(2025) Review | Making of new Asia
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  • 『略奪の帝国』ウィリアム・ダルリンプル, 2019年 感想 | 暴力で制した東インド会社

    『略奪の帝国』ウィリアム・ダルリンプル, 2019年 感想 | 暴力で制した東インド会社

    🔽 基本情報 🔽
    The Anarchy
    The relentless rise of East India Company
    William Dalrymple 2019
    略奪の帝国 東インド会社の興亡
    ウィリアム・ダルリンプル
    576 pages
    2024.08 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    最高な一冊。歴史本で私の中では最高峰。
    まさにずっと気になっていたトピック、どうやって小さな島国イングランドが巨大で裕福な亜大陸を植民地化することができたか。
    
    簡単に言えばつまりはムガール帝国がライオンで、東インド会社はハイエナというところ。
    裕福な帝国ムガール帝国が少し崩れてきたところに、無作法でアグレッシブで便乗主義者で嘘つきで自分勝手で成金趣味の数人の商人が行った、自分の利益のためだけの略奪。自国英国の政府にも王室にも逆らって。
    つまり、現地インドの帝国も自国の王室をも無視した無政府主義(Anarchy)の一企業による略奪の歴史。
    
    東インド会社は商人としてではなく、ひたすら暴力と嘘で財力を得て、結局はイギリスの経済はこのチンピラ集団が治めるインドなしでは維持できなくなり、英国王室も危機を感じ会社を国営化、そして英国は引き継ぐ形でインドを植民地化する、というのが歴史の流れ。
    
    事実は小説よりも奇なり、歴史はフィクションよりも面白いとはこのことで、しかもダルリンプル氏の手にかかればドキドキハラハラの壮大な物語のようにあっという間に読んでしまう。
    
    彼の情熱的でヒューマニズムに溢れた文章は、この本をただの歴史本ではなく力強い文化財に変えてしまったと言える。
    
    この本はインド国内の、今まで誰も見ていなかった資料を引っ張り出して整理することできちんと整理された実際に起きたことを細かく伝えてくれる。
    そして事実は厳しい。
    特に大英帝国は華やかで誇らしいものだと学校で教えられてきたイギリス人にとって、史実は目を向けたくなるもので、実際にダルリンプル氏はイギリスの右派からイギリスを貶すなと批判されまくり。
    
    特に気になった人物はウォーレン・ヘースティングズという、ベンガル知事、初代インド総監。
    通常東インド会社の社員はインド文化には興味がないなか、彼は唯一インドの言語、芸術、文学を愛した珍しい存在。
    ただ、いつの時代もそういう繊細でまともな人は貪欲な組織の中で叩かれる。
    
    で、ダルリンプル氏のファンになり、ポッドキャストも全部聞いてます。
    スコットランドの貴族の家系に生まれ、先祖がよく歴史上の出来事に出てくると苦笑し、裕福な子供時代を過ごすも中東の歴史や文化に惹かれ、現在はデリーでヤギと農場で暮らしている彼。
    最近は特に、イギリスの学校はイスラエル、パレスチナ、中東全般の間違った歴史を教えていると声を上げている。
    (ちなみに彼の息子のサム・ダルリンプル君の本を現在読んでるけど、息子もきっとお父さんと同じ道を進んでくれるだろう)
    
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The Anarchy" William Dalrymple(2019) Review | A gang of thugs

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    略奪の帝国 下: 東インド会社の興亡


    The Anarchy: The Relentless Rise of the East India Company (English Edition)



  • 『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ 2011年 感想 | 人間の強さと恐ろしさ

    『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ 2011年 感想 | 人間の強さと恐ろしさ

    🔽 基本情報 🔽
    Sapiens
    Yuval Noah Harari  2011
    サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福
    ユヴァル・ノア・ハラリ
    580 pages
    2024.08 読了
    アマゾンで見る
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    出版以来ずっと騒がれている一冊。
    言われていたように、興味深く、挑発的で、こわい。
    私達はこの惑星上一番強い存在であり、もっと強くあろうと前進する。
    他の生物やこの環境を踏みにじってでも。そう、仲間であるはずの他の人間を踏みにじってでも。

    ちょっと止まって考えると、自分たちの世界を自分たちのよくのために壊すというのは狂気の沙汰でしかない。

    著者の言う通り、地球は大きなショッピングセンターで、私達は常に次々と消費し、もっともっと求めるわけだけど、私達は結局何が欲しいのか。どういう幸せがほしいのか。
    今後人間が進化するとして、その未来で私達は何を求めるのか。

    そしてもう一つこわいのは著者は人間の長い歴史の欲望に批判的ではないところ。淡々と歴史として否定の色を見せずに書き示すというのは肯定しているふうにも見える。
    なので興味深い本であっても好きではないので★4

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Sapiens" Yuval Noah Harari (2011) Review | We demand to be stronger
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    SAPIENS:A BRIEF HISTORY OF HUMANKIND(B) [ YUVAL NOAH HARARI ]



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    Sapiens: A Brief History of Humankind (English Edition)



  • 『(ロンドンイズリントン区の犯罪史)』 Islington Archeology & History Society, 1989年 感想 | 犯罪、警備、刑務所の記録

    『(ロンドンイズリントン区の犯罪史)』 Islington Archeology & History Society, 1989年 感想 | 犯罪、警備、刑務所の記録

    🔽 基本情報 🔽
    Criminal Islington 
    The Story of Crime and Punishment in a Victorian Suburb
    Islington Archeology & History Society, 1989
    90 pages
    2024.07 読了
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    ロンドン北東部と言いつつほぼ中心にあるイズリントン区のヴィクトリア朝における犯罪、警備、刑務所の歴史エッセイ集。

    ロンドンの中心地は現在の金融街シティで、そのすぐ北にあるイズリントン区は今も昔も悪名高きエリア。まさにオリバー・ツイストの世界を今でも垣間見ることができる。
    興味深かったのは、当時シティ以外には警察や警備の組織が存在しなかったという点、そしてその当時から、窃盗などの軽犯罪は貧困からくるものなので住宅問題に取り組んだという点。
    もちろん、イズリントン区内だけでも5つもあったという刑務所システムも街の掃除に貢献した。

    当時は大英帝国の最盛期、英国は世界の四分の一を牛耳っていたのに、蓋を開けてみると首都ロンドンの市民の大半は貧困に苦しんでいたという皮肉な現実。

    ロンドンに住んでいた10年以上ほとんどをこのイズリントン区で過ごしたので、この狭いエリアの歴史は、誇れるものではないけれど奥深い。


    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Criminal Islington" Islington Archeology & History Society, (1989) Review | Crimes, policing and prisons
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    なし



  • 『Afterlives』 アブドゥルラザク・グルナ, 2020年 感想 | 暴力な世界の中の美しい物語

    『Afterlives』 アブドゥルラザク・グルナ, 2020年 感想 | 暴力な世界の中の美しい物語

    🔽 基本情報 🔽
    Afterlives
    Abdulrazak Gurnah, 2020
    アブドゥルラザク・グルナ
    288 pages
    2024年7月 読了
    アマゾンで見る

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    戦争や植民地化という残酷で暴力的な環境の中で語られる美しい物語。

    人々の生活や愛情は、戦争という外部の環境によってボロボロに破壊されるということを忘れてはいけない。
    アフリカの人々の人生は、ヨーロッパ人が勝手に始めた戦争、つまりアフリカに住む人々とは全く関係のない殺し合いビジネスによって左右される。
    それでも彼らは確実に自分たちのものである小さな幸せや悲しみをしっかりと握りしめる。
    そんな狂暴な環境でも、植民地主義上の植民者と先住民でありながらも少しマジカルなでも一人間同士の関係も描かれていて少し希望を持つこともできる。

    2021年ノーベル賞受賞


    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Afterlives" Abdulrazak Gurnah (2020) Review | A beautiful story told in a cruel and violent environment
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    Afterlives: By the winner of the Nobel Prize in Literature 2021



  • 『ワイルド•ソウル』 垣根涼介, 2006 感想 | 大迫力の復讐劇

    『ワイルド•ソウル』 垣根涼介, 2006 感想 | 大迫力の復讐劇

    🔽 基本情報 🔽
    ワイルド•ソウル
    垣根涼介 2006
    Ryosuke Kakine
    1040 pages (512 + 528)
    2024年6月 読了
    アマゾンで見る

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    上下二巻の壮大なストーリー。
    戦後の日本からブラジルへ渡った4万人のアマゾンでの壮絶な生活、そこから逃げ出した人々の底辺を這うような生活。

    そして下巻へ。
    現在の日本、東京。三人の日系人の男たちの日本政府に対する復讐劇が始まる。

    読んでいる方としてはアマゾンでの大変な生活を知っているから、もちろん完全に三人の男の肩を持つ。彼らの計画は次へ次へと進んでいく。

    この本での何度も出てくる通り、大きな自然を前にして人ひとりなんてちっぽけで、そのちっぽけななかで、一生かけて後悔をしたり、人を愛したりする。
    そういうところも滲み出ていて、全体像でとても面白い。
    アクションもドラマもたっぷりで一気に読める傑作。


    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Wild Soul" Ryosuke Kakine, (2006) Review | Let the revenge begin from Brazil
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  • 『ヌメロ・ゼロ』ウンベルト・エーコ, 2015年 感想 | エーコの遺作、イタリア社会への警告

    『ヌメロ・ゼロ』ウンベルト・エーコ, 2015年 感想 | エーコの遺作、イタリア社会への警告

    🔽 基本情報 🔽
    Numero Zero
    Umberto Eco, 2015
    ヌメロ・ゼロ
    ウンベルト・エーコ
    208 pages
    2024年6月 読了
    アマゾンで見る
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    エーコの7冊目にして最後の小説は、陰謀論やフェイクニュースにまみれたジャーナリズム、私たちの時代におけるジャーナリズム。
    彼の他の小説のように難しくてクラシックに挑発的ではない、けれど短くて比較的読みやすい。
    何も「本当」なものはなく、「事実」は作り上げられる、私達の生きるこの今の社会においての信念や真実の意味を問いただす。
    イタリアの知の巨人と呼ばれるエーコ、彼の頭脳のクオリティはもちろんだけど、包容力のある彼の人間的な部分が好きなんですが、これは政治的にも二極端なイタリア社会への警告にもとれる。

    ただ、ムッソリーニの時代のことを振り返るので、そのあたりの知識がないとちょっと置いてけぼりを食らう。

    🔽 関連ページ 🔽

    English review
    "Numero Zero" Umberto Eco, (2015) Review | A warning to the Italian society today.
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    Numero Zero (English Edition)



  • 『君主論』ニッコロ・マキャベリ, 1532年 感想 | 残酷であれ、卑怯であれ

    『君主論』ニッコロ・マキャベリ, 1532年 感想 | 残酷であれ、卑怯であれ

    🔽 基本情報 🔽
    The Prince
    Niccolò Machiavelli, 1532
    Il principe
    君主論
    ニッコロ・マキャベリ
    128 pages
    2024年6月 読了
    アマゾンで見る
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    ただの古典でなく何世紀も幅広く影響力があった古典、君主論。
    1500年のヨーロッパにおいての、正しい君主になるにはというガイドブックで、マキャベリズムというと残酷なイメージがあるけど、紛争の耐えない時代において仕方ない部分はあるが、これが未だに民主主義国家の政治家に愛読されているというのは怖い。

    自分の家族や領土を守るという目的達成のためには残酷だっていい、それが良い君主。
    メッセージは明瞭で当時のヨーロッパだけでなくローマ帝国時代にも細かくくれながら、具体的なアドバイスをする。
    当時から500年も言われているけど確かに、典型的なルネッサンスの産物。

    私のようにローマ時代から16世紀の歴史に詳しくない場合は注意書きが多い本を選ぶのがおすすめです。いろんな歴史上の人物が出てくるのでややこしい。
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    English review
    “The Prince” Niccolò Machiavelli (1532) Review | Focus, be cruel, rule

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  • 『お金の流れで読む日本と世界の未来』 ジム・ロジャーズ, 2017年 感想 | 歴史を理解し次を見据える

    『お金の流れで読む日本と世界の未来』 ジム・ロジャーズ, 2017年 感想 | 歴史を理解し次を見据える

    ★★★★☆ 歴史を理解し次を見据えるのが投資の原点。保守的な過保護な日本は近いうちに国として成り立たなくなるという点近いうちに北朝鮮と韓国がお互いを補って国として成功し世界一幸せな国になるという面白い予見
    
    
    
    
    
    🔽 基本情報 🔽
    お金の流れで読む日本と世界の未来
    ジム・ロジャーズ, 2017
    Jim Rogers
    237 pages
    2024年6月 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    バックグラウンドは歴史という投資家の日本独占インタビューといった形。
    歴史に詳しいということで、歴史は繰り返すということを説く。

    確かに、歴史を理解し、次を見据えるというのが投資の原点だと思う。
    まったく投資が分からないので私はその辺のつまりメインの部分は理解できないけど、その周辺の話が面白い。

    特に、近いうちに必ず統一する北朝鮮と韓国がお互いを補って国として成功し世界一幸せな国になるという点。
    北朝鮮の資源とポテンシャル、技術は高くとも少子化で悩む韓国。すごく納得。

    日本は大好きだけど、外に目を向けない保守的な過保護な日本は近いうちに国として成り立たなくなるという点。
    ただ、彼でも予想できなかったことが起きた。
    出版直後にコロナで世界が止まったことだ。
    それでも今まだ彼の言っていた事は間違ってはいない。
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    お金の流れで読む 日本と世界の未来 世界的投資家は予見する (PHP新書)



  • 『ロビンソン・クルーソー』ダニエル・デフォー, 1719年 感想 | 主人公がとってもイギリス人

    『ロビンソン・クルーソー』ダニエル・デフォー, 1719年 感想 | 主人公がとってもイギリス人

    🔽 基本情報 🔽
    Robinson Crusoe
    The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe
    Daniel Defoe, 1719
    ロビンソン・クルーソー
    ロビンソン・クルーソーの生涯と奇しくも驚くべき冒険
    ダニエル・デフォー
    384 pages
    2024年6月 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    古典を読んでいた時期に、旅行記の古典といえば。
    この主人公がとってもイギリス人なのが面白い。
    整理整頓を心がけ、この野蛮な地を絶対に(イギリス的な)我が家にしてやる、と奮闘し誇りに思っている。

    あたかも本当の自伝と思わせるように、口語的な英語でしかも語り口は一人称で「本人自筆」とまで書いてある。
    もちろんフィクションだけど当時はこの手法でかなり売れたよう。

    この時代の小説なので植民地主義的、人種差別的な内容は避けられないけれど、良いキリスト教徒としてクルーソーはそれなりに現地人フライデーと打ち解けているのも忘れてはいけない。
    今振り返って良い悪いはあるにしても、300年前に書かれた素晴らしいストーリーであることは否定できない。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Robinson Crusoe" Daniel Defoe (1719) Review | Classic of classics
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  • 『シルクロード全史』ピーター・フランコパン, 2015年 感想 | 世界史に興味を持つことになった原因の一冊

    『シルクロード全史』ピーター・フランコパン, 2015年 感想 | 世界史に興味を持つことになった原因の一冊

    🔽 基本情報 🔽
    The Silk Roads: A New History of the World
    Peter Frankopan, 2015
    シルクロード全史: 文明と欲望の十字路
    ピーター・フランコパン
    657 pages
    2024年6月 読了
    アマゾンで見る
    
    
    
    
    

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    エピック。大作。間違いなく歴史本の歴史を変えた。
    シルクローズ(複数形のRoads)というタイトルでまず分かるように、シルクロードは一つではないという大前提を投げつけてくる分厚い600ページ超えのいわゆるマイナーな国々の歴史の本なのに退屈じゃない。
    むしろ内容そのものと語り口にエンターテインメント性が出ていて巨大な小説を読んでいるかのよう。

    著者フランコパンのポッドキャストも聞くけど、彼は偏屈者っぽい奴なんだけど言い分は筋が通っていて、事実に極端に忠実なだけな人。
    でも大真面目で逆に面白いというギャップもあって、耳で聞くのも楽しい。

    中東と呼ばれるエリアがいかに歴史豊かで多様性に富んだ素晴らしい伝統をもっているか、そしてヨーロッパはいかに欲深く宗教を言い訳にこの豊かな地を破壊したか。
    そして今日、古いヨーロッパに変わってアメリカ帝国が彼らの謳う自分勝手な民主主義を武器に更に追い打ちをかけているか。
    中東、アラブがあたかも石油の成金かのように世界の目を欺きたい欧米は、もちろんこのシルクロードの歴史は隠し通したい。
    ひょっとしたら、ただ単にヨーロッパ、アメリカの帝国主義の終わりなだけなのかもしれない。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The Silk Roads" Peter Frankopan (2015) Review | History book that changed my history

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    シルクロード全史 上: 文明と欲望の十字路





    シルクロード全史 下: 文明と欲望の十字路



    The Silk Roads: A New History of the World (English Edition)



  • 『”Chasing a blazing fire in the Himalayas”』 Anmol Mukhia, 2020年 感想 | カリンポンの歴史とキリスト教

    『”Chasing a blazing fire in the Himalayas”』 Anmol Mukhia, 2020年 感想 | カリンポンの歴史とキリスト教

    🔽 基本情報 🔽
    Chasing a blazing fire in the Himalayas
    A brief sketch of the (un)noticed Kalimpong Pentecostal revival
    Anmol Mukhia, 2020
    146 pages
    2024年5月 読了
    
    
    
    
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    雰囲気で買ってしまったけど、前半は良かった。
    カリンポンはインド北東部の西ベンガル州の北部、ダージリン近くの街。
    ここは英国人が紅茶栽培で住み着いて以来キリスト教布教が盛んで、当時はインド全土にいた英国人が子どもをカリンポンやダージリンのキリスト教系の学校に送っていた。
    なのでそこまでは知っていたけれど、この本は特にペンテコステ派とカリンポンの繋がりについて詳しく書いてある。
    そう、前半は。
    最後の方になると、トーンが変わって良いキリスト教徒になるには、という結論で終わる。
    タイトルともカリンポンの街とも関係ない説教で終わるので、かなり飛ばしながら読んだけど、最初が面白かっただけに残念。

    🔽 買えるところ 🔽
    English review
    "Chasing a blazing fire in the Himalayas" Anmol Mukhia, 2020 Review | History of Kalimpong's Christianity
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    Chasing A Blazing Fire In The Himalayas (English Edition)



  • 『(人類学者のように考える)』 マシュー・エンゲルケ, 2017年 感想 | 共有できる価値観を見つめる

    『(人類学者のように考える)』 マシュー・エンゲルケ, 2017年 感想 | 共有できる価値観を見つめる

    🔽 基本情報 🔽
    (人類学者のように考える)
    Think Like an Anthropologist
    Matthew Engelke 2017
    マシュー・エンゲルケ
    368 pages
    2024年5月 読了
    
    
    
    
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    昔からアンソロポロジー人類学に興味があったけど、まさにこのこと。
    人類学とは、その土地の現地の人の視点から世界を見る学問。
    我々はみんな違う。
    ヨーロッパの都市に住む人とポリネシアの小さな島に住む人は、違う。
    でもそれは生物学的に違うとか、能力の点から違うとかそういうことじゃない。
    そして決して「未開発」であったりとか「野蛮」ではない。
    むしろ植民地主義の奴らのほうが野蛮で人として未開発。

    抑えきれない好奇心から始まり、居ても立ってもいられずに現地へ向かい、そこの現地人、地元の人と共に過ごし、彼らのように考え彼らのように物事を正当化する。Critical Thinking批判的思考は忘れずに。

    私の興味が心理学から人類学に広がったのは人類学は人間が共有できる価値観を見つめる学問だから。
    その価値観は古臭いかもしれない、でもそれなしでは生活できない共同体としての価値。わたしたちはそんなに新しいタイプの人類ではないはず。

    ペリカンのこのシリーズもっと集めたい。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Think Like an Anthropologist" Matthew Engelke (2017) Review | We are all different yet not that different

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    Think Like an Anthropologist (Pelican Books) (English Edition)




  • 『アヘン王国潜入記』 高野秀行, 1998年 感想 | 私たちと変わらない気持ちで生活する人

    『アヘン王国潜入記』 高野秀行, 1998年 感想 | 私たちと変わらない気持ちで生活する人

    ★★★★★ 普通、ミャンマーの山中にある世界最大のアヘン生産地に半年も行かないよ。政治的に意図的に隔離されていてでも変わり者が何日もかけて歩いていくと、そこには私たちと変わらない気持ちで、泣いて笑って生活する人たちがいる。
    🔽基本情報🔽
    アヘン王国潜入記
    高野秀行 1998
    Hideyuki Takano
    392 pages
    2024年5月 読了
    アマゾンで見る
    🔽 こんな人、こんなときにおすすめ 🔽
    アジアの辺境ルポ系が好きな人。ウルルン滞在記っぽいけど、かなりリアル。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    この本が面白いのは、テーマや内容も去ることながら、著者本人の人格が大きな魅力。

    普通、ミャンマーの山中にある世界最大のアヘン生産地に半年も行かないよ。
    しかも特にジャーナリスティックな野望をもってではなく、ただ一緒にケシ栽培したいからという理由で。
    この村に生まれて、アヘンの農業に一生を費やし、たまに吸って、いつかは死んでいく、他の何も知らずに。生きる意味とかそういう綺麗事じゃない。
    だからこの本には歴史や政治の話は少ない。
    歴史や政治や国家は隔離された小さな村に住む人々の暮らしの軸ではないから。
    でも、村の回りには巨大な力が渦巻いていて、典型的な貧富の差や搾取がある。
    つまり軸ではないけれど、人々は間違いなく左右されている。

    世界は隅から隅まで知られてる訳ではない。
    人が住んでいて、こんな重要な土地であるはずの場所ですら知られていない。
    政治的に意図的に隔離されているこういうところがあって、でも変わり者が何日もかけて歩いていくと、そこには私たちと変わらない気持ちで、泣いて笑って生活する人たちがいる。

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    アヘン王国潜入記 (集英社文庫)
    アヘン王国潜入記 (集英社文庫)
    
    
    
    



  • 『(Gramsci’s Political Thoughts)』 Carlos Nelson Coutinho, 2012年 感想 | グラムシの思想と半生

    『(Gramsci’s Political Thoughts)』 Carlos Nelson Coutinho, 2012年 感想 | グラムシの思想と半生

    🔽 基本情報 🔽
    Gramsci's Political Thoughts
    Carlos Nelson Coutinho, 2012
    198 pages
    2024年4月 読了
    🔽 こんな人、こんなときにおすすめ 🔽
    グラムシの思想をある程度知っている人で、次のステップとして

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    まずはアントニオ•グラムシについて、彼の人生のアウトラインだけでも驚愕。

    イタリア、サルデーニャ州の田舎に生まれ、生後すぐに身体に障害を負う。父を亡くし貧しいながらも苦学し奨学金でトリノ大学に入学。当時から政治の世界に入り、産業都市トリノで労働運動に参加。
    その後はイタリア共産党の結成に関わりロシア滞在中に当時のムッソリーニ政権から逮捕状を出され帰国不能に、その後議員に選出され無事に帰国するが再度逮捕状を出され、そのまま半生を牢獄で過ごす。獄中、多くの手紙や手記を残す。最後は障害を持ち病弱であるにも関わらず治療を拒否され虐待受け、獄中で死ぬと困るからと投げ出されるかたちで釈放された直後に死亡。
    その逮捕の理由も有名で「この男の頭脳を20年間ストップさせなければならない」というファシズム政権の目論見から。

    残念なことに私がグラムシについてもマルクス主義にもそんなに詳しくないので、ついていけない所も多かったけど、この本は彼の生涯においての思想の成熟の過程を追う感じで進んでいく。

    46歳で亡くなる彼の徹底したマルクス主義、反ファシズムは世界中に強い影響を与える。この本の著者もブラジルのマルクス主義者。日本でも彼の思想は戦後からずっと根強い人気。

    次はヘゲモニー論についてちゃんと読みたい。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Gramsci's Political Thoughts" Carlos Nelson Coutinho, (2012) Review | Fascist government couldn't stop him
    🔽 買えるところ 🔽

    買えるところはなさそうです。



    ★★★★☆ “We must prevent this brain from working for twenty years” but even after arrested by Fascist government, he didn’t stop writing. A book about his life, from poverty in Sardinia, student life in Turin, exile in Russia, prison and death.

    🔽 log 🔽
    Gramsci’s Political Thoughts
    Carlos Nelson Coutinho, 2012
    198 pages
    Read 2024.4


  • 『茶の話 茶事遍路』 陳 舜臣, 1988年 感想 | 中国の歴史の偉大さ

    『茶の話 茶事遍路』 陳 舜臣, 1988年 感想 | 中国の歴史の偉大さ

    ★★★★☆ 普通は茶の歴史はヨーロッパが関係してくる前のことは簡潔にしか語られないなか、これは中国の西暦500年辺りまで遡る。中国の歴史の偉大さを見せつけられる。
    🔽 ログ 🔽
    茶の話 茶事遍路
    陳 舜臣 1988
    Chin Shun Shin
    2024年4月 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    茶の歴史の本、でもフォーカスは中国の古い歴史。
    初めて行った憧れの神保町で偶然見つけた本。やっぱりこういうのは大手にはない。
    
    私は残念ながら中国の歴史に疎いので詳しい話になるとついていけない。ただ、壮大なロマンが広がっているということはてにとって分かる。
    
    普通は茶の歴史といっても大体がヨーロッパが関係してくる前のことは簡潔にしか語られないなか、これは中国の西暦500年辺りまで遡る。
    
    何代もの皇帝が愛した茶、上質なものがあると聞くと自分の為に作らせ、運ばせる。もちろん無償で。
    その傍らで儒教や仏教と深い関わりのある茶、その仏教を通じ日本にやってきた茶、その詩的なシンプルさとのギャップは中国だけでなく世界中に広がる。
    
    そして不幸にも中国にとって最大の嗜好品であり、輸出品である。
    東インド会社がやってくる以前から、茶を売り、馬を買っていた中国は、結局茶に関するアヘン戦争によってその権威を奪い取られる。
    
    とにかくドラマチック。中国の歴史の偉大さを見せつけられる。
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  • 『インド文化入門』 辛島昇, 2020年 感想 | 数あるインドはそれぞれが存在する

    『インド文化入門』 辛島昇, 2020年 感想 | 数あるインドはそれぞれが存在する

    ★★★★☆ インドのことをある程度は知ってから読む本。
    古代からその時代その土地で必要とされるラーマ物語ができるように、数あるインドはそれぞれが存在しつつ、なおかつひとつのインドというのも存在する。素敵な矛盾。
    🔽 ログ 🔽
    インド文化入門
    辛島昇 2020
    Noboru Terashima
    288 pages
    2024年4月 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    2000年に放送大学の映像のお供のテキストとして書かれたものの文庫化。
    入門と言いつつ実は超入門書ではないし、テーマごとなのでインドのことをある程度は知っておかないと話についていけない。

    歴史、逸話、言語、宗教、映画、タゴール、カースト制、女性の二極化、ガンジー。
    厳しさに包まれたその歴史、そこから生まれた古く豊かで複雑に入り込んだ文化、保守的な社会。

    でも彼の伝えたいことは、最初の章にしっかりと書いてある。
    それは、インドが誇るラーマ物語の存在に象徴される。
    時代や土地が変わるにつれラーマ物語も少しずつ姿を変え、その土地で必要とされるラーマ物語ができる。
    同じようにそれぞれが存在しつつ、なおかつひとつのインドがある。

    いや、かつてはあった。
    20年たったいま、インドはどこへ向かうのか。
    
    
    
    
    
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  • 『美は傷』 エカ•クルニアワン, 2002年 感想 | その地に宿る魂の苦しみ

    『美は傷』 エカ•クルニアワン, 2002年 感想 | その地に宿る魂の苦しみ

    
    
    
    
    
    🔽 ログ 🔽
    Beauty is a wound
    Cantik Itu Luka
    By Eka Kurniawan, 2002
    美は傷
    エカ•クルニアワン
    原語=インドネシア語
    読了=英語訳
    480 pages
    2024年4月 読了
    アマゾンで見る

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    インドネシアの町に死んだはずの売春婦の女性が戻ってきた。

    強く美しい女たちの物語は、いつも男たちによって泥沼にされる。
    その地に宿る魂の苦しみ、植民地としての過去、蔑ろにされる女性の尊厳、生きていくための手段。暴力と愛と呪い。なるほど、マジカルリアリズム。

    女性は自分の美しい娘の成長した姿を確認するまでは死ぬに死にきれず、唯一の醜い娘の幸福を確信する。だって外見の美しさは歴史、人種、宗教や政治、権力を越え、その子の人生の傷でしかないから。

    自分は何とか生き抜いた、でもそれぞれの子にそれぞれの苦しみと呪いがある、まるでマルケスの百年の孤独のような何代にも渡る一族のストーリーを、痛々しくリアルに描く。

    この物語はインドネシアだからこそ生まれてきた物語であり、世界中の人の心を揺さぶった。
    一度ページをめくったらやめられない、強く生きる女たちの壮大な物語。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Beauty is a wound" Eka Kurniawan (2002) Review | Mix of history, religions, power, and abuse


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    Beauty is a Wound (English Edition) Kindle版




  • 『(茶:世界を変えた飲み物) 』ジョン・グリフィス, 2007年 感想 | 生真面目さのお陰で詳しい本

    『(茶:世界を変えた飲み物) 』ジョン・グリフィス, 2007年 感想 | 生真面目さのお陰で詳しい本

    🔽 ログ 🔽
    Tea, the drink that changed the world
    (Tea: A History of the Drink That Changed the World)
    By John Griffiths, 2007
    373 pages
    2024年2月 読了
    
    
    
    
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    お茶の本というのはとりあえず買う、というのが私の方針です。これはダージリンの街の中心の本屋で買った思い出の本。
    どの紅茶が美味しいとか分類とかそういうことじゃなく(日本はそういう本が多い)、お茶のその興味深く残酷な歴史の本もたくさんある。でもこれは少し違う。

    「世界を変えた飲み物」まさに。欧州人は東アジアのお茶に憧れ、南アジアを人工的に産地にし、中国を滅ぼし今はアフリカでもっと安く作っている、お茶。

    お茶、紅茶について、その全てが書かれている本。
    著者はお茶の農園をやっていた英国人の息子で政治家ということもあり、内部事情にかなり詳しいし何よりも政治的な面やきちんと数字に表すという面が特徴的。
    どの時代にお茶が何トン売れたか、値段の変動は、とか。

    お茶の文化や大変な歴史、そして当時の英国の政情、ここではそういったのも含め観点、テーマごとにまとめられている。
    本の中でその分類の仕方が分かりにくいところもあったけど、それだけ広い視点から書かれているということ。

    ワイン学なんかでも英国人が強いのと同じでここでもその生真面目な英国人さが出ている。でもワインよりももっと英国人の心とプライドの近くにいるもの、それがお茶。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Tea, the drink that changed the world" John Griffiths (2007) Review | Tea, very close to the hearts and pride of British
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    Tea: The Drink That Changed the World




  • 『(古代世界のバイセクシュアリティ』エヴァ・カンタレラ , 1988年 感想 | そしてマッチョ社会に疲れる

    『(古代世界のバイセクシュアリティ』エヴァ・カンタレラ , 1988年 感想 | そしてマッチョ社会に疲れる

    🔽 ログ 🔽
    Bisexuality in the Ancient World
    Eva Cantarella, 1988
    Secondo natura
    (古代世界のバイセクシュアリティ)
    エヴァ・カンタレラ
    286 pages
    2025年6月読了
    アマゾンで見る


    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    こんなにアカデミックな内容とは知らず、ミラノ大学のローマ法、ギリシャ法の教授の本。
    日本では出ていないのでここでは内容もかなり触れます。

    ここでいうバイセクシャリティの定義は今の一般的な定義とは違う。
    古代ローマ、古代ギリシャでは男性は社会義務として女性と結婚をし、ギリシャでは教育として、ローマでは強さの象徴として青年と関係を持つ。
    男性と女性を同じように愛するというものではない。

    この本は古代ローマ、ギリシャの事について知識がある想定でバイセクシャル文化が語られるので、全然予習が足りなかった。
    ギリシャでは行為を通じて年上の男性が青年を教育する。ローマでは男性ローマ市民の強さを示すために青年、女性、奴隷を性的にも支配下に置く。

    いずれの場合も極端に女性蔑視で超マッチョイズム(machismo)。そして当時(男性によって作られ広げられた)キリスト教がやってくる。
    女性蔑視の強い宗教ではあるけれど観点が代わり「男性優位の社会を守るために、子供をたくさん産む女性と結婚して繁殖だけに重点を置きましょう」となった。
    そして現在に続く。

    でも著者が言うには、キリスト教が人々の考えを変えたのではなく、実はみんなマッチョに構えるのに疲れていたときに都合がいい思想が広がったから、キリスト教を利用しただけ、と。

    時代は変わり考え方も変わる。
    でも何千年たっても、なんとか男性優位の社会を維持しようという基本はあまり変わらないようです。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Bisexuality in the Ancient World" Eva Cantarella (1988) Review | Then suffer from machismo
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    Bisexuality in the Ancient World: Second Edition (Yale Nota Bene)

  • 『イスラム教の論理』飯山陽, 2018年 感想 | 寄り添える点はないのか

    『イスラム教の論理』飯山陽, 2018年 感想 | 寄り添える点はないのか

    ★★★★☆ イスラム思想研究者からの厳しい注意。
    ムスリムの友人がいるだけに辛い問題。人を愛し他人も自分の命も尊重しようとすれば、伝統的に正しい教徒ではなくなる、と。どこかで寄り添える点はないのか
    
    
    
    
    
    🔽 ログ 🔽
    イスラム教の論理
    飯山陽 2018
    Akari Iiyama
    180 Pages
    2025年5月読了
    🔽 こんな人、ときにおすすめ 🔽
    イスラム教をきちんと理解したい人

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    イスラム教の論理 (新潮新書) [ 飯山 陽 ]

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    イスラム思想研究者。
    この本はなんというか、彼女からの厳しい注意に聞こえる。

    確かに、イスラム教をきちんと信仰するということはテロを起こし、異教徒と戦うことであり、「平和を愛する宗教」というのは綺麗事であり、むしろ正しくないイスラム教であるといえる。
    そうなると、自爆テロは正しくて、異教徒と仲良くすることは間違っているというロジックになる。

    イスラム教徒の友人がいるだけに辛い問題である。人を愛し他人を尊重し自分の命も尊重して生きようとすれば、伝統的に正しいイスラム教徒ではなくなる。
    まあでもそういう人たちはextremist 過激派というくくりで、どの宗教にもいるけど。

    他の宗教がアップデートをよしとしているのに緩い解釈は間違っていると断固として譲らない。追い詰められてより保守的になり、より伝統的な思想へと流れていく。
    そして世界征服という現実味のない目的のために一生を捧げ、他の人間はイスラム教に対し恐怖を覚えながら生きる。

    どこかで妥協できる点、寄り添える点はないのか。
    
    
    
    
    
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    イスラム教の論理 (新潮新書) [ 飯山 陽 ]



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  • 『大世界史 現代を生きぬく最強の教科書』池上彰 佐藤優, 2015年 感想 | 自分の糧となる知識

    『大世界史 現代を生きぬく最強の教科書』池上彰 佐藤優, 2015年 感想 | 自分の糧となる知識

    ★★★★☆ しっかりと歴史を学ぶということは自分が体験できないことを擬似体験することで懲り固まりがちな考え方を広げてくれる。個人もしくは民族なり社会においての自分を見つめ、知り、説明できるようになる。手っ取り早いものは、自分の糧となる知識にはならない。
    
    
    
    
    
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    大世界史
    現代を生きぬく最強の教科書
    池上彰 佐藤優 2015
    Akira Ikegami, Masaru Sato
    254 pages
    2025年5月読了
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    大世界史 現代を生きぬく最強の教科書 (文春新書) [ 池上 彰 ]

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    この二人はいくつか本を一緒に出してるらしい。
    この本はどう歴史を学び、どう歴史に学び、自分を育てるかという点に注目する。
    世界にじわじわと広がる反知識主義に対抗し、一般教養の重要性と必要性を説く。

    ずっと思ってることなんですが。
    日本はコスパがいいことがあたかも最強であるかのようにいわれてきて、今回の里帰りでおもむろにメディアでいわれることは減ったように見えるけど、まだそこが大衆メディアの底辺にあるように思う。
    ニュース番組でもバラエティー番組でも一瞬でわかるように文字で一言でテロップを流す。
    それでその人のことやその事件、事柄を分かったつもりになりになる。
    でもやっぱり手っ取り早いものは、自分の糧となる知識にはならない。

    本の内容としては歴史の出来事にも触れるんだけど、実は裏のメッセージはそういうことだと思う。

    しっかりと歴史を学ぶということは自分が体験できないことを擬似体験することになり、懲り固まりがちな考え方を広げてくれる。
    さらに個人もしくは民族なり社会においての自分自身を見つめることになる。知ることになる。説明できるようになる。

    色々と勉強になる、教訓になる本です。
    
    
    
    
    
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    大世界史 現代を生きぬく最強の教科書 (文春新書) [ 池上 彰 ]

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    大世界史 現代を生きぬく最強の教科書 (文春新書 1045)









  • 『ゴールデン・ロード』ウィリアム・ダルリンプル, 2024年 感想 | 途方に暮れるほどの驚きの内容

    『ゴールデン・ロード』ウィリアム・ダルリンプル, 2024年 感想 | 途方に暮れるほどの驚きの内容

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    The Golden Road
    How ancient India transformed the world
    William Dalrymple, 2024
    ゴールデン・ロード
    古代インドはどう世界を変えたか
    ウィリアム・ダルリンプル, 2024
    432 pages
    2025.03 読了
    アマゾンで見る

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    世界で一番好きな歴史家の最新作。

    イタリアでだってアマゾンで通常版買えるけどそうじゃなくてロンドンの本屋さんでサイン付き特別版を予約して友人に取りに行ってもらってやっと我が家まで運んでくれたという超アナログな購入手段で入手。

    彼のツイートもインスタもポッドキャストも全部フォローして内容も事前に全部分かってて、当然何ヵ月も待ったことで期待が高まったけど、見事にそんな期待をも越えた。歴史的な本と言い切れる。

    日本で出るとしたら多分「ゴールデン•ロード、古代インドはどう世界を変えたか」概要は古代インドのソフトパワー、それは幅広くて各々が重要すぎて途方にくれるほど。1ページ1ページが驚きの史実、そしてその史実は今まで世界には知られていなかったというのも更に驚き。

    インド人とっては、「そうだよ中国のシルクロードはつまりインドのが膨大な利益を得た貿易だよ」とか「アラビア数字はインドで2000年前から使ってたよ、ヨーロッパ人はやっとアラブ圏を通じて11世紀くらいにうちらのシステムを使いだしたんだよね」なんて常識。でも常識を世界に広げることが、機会がなかった。あと例えば、昔々、毎年律儀にやってくる季節風を利用し海を渡って東南アジアを宗教や文化を広げたり、はたまたインドの宗教である仏教は確実にアジアに広がり中国も両手を広げて招き入れたり、西側のアラブやペルシャ圏もインドのその豊かな文化と頭脳を崇拝した。その重大さについて世界は十分に把握していない。シルクロードも大事だけど金を運んだインドのゴールデンロードも凄いよ、と。

    そうやって世界の経済を回していたインドは当時のムガール帝国に訪れた混乱の際に悪徳なチンピラ集団の東インド会社に騙されつけこまれ、一気に落ちていくその時に輝かしい歴史も地中深くに埋められてしまった。

    ロックスター•ヒストリアンとも呼ばれるダルリンプルは20代からアラブ圏や南アジアに魅せられデリーに住み着いたスコットランド人歴史家。彼の本は私たちが触れることができなかった南アジアの歴史を掘り出して惜しみなくシェアしてくれる、けど彼がここまで愛される理由は彼のその情熱にある。とにかく探求欲が旺盛で、凄い発見をすると黙っていられない、ポッドキャストでも知らないことがあれば「知らなかったもっと教えて」とまるで子供のように(見えないけどきっと)目をキラキラしている。頭が良くて博学なのにそこで満足しない。ポッドキャストでもよくネタバレしていつも共演者に怒られ、計算が苦手で、実は有名な家系で先祖がよく歴史上に出てきたり、ポッドでたまに泣いてしまう、ちょっとかわいい歴史家。そして徹底的に弱者の側につく。

    彼自身が大好きで仕方がない事を本にして書いているから読む方も心踊らされる。ただの歴史上の事実を並べた本ではない、愛情と情熱と好奇心に溢れたインド激推し歴史家の一種のラブレターともいえる。

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    English review
    "The Golden Road" William Dalrymple (2024) Review | Powerful and exciting

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  • 『鱈: 世界を変えた魚の歴史』マーク・カーランスキー, 1997年 感想 | 鱈が人間の醜い姿を曝け出す

    『鱈: 世界を変えた魚の歴史』マーク・カーランスキー, 1997年 感想 | 鱈が人間の醜い姿を曝け出す

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    Cod: A Biography of the Fish that Changed the World
    Mark Kurlansky, 1997
    鱈: 世界を変えた魚の歴史
    マーク・カーランスキー
    2025年3月読了
    アマゾンで見る
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    なんと日本語訳もあるみたい。「鱈: 世界を変えた魚の歴史」
    ヨーロッパに住んでるけど日本人としてタラという魚はよく分からなかった。フィッシュ・アンド・チップスの魚でヨーロッパの北部の寒い海でとれるらしい、でも昔からイタリアやスペインなどヨーロッパの南部でその乾燥は各地の郷土料理になっている。なぜ。

    その、なぜ、の部分がまさにこの当たり障りの無さそうな魚を取り巻く怒涛の歴史の真相。近代化が進み永遠に続くと思われた資源が急激に減っていき(ここではまさにタラの量が激減し)、当時の太平洋の発展を担うこの魚を巡って戦争が起き、失業者は増え、外国人に敵対心を抱き、と我々人間の醜い姿をさらけ出されてしまう。タラに。

    タラがヨーロッパの南部で愛され、新大陸でも重宝され、残りの安い部分は奴隷たちやその子孫をも満たしたという史実。凄い魚としか言いようがない。こんなに人類にとって大事な魚は他にない。

    1997年出版当時よりも私たちの環境に対する危機感は高まり、トロール漁、底引き網漁はサステイナブルではないという意識はある。売れない必要のない魚まで根こそぎ取ってしまい、しかもプラスチックごみをかなり出す漁。プラスチックストローなんて比べ物にならない量のごみがトローリングで排出されそのまま海に残る。幼魚も根こそぎ取られて捨てられるので育たない、けれど都合が悪いから誰も語らない。

    いつものことながら、生活のために働く漁師さんは私たちの敵ではない。敵は常に、利益しか考えない大企業という国に保護されたモンスター。そんなところまで発展していく地味に壮大な一冊。
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    English review
    "Cod A biography of the fish that changed the world" Mark Kurlansky (1997) Review | Our ugly selves exposed by, cod

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    鱈: 世界を変えた魚の歴史




    Cod: A Biography of the Fish that Changed the World (English Edition)
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  • 『Smash and Grab』 Sunanda K. Datta-Ray 1984年 感想 | シッキム王国の壮絶な歴史と最後

    『Smash and Grab』 Sunanda K. Datta-Ray 1984年 感想 | シッキム王国の壮絶な歴史と最後

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    何年も探した結果やっとデジタル本で友人に送ってもらった。
    結局紙媒体の本はインド政府に出版停止された本なので、探してもない。
    いやというか発売禁止にすると余計に盛り上がるから、印刷停止命令を出したそう。結果は同じこと。
    (追記;アマゾンで今年2025年から電子書籍として入手できます。リンクは↓)

    別のシッキムについての本で完全に魅了され2023年にシッキムまで行きました。
    あの辺は本当に不思議。ヒンドゥー教徒が過半数なのに(ヒンドゥー教のネパール系は80%以上)、寺院は仏教のお寺が多い。

    インド政府が出版後にすぐ停止させた理由は良くわかる。
    これは絶対に読んでもらいたくない。

    チョギャル(チベット系シッキム国王)を個人的に知っていたジャーナリストが書いたいわゆる暴露本で、彼が聞いたこと、見たこと、交わした会話、肌で感じたこと、当時の新聞記事など、この数年間の様子がこと細かく記録されている。

    シッキム王国の歴史の基本的な知識がないとこの本は難しい。
    その歴史自体についてちょっと簡単にいうと。
    シッキムはインドの北東部、ネパール、チベット、そしてダージリンのあるインド西ベンガル州、ブータンと各国に囲まれている、すごい立地。ヒマラヤ山脈の麓で冬は厳しいけれど豊かな地。
    長い間チベット系をトップに現地民レプチャ族と静かに暮らしていたけど、英国の紅茶産業がダージリンで始まり、18世紀に働き手としてものすごい数のネパール人が流れ込んできて、上流階級が少数民族となり、大半を占めるネパール系が差別されるという不思議な形に。(これはいまでもグルカ運動が続いていて解決されていない問題)
    1947年インド独立時にダージリンやカリンポンなどはインド西ベンガル州になるが、シッキムはそのままシッキム王国を維持。
    チョギャルが若いアメリカ人女性と再婚し東洋のグレース・ケリーと話題になったことで知られているかも。

    シッキム王国がインド、シッキム州になったのは1975年。
    インドは英国の植民地主義に苦しみ、独立を勝ち取って30年もしないうちに、インド自らがシッキム王国を植民地化したわけで、この史実は非常に都合が悪い。
    嘘、マインドコントロール、偽りの約束、賄賂にフェイクニュースになんでもあれ。
    そして圧倒的で一方的な暴力。
    Smash=ぶち壊して、grab=奪え。
    道徳的にまずいことは全部あった。
    インドはメディアをコントロールしてシッキム国王を悪者に仕立て上げ、増え続けるネパール系と権力を持つチベット系の社会問題を悪用し、慎んだ生活をしていた人々を騙して、インド側は見事に嘘に嘘を重ね、反対派を暴力で押さえつける。
    最後はインドが軍隊を送り込み、あっという間に王国はなくなった。
    少数の外国人が強すぎる権力を振りかざす、まさに帝国主義。
    インドの政治は複雑で私は勉強不足の部分も多かったけど、それでもあからさま。
    それでも、インドはシッキム王国のあの立地が欲しかった。
    どんな手を使ってでも確実にインドのものにしたかった。
    このインドの暗い現代史を今のインド人はどこまで知っていて、どう思っているのか。
    多分知らない。
    シッキム国民たちは自らの意思で正当な方法で素晴らしい国インドの一部になれた、と教えられているから。


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    English review
    "Smash and Grab" Sunanda K. Datta-Ray (1984) Review | A dynamic history of Sikkim
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    SMASH AND GRAB:ANNEXATION OF SIKKIM (English Edition)
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