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  • 『日本文学の大地』 中沢新一, 2015年 感想 | 古代の人の感覚は私たちのなかに

    『日本文学の大地』 中沢新一, 2015年 感想 | 古代の人の感覚は私たちのなかに

    ★★★★★ 日本の古典文学をいくつか紹介する本。
    そこには近代以前の、自然と文化が分かれる前の大地が広がっている。こういう古代の人の感覚は私たちのなかにまだあるそう。嬉しい
    
    
    
    
    
    🔽基本情報🔽
    日本文学の大地
    中沢新一 2015
    Shinichi Nakazawa
    288 pages
    2024年5月 読了
    🔽 こんな人、こんなときにおすすめ 🔽
    日本の古典がちょっと食わず嫌いな人、多分ほとんどの人。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    日本の古典文学をいくつか紹介する本。
    そこには近代以前の、自然と文化が分かれる前の大地が広がっている。

    浄瑠璃の人形たちは、数人の裏方たちの一見無関係の縦横の動きによって細かく操られているという事実、それが比喩するもの。
    平安時代の、天皇は大地の初物を贈与されるんだから、その土地の美しい少女を贈与され、消費してあげるという観念。
    江戸時代までの、恋をすれば相手が男も女も関係ないという大まかなセクシュアリティ。
    松尾芭蕉のとことん装飾を削り取った美学。

    自分でない何かモノが語るから物語というんだということ。

    そして著者は人間は1000年ぐらいでは変わらないと言いきる。
    つまり、こういう古代の人の感覚は私たちのなかにまだある。
    私たちの生活は物に溢れ、貨幣の魔力の中で、大地と離れたところで忙しくなり、また個人というアイデアが一般化し壁ができてしまい、その感覚に触れづらくなったんだと思う。

    しかし、日本ももっと学校で面白い古典に触れる機会があればいいのに。
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  • 『クララとお日さま』カズオ・イシグロ, 2021年 感想 | 人工友達は友達か

    『クララとお日さま』カズオ・イシグロ, 2021年 感想 | 人工友達は友達か

    🔽 基本情報 🔽
    Klara and the sun
    Kazuo Ishiguro, 2021
    クララとお日さま
    カズオ・イシグロ
    307 pages
    2024年5月 読了
    🔽 こんな人、こんなときにおすすめ 🔽
    ディストピア小説好き。切ないです。
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    発売当時の特別版カバー。
    カズオ・イシグロ作品はいつもちょっと哀しい。劇的な悲しさというより小さな寂しさ。
    AF(人工親友)は感覚で言えば未来のペットのような。子供の友達になるようなわんちゃん、でも違いは、AFはどれだけ知能、経験、感情を学んでも所詮はモノ。

    AFクララを購入する少女の家族のことや周りの状況が、純粋なモノであるクララの目からのみ描かれる。
    この家族は利己的なのか。いや多分そういうことじゃない。彼らはただ単にこういう世界で生きていて、これがもう普通であり、悪気なんてない。

    AFには子どもたちを幸せにする義務、ミッションがあり、そのために学び、迷い、存在する、そして最終目的のためには手段を選ばないという選択だってする。
    じゃあAFクララは我々にとって脅威か。
    でも人間より誰よりも純粋なのはクララしかいないのに。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Klara and the Sun" Kazuo Ishiguro (2021) Review | Artificial Friends, are they friends?
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  • 『人間的な、あまりに人間的な』より抜粋 フリードリヒ・ニーチェ, 1878年 感想 | 意外にもユーモラス

    『人間的な、あまりに人間的な』より抜粋 フリードリヒ・ニーチェ, 1878年 感想 | 意外にもユーモラス

    🔽 基本情報 🔽
    Aphorisms of love and hate
    (Extract from "Human, All Too Human")
    By Frederick Nietzsche, 1878
    (愛と憎しみに関する格言、「人間的な、あまりに人間的な」より抜粋)
    フリードリヒ・ニーチェ
    55 pages
    2024年5月 読了
    🔽 こんな人、こんなときにおすすめ 🔽
    ニーチェが怖い人、大丈夫、この短いのなら私でも読めた。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    ペンギン・クラシックスの80周年の記念のLittle Black Classicsの一つで「人間的な、あまりに人間的な」の抜粋。
    本編も読んでみたいけど、まずはこれで短く読めたのは良かった。
    短いエッセイ、たまには一行だけで人間関係についてぎっしりと詰まっている。復讐心、哀れみ、結婚、愛、憎しみ。そして意外にもユーモアたっぷりで面白い。

    ここに書かれていることは私達が心の何処かで抱きつつも言葉に表せない気持ち。
    「愛は学ぶものであり、憎しみもまた学ぶものである」とか「結婚はうまくいくもの、一緒に住まなければ」「同じ喜びを分かち合えるのが友情だ」とか、重要箇所を選ぼうと思えばこの本すべて蛍光マーカーでいっぱいになる。

    なので、やっぱりがんばって本編を読みます。
    追記、読みました

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Aphorisms of love and hate" Frederick Nietzsche (1878) Review | Something we'd all recognise
    本編 人間的な、あまりに人間的な

    
    
    
    
    
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    本編

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    aphorism
    Aphorisms on Love and Hate (Penguin Little Black Classics) (English Edition)




  • 『アヘン王国潜入記』 高野秀行, 1998年 感想 | 私たちと変わらない気持ちで生活する人

    『アヘン王国潜入記』 高野秀行, 1998年 感想 | 私たちと変わらない気持ちで生活する人

    ★★★★★ 普通、ミャンマーの山中にある世界最大のアヘン生産地に半年も行かないよ。政治的に意図的に隔離されていてでも変わり者が何日もかけて歩いていくと、そこには私たちと変わらない気持ちで、泣いて笑って生活する人たちがいる。
    🔽基本情報🔽
    アヘン王国潜入記
    高野秀行 1998
    Hideyuki Takano
    392 pages
    2024年5月 読了
    🔽 こんな人、こんなときにおすすめ 🔽
    アジアの辺境ルポ系が好きな人。ウルルン滞在記っぽいけど、かなりリアル。

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    アヘン王国潜入記 (集英社文庫(日本)) [ 高野 秀行 ]

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    この本が面白いのは、テーマや内容も去ることながら、著者本人の人格が大きな魅力。

    普通、ミャンマーの山中にある世界最大のアヘン生産地に半年も行かないよ。
    しかも特にジャーナリスティックな野望をもってではなく、ただ一緒にケシ栽培したいからという理由で。
    この村に生まれて、アヘンの農業に一生を費やし、たまに吸って、いつかは死んでいく、他の何も知らずに。生きる意味とかそういう綺麗事じゃない。
    だからこの本には歴史や政治の話は少ない。
    歴史や政治や国家は隔離された小さな村に住む人々の暮らしの軸ではないから。
    でも、村の回りには巨大な力が渦巻いていて、典型的な貧富の差や搾取がある。
    つまり軸ではないけれど、人々は間違いなく左右されている。

    世界は隅から隅まで知られてる訳ではない。
    人が住んでいて、こんな重要な土地であるはずの場所ですら知られていない。
    政治的に意図的に隔離されているこういうところがあって、でも変わり者が何日もかけて歩いていくと、そこには私たちと変わらない気持ちで、泣いて笑って生活する人たちがいる。

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    アヘン王国潜入記 (集英社文庫)
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  • 『デミアン』ヘルマン・ヘッセ, 1919年 感想 | 普遍的な物語

    『デミアン』ヘルマン・ヘッセ, 1919年 感想 | 普遍的な物語

    🔽 ログ 🔽
    Demian
    By Hermann Hesse, 1919
    デミアン
    ヘルマン・ヘッセ
    135 pages
    2024年4月 読了

    
    
    
    
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    「デミアン」はある少年シンクレールSinclairが友人デミアンを通じて、安全を保証された親元その光りに包まれた生活を離れ、悪意や暗闇を知りおとなになる物語。

    最初からリアルな生活が描かれるんだけど、徐々に決定的なリアル、戦争の中での生活となる。
    でも大丈夫、シンクレールは友情を通じて自分を見つけ出すことができていたから。友情がもたらす影響力、そしてまたその影響下を離れて彼は自分を確立していった。

    子供の頃は善と悪と二手に分かれていただけだった。でもこの世は実はどちらでもあり、そして自分の居場所もその中にある、確実に。

    本としては短いけれど、シンクレールが少年から青年となる成長をじっくりと追っていく。急がない、成長するのに急ぐ必要はない。だからこれは普遍的で出版から100年経っても未だに心を打たれる。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Demian" Hermann Hesse, (1919) Review | Growing up, so universal


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  • 『太陽がいっぱい』 パトリシア・ハイスミス, 1955年 感想 | 冷淡で神経質

    『太陽がいっぱい』 パトリシア・ハイスミス, 1955年 感想 | 冷淡で神経質

    🔽 ログ 🔽
    The Talented Mr. Ripley 
    By Patricia Highsmith, 1955
    太陽がいっぱい
    パトリシア・ハイスミス
    252 pages
    2024年4月 読了

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    「太陽がいっぱい」
    この和訳のタイトルもいい、オリジナルもいい。

    有名な映画の原作。映画は古いアラン・ドロンのもアメリカのマットディロンのも見てストーリーは知っているのにそれでもハラハラドキドキで面白い。「キャロル」を書いた同じ女性作家ということは知らず、これはシリーズというのも知らなかった。

    リプリーの頭の中のことでいっぱい、いかに彼が冷淡で神経質で、そしていかにイタリアの青い空と対照的か、それがわかる読了後には日本語タイトルがピッタリだとわかる。
    追い詰められ、さらりと逃げ、また繰り返す。まさに心理スリラーの傑作、最近もネットフリックスでリメイクがあったはずだけど、これは何度も語り継がれる物語。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The Talented Mr. Ripley" Patricia Highsmith (1955) Review | Cold and nervous
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  • 『(権力のシステム) 』 ノーム•チョムスキー, 2013年 感想 | 権力はシステムである

    『(権力のシステム) 』 ノーム•チョムスキー, 2013年 感想 | 権力はシステムである

    🔽 ログ 🔽
    Power Systems Conversations with David Barsamian on Global Democratic Uprisings and the New Challenges to U.S. Empire Empire.
    Noam Chomsky, 2013
    ノーム•チョムスキー
    178 pages
    2024年4月 読了
    

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    タイトルは「権力のシステム アメリカ帝国のグローバルな民主主義の反乱と新たな挑戦 会話集」といったところ。

    2010年から2012年のノーム•チョムスキーの会話を集めた一冊。
    だから当然古い事柄もある。例えば10年も経てばインターネットの使い方も全然違うしアメリカ大統領も二度変わった。
    でも根本的にはいまとひとつの時代として括ることができる。

    アメリカの政治についてなので、分かったつもりにもなれる訳じゃないけど、分かることはただひとつ、彼の立ち位置と主張は変わらない。
    彼は一貫して他人にempathetic、共感的である。
    一貫して利己的なもの、ひと、主義に反対ている、そしてわたしたちは利己的な集団に統治されている。

    ちなみに、よくいわれる「アメリカ帝国」という言葉を最近よく考える。現在の帝国主義。

    チョムスキーは希望を忘れない。政治は我々一般市民が作るものであり、我々はきちんと理解すれば政治を使いこなすことができると。

    この本が出て10年少したち、世間はよくなったか。なってない。
    わたしたちができること、望むことができることは狭まれた。


    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Power Systems" Noam Chomsky (2013) Review | Power is systematic


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  • 『美は傷』 エカ•クルニアワン, 2002年 感想 | その地に宿る魂の苦しみ

    『美は傷』 エカ•クルニアワン, 2002年 感想 | その地に宿る魂の苦しみ

    
    
    
    
    
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    Beauty is a wound
    Cantik Itu Luka
    By Eka Kurniawan, 2002
    美は傷
    エカ•クルニアワン
    原語=インドネシア語
    読了=英語訳
    480 pages
    2024年4月 読了

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    インドネシアの町に死んだはずの売春婦の女性が戻ってきた。

    強く美しい女たちの物語は、いつも男たちによって泥沼にされる。
    その地に宿る魂の苦しみ、植民地としての過去、蔑ろにされる女性の尊厳、生きていくための手段。暴力と愛と呪い。なるほど、マジカルリアリズム。

    女性は自分の美しい娘の成長した姿を確認するまでは死ぬに死にきれず、唯一の醜い娘の幸福を確信する。だって外見の美しさは歴史、人種、宗教や政治、権力を越え、その子の人生の傷でしかないから。

    自分は何とか生き抜いた、でもそれぞれの子にそれぞれの苦しみと呪いがある、まるでマルケスの百年の孤独のような何代にも渡る一族のストーリーを、痛々しくリアルに描く。

    この物語はインドネシアだからこそ生まれてきた物語であり、世界中の人の心を揺さぶった。
    一度ページをめくったらやめられない、強く生きる女たちの壮大な物語。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Beauty is a wound" Eka Kurniawan (2002) Review | Mix of history, religions, power, and abuse


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  • 『禅と日本文化』 鈴木大拙 1940年 感想 | 日本的とは禅であること

    『禅と日本文化』 鈴木大拙 1940年 感想 | 日本的とは禅であること

    
    
    
    
    
    🔽 ログ 🔽
    禅と日本文化
    鈴木大拙
    北川桃雄 訳 1940
    196 pages
    2024年4月 読了

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    鈴木大拙のZen and Japanese culture。
    1938年に外国人向けに英語で講演された英語の本を1940年に和訳したもの。
    当時、欧米に日本を紹介する本として一世を風靡、現在に至るまで禅そして日本文化を知るための重要な一冊。つまり私なんかはもっと前から読むべき本でした。

    文章は古いのでその点は努力のいる本だけど、元々が日本人に向けていなかったので理論的に説明されていると言う点できちんと理解しやすい。

    いわゆる入門書でもないし、簡単という意味でもない、でもネットとかで調べようと思ったんだけどどうも禅と言うものが分からないと言う人向け。
    日本人向けだとどうも雰囲気で分からせようとする感じがあるけど、それは通用しない人たち向けなので、こっちの方が分かりやすい日本人も多いと思う。

    直感的であり、言葉よりも墨画や俳句、茶の湯を通じて表すことのできる禅。
    ミニマリズムであり自然を愛する精神と言うのは日本人の芸術や生活に染み込んでいて、日本的であるとはつまり禅であると。

    でもこれが書かれて80年以上たった今、ふと思うのはそのステートメントは現代の日本人を表す際に未だに正しいといえるのか。

    逆にそれは日本マニアの外国人が抱くイメージ上の憧れの日本、想像上の日本でしかないのかも知れない。
    けど、高度成長期からもうすでに一周回って、また禅が日常に近付いたかもしれない。もしくは、年を取れば日本人は禅に近付くのかも知れない。
    そうするとやっぱり禅は日本人の根っこ、いや、無意識の中にある。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Zen and Japanese culture" Daisetz T. Suzuki (1940) Review | Japanese means zen
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    禅と日本文化 (岩波新書 赤版 75)



  • 『日本の歴史をよみなおす(全)』 網野善彦 2005年 感想 | いままでの常識が覆される

    『日本の歴史をよみなおす(全)』 網野善彦 2005年 感想 | いままでの常識が覆される

    🔽 ログ 🔽
    日本の歴史をよみなおす(全)
    網野善彦 2005 (1991-)
    Rethinking Japanese History
    Yoshihiko Amino
    595ページ
    2024年3月 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    簡単に日本史のおさらいっぽいものかと思っていたら、大間違い。
    正にそういう先入観を捨てよ、というのがテーマ。

    根本的には、日本は島国だから閉鎖的でずっと農業が中心だったんですよ、という教科書に載っている概念がいかに間違っているか、
    そして第一、日本という区切りはなんだ、しかも海を越える文化も技術も中世からちゃんとあったのだよ、ということ。

    百姓と言う言葉がイコール農民でないということは、いままでの常識が覆される。
    いかに中世までの日本が、複雑で、リベラルで、高い技術や商売力があったか。

    少なからず誰もがショックを受けるはず。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Rethinking Japanese History" Yoshihiko Amino (2005) Review | "Common sense" was wrong
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  • 『黄昏の彼女たち』サラ・ウォーターズ, 2014 感想 | 女性二人の恋愛と犯罪

    『黄昏の彼女たち』サラ・ウォーターズ, 2014 感想 | 女性二人の恋愛と犯罪

    🔽 ログ 🔽
    The Paying Guests
    By Sarah Waters, 2014
    黄昏の彼女たち
    サラ・ウォーターズ
    595ページ
    2024年3月 読了
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    サラ•ウォーターズだから期待どおりハラハラドキドキの一冊。
    描写も細かくて、どんどん爆走が続いてこっちまで、いやちょっとそれはまずいんじゃない、と突っ込みたくなる。

    「荊の城」よりストーリーを追いやすいけど、浅い物語というわけではない。
    ここでも、一筋縄では行かない女性が中心。

    第一次大戦後、ロンドン郊外で保守的な母親と静かに暮らしていくはずだった女性。
    裕福な家庭だったのに戦争で男手を失くし、唯一の収入源として部屋を貸し出すことになり下宿人としてやってきた若い夫婦。
    そして女性は美しい妻の方に惹かれてゆく。そして徐々に良くない方向に。
    これは操りなのか純粋の愛なのか。誰が誰を操っているのか。

    控えめな下宿人の妻、「荊の城」のように仕方がない私が守ってやろう的な心構えだったのに、なんというか結局翻弄され振り回される、のだけどそこにはきっと愛がある。きっと。

    馴染めないロンドン郊外の敵意のある冷淡な社会の渦のなか、二人は自分達だけの無垢な世界を作れるのか。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The Paying Guests" Sarah Waters (2014) Review | But who manipulates who
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  • 『発酵文化人類学 Fermental Cultural Anthropology』小倉ヒラク, 2017年 感想 | 昔の人凄い

    『発酵文化人類学 Fermental Cultural Anthropology』小倉ヒラク, 2017年 感想 | 昔の人凄い

    ★★★★★ 人間がどう発酵と共存してきたかという角度から見る本。昔の人凄い。だから不思議発見なエンターテイメント。楽しく学べる
    🔽 ログ 🔽
    発酵文化人類学
    Fermental Cultural Anthropology
    小倉ヒラク 2017
    Hiraku Ogura
    400ページ
    2024年2月 読了
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    面白い。
    小難しいことだったらという不安があったけどすぐにぶっ飛んだ。

    そう、幸いにも発酵の歴史とか技術とかを学問的に掘り下げたものでなく、人間が大昔からどう発酵と共存してきたかという、一見変わった角度から見ている本。
    食品別に発酵の関係性とか。
    だから面白い。

    人は発酵と言う自然の法則にお世話になりながら料理をしている、という不思議な感覚。
    私自身も日本酒に近いところで生きてきたので何となくは知っていたけど、凄い、昔の人凄い。

    でも何千年も前からあったことなので、新しいものではない。
    ただ、いまの私達がそのすごさを科学と技術をもって再発見というか裏付けしているというだけ。


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    発酵文化人類学
    発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ (角川文庫)





  • 『傲慢と善良』 辻村深月, 2019年 感想 | 社会が突きつけてくる物差し

    『傲慢と善良』 辻村深月, 2019年 感想 | 社会が突きつけてくる物差し

    🔽 ログ 🔽
    傲慢と善良
    辻村深月 2019年
    Mizuki Tsujimura
    504ページ
    2025年7月 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    人気の小説というのは知っていたけど、実は読んだことない作者だし、第一、日本の現代文学は自分の好みではないと決めつけている私がいて。
    それじゃいけないと読む幅を広げるという意味で手にした本。
    自分の固定観念に挑戦した結果、この本が読めた。でかした、自分。

    社会という暗い大きな闇が突きつけてくる物差し。
    いい子は誉められます、きちんと親のいうことを聞いて、嘘をつかずに、でしゃばらずに。
    それが今のこの日本社会で子供のときから受ける教育。
    一昔前はそうだったんだから、あなたもそうしなさいという上の世代からの教育。

    私自身はさっさと国外に出たので自分の境遇とは違う、だけど、だからといってこれを読んで心が痛まないわけはない。

    恋愛小説でありながら、突如いなくなる婚約者、真実(まみ)のあとを追うミステリー風でもある。つまり読みごたえがある。
    ちょっとずつ彼女の過去や思考の霧が晴れていく中で、これはいま結婚を「するべき年齢」といわれる日本の若者誰もが痛く感じさせられる現実であると思い知らされる。
    家族ぐるみのお見合いではない、自分が定めた数ある基準から相手の点数を見定める婚活。
    そこで見定められるものは本当は何なのか。

    ヨーロッパでは親からの結婚の期待はあるのはあるけど、私の自由です放っておいて、と突き放すもしくは宥めることの方が多い。
    それは、日本のようながんじがらめのレールを敷く社会を思春期で体感しないから。
    間違っていようが自分の意見をいうことが奨励される社会で育つとそこまで多くの人は彼女に自分を投影しない。
    そして他のアジアの国の多くは未だに家族が決めるお見合いも多い。よくも悪くも結婚とは家庭とはそういうものという考え方もある。
    つまり日本はそのどちらからも外れた、自分の意見も主張できず家族の提供する安心感も浅い中でプレッシャーと疲労感だけが高まる孤独な活動となる。

    でも、それでも、ネタバレ阻止で詳しくは言えないけど、彼女は確実にいわゆる大人の階段を上る。
    遅いか早いかは、周りから見れば遅いかもしれない。しかし遅すぎることはない。

    まだ間に合う、まだ失敗しても大丈夫、人生はいつだって方向転換ができる、まだここが終わりじゃない。よかった。

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    English review
    "(Arrogance and Virtue)" Mizuki Tsujimura (2019) Review | Not so comical "Pride and Prejudice" in Japan
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  • 『動的平衡3 チャンスは準備された心にのみ降り立つ』福岡伸一, 2023年 感想 | やわやわの鎧

    『動的平衡3 チャンスは準備された心にのみ降り立つ』福岡伸一, 2023年 感想 | やわやわの鎧

    ★★★★★やっぱり面白い。副題もいい。
    物はいつかボロくなる、命も同じ。我々はその運命を生き抜くために、できるだけ対応するために、やわやわの鎧で立ち向かう

    🔽 ログ 🔽
    動的平衡3
    チャンスは準備された心にのみ降り立つ
    福岡伸一 2023
    Dynamic Equilibrium 3
    Shinichi Fukuoka, 2023
    2024年1月読了
    
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    どうもシリーズらしい。多分母ががうちにおいていった本。
    福岡教授って日本ではテレビに出たりもするんですね。いいなあ。

    やっぱり福岡教授の本は面白い。すごく難しいことが書いてあるはずなのに、易しく書かれているので、なんかわかった気になる。
    このシリーズは、メインの研究テーマである、生き物は常に動いて変化しつつ生き延びている、というもの。

    物はいつかボロくなる、命も同じ。ただ、我々はその運命を生き抜くために、できるだけ対応するために、やわやわの鎧で立ち向かう。
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    新版 動的平衡: チャンスは準備された心にのみ降り立つ (3) (小学館新書 444)



  • 『Piglet』 ロッティ・ハゼル, 2024年 感想 | 頑張って作り上げた自分像を壊すか

    『Piglet』 ロッティ・ハゼル, 2024年 感想 | 頑張って作り上げた自分像を壊すか

    🔽 ログ 🔽
    Piglet
    Lottie Hazell 2024
    ロッティ・ハゼル
    282 pages
    2025年7月 読了
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    現代女性の怒りのストーリー。頑張りすぎて、人の意見や期待に合わせてばかりな彼女。そして食、食べることについて。

    結婚2週間前のテンションマックスのピグレットというあだ名の女性は相手の男性から裏切りの告白を受ける。頑張って作り上げた自分像をこの期に及んで壊すか、それとも頑張り続けるか、嫌いだった実家に戻るか。

    いや、高級スーパーで買い物するわたしを見て。おしゃれな料理を作るわたしを認めて。

    今の働く女性、頑張ってる女性、期待に応えようと走り続ける女性はやっぱり共感してしまう。


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    English review
    "Piglet" Lottie Hazell (2024) Review | Will you break the perfect life?
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    Piglet: ‘If I owned a bookstore, I’d hand-sell Piglet to everyone’ New York Times Book Review (English Edition)





  • 『(古代世界のバイセクシュアリティ』エヴァ・カンタレラ , 1988年 感想 | そしてマッチョ社会に疲れる

    『(古代世界のバイセクシュアリティ』エヴァ・カンタレラ , 1988年 感想 | そしてマッチョ社会に疲れる

    🔽 ログ 🔽
    Bisexuality in the Ancient World
    Eva Cantarella, 1988
    Secondo natura
    (古代世界のバイセクシュアリティ)
    エヴァ・カンタレラ
    286 pages
    2025年6月読了


    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    こんなにアカデミックな内容とは知らず、ミラノ大学のローマ法、ギリシャ法の教授の本。
    日本では出ていないのでここでは内容もかなり触れます。

    ここでいうバイセクシャリティの定義は今の一般的な定義とは違う。
    古代ローマ、古代ギリシャでは男性は社会義務として女性と結婚をし、ギリシャでは教育として、ローマでは強さの象徴として青年と関係を持つ。
    男性と女性を同じように愛するというものではない。

    この本は古代ローマ、ギリシャの事について知識がある想定でバイセクシャル文化が語られるので、全然予習が足りなかった。
    ギリシャでは行為を通じて年上の男性が青年を教育する。ローマでは男性ローマ市民の強さを示すために青年、女性、奴隷を性的にも支配下に置く。

    いずれの場合も極端に女性蔑視で超マッチョイズム(machismo)。そして当時(男性によって作られ広げられた)キリスト教がやってくる。
    女性蔑視の強い宗教ではあるけれど観点が代わり「男性優位の社会を守るために、子供をたくさん産む女性と結婚して繁殖だけに重点を置きましょう」となった。
    そして現在に続く。

    でも著者が言うには、キリスト教が人々の考えを変えたのではなく、実はみんなマッチョに構えるのに疲れていたときに都合がいい思想が広がったから、キリスト教を利用しただけ、と。

    時代は変わり考え方も変わる。
    でも何千年たっても、なんとか男性優位の社会を維持しようという基本はあまり変わらないようです。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Bisexuality in the Ancient World" Eva Cantarella (1988) Review | Then suffer from machismo
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    Bisexuality in the Ancient World: Second Edition (Yale Nota Bene)
    







  • 『(イエローフェイス)』R. F. クァン, 2023年 感想 | 真実は大事じゃない

    『(イエローフェイス)』R. F. クァン, 2023年 感想 | 真実は大事じゃない

    🔽ログ🔽
    Yellowface
    Rebecca F Kuang, 2023
    イエローフェイス
    R. F. クァン
    319 pages
    2025年6月 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    すごい人気があるのは知ってたけど、確かに圧倒的に面白かった。

    最初はAthena視線の人種差別的な話かなと思ってたら、そうじゃなくてJuneの話だった。
    ジューンという平凡な白人の女の子が、綺麗で才能豊かなアジア人アテナにちょっと異常なまでに執着、嫉妬してしまった。

    ネタバレせずにいるには、面白い、と漠然に言うことしかできない。
    どういうジャンルとか枠組みかとかが難しいストーリーだけど、つまりは今のこの世の中そのもので、正にそう!と言いたくなって、そしてまるで週刊紙を読むかのように、いけないものを見るかのような心境でページをめくることをやめられない。

    皆が皆で皆を貶して陥れようとして利用して、SNSが一番大事で真実はそう大事じゃなくて、つまり私たちが住むのこの世の中の鏡のような、で、どうせ流行はどうぜどんどん入れ替わっていく。

    著者Kuangの新作も出たばかり。
    読まなきゃー


    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Yellowface" Rebecca F Kuang (2023) Review | Facts are not important
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  • 『こだわらない練習 「それ、どうでもいい」という過ごし方』小池龍之介 2015年 感想 | 気持ちの持ちよう

    『こだわらない練習 「それ、どうでもいい」という過ごし方』小池龍之介 2015年 感想 | 気持ちの持ちよう

    ★★★★★ どうでもいいや、という考え方は訓練すればできると。執着しないことに浸っている自分への執着、とエンドレスな執着のループだけど気持ちの持ちよう。
    
    
    
    
    
    🔽 ログ 🔽
    こだわらない練習
    「それ、どうでもいい」という過ごし方
    小池龍之介 2015
    Ryunosuke Koike
    2025年5月読了
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    やっぱり面白かった。
    ポッドキャストを聞いてる松本紹圭の友人ということで良く聞く名前でしかもかなり変なやつ、ということだけど、まさに、変なやつ。でもいい意味で。

    お坊さんなのにあまりにもさらけ出していてきっと敵も多いだろうに、頭が良い上に自分をコントロールできるから気にしてなさそう。

    仏教の基本である、執着しないということの具体的な話をテーマごとに。
    性についてだって出てくる。
    執着しないことに浸っている自分への執着、とエンドレスな執着のループだけど、やはり気持ちの持ちよう。

    どうでもいいや、という考え方は意識すれば、訓練すればできる。
    そして最後には、でもちょっとしたことをその日の目標にして自分で誉めることで、慢心はコントロールできるというのも面白い。

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  • 『Small Worlds』 ケイレブ・アズマー・ネルソン 2023年 感想 柔らかい気持ちが長く続く

    『Small Worlds』 ケイレブ・アズマー・ネルソン 2023年 感想 柔らかい気持ちが長く続く

    🔽 ログ 🔽
    Small Worlds
    Caleb Azumah Nelson, 2023
    ケイレブ・アズマー・ネルソン
    256 pages
    2025年5月 読了
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    移民の集まる南ロンドンカルチャー好き、90年、2000年の音楽好き。
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    今人気の最近の小説をまとめてロンドンで買った中の1つ、なので相変わらず内容も知らないまま購入。でもそれがよかった。

    とても詩的。パッと表紙を見ただけでは予想できない雰囲気。
    表紙のエッジーな雰囲気は背景で、移民、黒人文化、南ロンドン、音楽、そういうものからは暴力的で騒がしいものを連想するけど、でもこれはそういう社会の渦の中にある、彼らの住む小さなスモールワールド。
    愛情に溢れ、優しさに包まれ、自由、家族、夢や悲しみの小さな世界。

    主人公は幼馴染みをひたすら想い続け、保守的な父親との関係に苦しむ、つまり誰もが共感できる誰もが住んでいる各々のスモールワールド。

    背景に聞こえるリズムと静かで深い愛、読み終わったあともその柔らかい気持ちが長く続く。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Small Worlds" Caleb Azumah Nelson (2023) Review | Tender feeling of understanding and belonging
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  • 『ゴールデン・ロード』ウィリアム・ダルリンプル, 2024年 感想 | 途方に暮れるほどの驚きの内容

    『ゴールデン・ロード』ウィリアム・ダルリンプル, 2024年 感想 | 途方に暮れるほどの驚きの内容

    🔽 log 🔽
    The Golden Road
    How ancient India transformed the world
    William Dalrymple, 2024
    ゴールデン・ロード
    古代インドはどう世界を変えたか
    ウィリアム・ダルリンプル, 2024
    432 pages
    2025.03 読了

    🔽🔽読書記録🔽🔽
    世界で一番好きな歴史家の最新作。

    イタリアでだってアマゾンで通常版買えるけどそうじゃなくてロンドンの本屋さんでサイン付き特別版を予約して友人に取りに行ってもらってやっと我が家まで運んでくれたという超アナログな購入手段で入手。

    彼のツイートもインスタもポッドキャストも全部フォローして内容も事前に全部分かってて、当然何ヵ月も待ったことで期待が高まったけど、見事にそんな期待をも越えた。歴史的な本と言い切れる。

    日本で出るとしたら多分「ゴールデン•ロード、古代インドはどう世界を変えたか」概要は古代インドのソフトパワー、それは幅広くて各々が重要すぎて途方にくれるほど。1ページ1ページが驚きの史実、そしてその史実は今まで世界には知られていなかったというのも更に驚き。

    インド人とっては、「そうだよ中国のシルクロードはつまりインドのが膨大な利益を得た貿易だよ」とか「アラビア数字はインドで2000年前から使ってたよ、ヨーロッパ人はやっとアラブ圏を通じて11世紀くらいにうちらのシステムを使いだしたんだよね」なんて常識。でも常識を世界に広げることが、機会がなかった。あと例えば、昔々、毎年律儀にやってくる季節風を利用し海を渡って東南アジアを宗教や文化を広げたり、はたまたインドの宗教である仏教は確実にアジアに広がり中国も両手を広げて招き入れたり、西側のアラブやペルシャ圏もインドのその豊かな文化と頭脳を崇拝した。その重大さについて世界は十分に把握していない。シルクロードも大事だけど金を運んだインドのゴールデンロードも凄いよ、と。

    そうやって世界の経済を回していたインドは当時のムガール帝国に訪れた混乱の際に悪徳なチンピラ集団の東インド会社に騙されつけこまれ、一気に落ちていくその時に輝かしい歴史も地中深くに埋められてしまった。

    ロックスター•ヒストリアンとも呼ばれるダルリンプルは20代からアラブ圏や南アジアに魅せられデリーに住み着いたスコットランド人歴史家。彼の本は私たちが触れることができなかった南アジアの歴史を掘り出して惜しみなくシェアしてくれる、けど彼がここまで愛される理由は彼のその情熱にある。とにかく探求欲が旺盛で、凄い発見をすると黙っていられない、ポッドキャストでも知らないことがあれば「知らなかったもっと教えて」とまるで子供のように(見えないけどきっと)目をキラキラしている。頭が良くて博学なのにそこで満足しない。ポッドキャストでもよくネタバレしていつも共演者に怒られ、計算が苦手で、実は有名な家系で先祖がよく歴史上に出てきたり、ポッドでたまに泣いてしまう、ちょっとかわいい歴史家。そして徹底的に弱者の側につく。

    彼自身が大好きで仕方がない事を本にして書いているから読む方も心踊らされる。ただの歴史上の事実を並べた本ではない、愛情と情熱と好奇心に溢れたインド激推し歴史家の一種のラブレターともいえる。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The Golden Road" William Dalrymple (2024) Review | Powerful and exciting

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  • 『鱈: 世界を変えた魚の歴史』マーク・カーランスキー, 1997年 感想 | 鱈が人間の醜い姿を曝け出す

    『鱈: 世界を変えた魚の歴史』マーク・カーランスキー, 1997年 感想 | 鱈が人間の醜い姿を曝け出す

    🔽ログ🔽
    Cod: A Biography of the Fish that Changed the World
    Mark Kurlansky, 1997
    鱈: 世界を変えた魚の歴史
    マーク・カーランスキー
    2025年3月読了
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    なんと日本語訳もあるみたい。「鱈: 世界を変えた魚の歴史」
    ヨーロッパに住んでるけど日本人としてタラという魚はよく分からなかった。フィッシュ・アンド・チップスの魚でヨーロッパの北部の寒い海でとれるらしい、でも昔からイタリアやスペインなどヨーロッパの南部でその乾燥は各地の郷土料理になっている。なぜ。

    その、なぜ、の部分がまさにこの当たり障りの無さそうな魚を取り巻く怒涛の歴史の真相。近代化が進み永遠に続くと思われた資源が急激に減っていき(ここではまさにタラの量が激減し)、当時の太平洋の発展を担うこの魚を巡って戦争が起き、失業者は増え、外国人に敵対心を抱き、と我々人間の醜い姿をさらけ出されてしまう。タラに。

    タラがヨーロッパの南部で愛され、新大陸でも重宝され、残りの安い部分は奴隷たちやその子孫をも満たしたという史実。凄い魚としか言いようがない。こんなに人類にとって大事な魚は他にない。

    1997年出版当時よりも私たちの環境に対する危機感は高まり、トロール漁、底引き網漁はサステイナブルではないという意識はある。売れない必要のない魚まで根こそぎ取ってしまい、しかもプラスチックごみをかなり出す漁。プラスチックストローなんて比べ物にならない量のごみがトローリングで排出されそのまま海に残る。幼魚も根こそぎ取られて捨てられるので育たない、けれど都合が悪いから誰も語らない。

    いつものことながら、生活のために働く漁師さんは私たちの敵ではない。敵は常に、利益しか考えない大企業という国に保護されたモンスター。そんなところまで発展していく地味に壮大な一冊。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Cod A biography of the fish that changed the world" Mark Kurlansky (1997) Review | Our ugly selves exposed by, cod

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    鱈: 世界を変えた魚の歴史




    Cod: A Biography of the Fish that Changed the World (English Edition)
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  • 『遠い山なみの光』 カズオ•イシグロ, 1982年 感想 | 普通の人の嫌味や僅かな悪意

    『遠い山なみの光』 カズオ•イシグロ, 1982年 感想 | 普通の人の嫌味や僅かな悪意

    🔽ログ🔽
    A Pale View of Hills
    Kazuo Ishiguro, 1982
    カズオ•イシグロ
    遠い山なみの光
    183 pages
    2025年2月読了
    
    🔽🔽読書記録🔽🔽
    カズオ•イシグロの最初の長編小説。読んだのは2月だけどここを更新する7月にはちょうど日本の映画が公開されたばかり。

    彼の物語の特徴である、すごく日本的でありながらもすごく英国的という点がよく出ていて、やっぱり彼のようにすごく上手に二つのセンチメントを操る人はいない。

    イシグロ作品にはいつもちょっと普通の人の嫌みや僅かな悪意という隠し味がある。それって人間的でいたって当たり前。ここではサチコと娘の些細な狂気が常に漂っていて、そして周囲のお行儀の良い人たちの自分勝手さなんかがそう。

    戦時中、戦後の空しさと苦しみ。過去と未来。女たちと後悔。女たちと終わるべき過去。
    エツコは何度も自分の記憶の頼りなさをつぶやく。年老いて十分に苦労した自分をもう傷つけないために、思い出が曖昧になる。でもそれの何が悪いのか、彼女は十分に自分を苦しめた、ちょっと位曖昧にしたって、いい。

    やっぱりイシグロ作品は面白い。静かでありながらしっかりと人間の内面をしぼりだしている。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "A Pale View of Hills" Kazuo Ishiguro (1982) Review | slight malice of "normal" kind people
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  • 『日本残酷物語1 貧しき人々の群れ』宮本常一 他 著 1959年 感想 | その生活は残酷である

    『日本残酷物語1 貧しき人々の群れ』宮本常一 他 著 1959年 感想 | その生活は残酷である

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    日本残酷物語 1【電子書籍】[ 宮本常一 ]


    🔽🔽読書記録🔽🔽
    宮本常一さんといえば(大好きです)普通の日本人の近代史を語らせれば右に出るものはいない民俗学者。
    そして普通の大半の日本人というのは、貧しかった。
    他の国からの旅行者も口を揃えてその貧しさを書き残しているけれど、宮本常一民俗学とは、とにかく歩いてその土地の人の話を聞くことだけど、この本もすごい。
    百年ちょっと前の日本人の大半が貧しさに苦しみ、盗みや殺し、身体を売り家族を文字通り捨て、肉親だろうが我が子だろうが背には腹を変えられぬ底辺の生活をしていた。

    一般的に学校で習う歴史は社会の強者だけが記録され語られていて、弱者というか普通の人の生活は見えない。
    でもここには大衆の、普通の人のいくつもの例が掲げられている。

    それは残酷である、あるんだけど、残酷という言葉で終らせていいのか。
    子を間引きする親に他に生き延びる方法はあったか、行政はなにをしたのか。
    ただ食べるため赤の他人の船や旅人を襲う村人は残酷なのか。

    ここには女性の例が多くあるのがありがたい。
    女性はその人生をかき荒らされ、女だからと穢れとして下にみられ、一人の人間とは見なされず、家庭での立場も常に戦場で、しかも妊娠をする、そしてなぜかその責任を負わされる。
    炭鉱の女性の章もよかった。
    いかに家庭も社会も背負う女性がたくましいかがはっきりとかかれている。

    本来日本人なら義務教育で知っておきたい、知るべきな、日本の歴史。


    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Japan cruel stories 1, flock of poor people" Miyamoto Tsuneichi (1959) Review | The history of the majority
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  • 『高慢と偏見』ジェーン•オースティン, 1813年 感想 | お金持ちの青年を散々けなして結局結婚する

    『高慢と偏見』ジェーン•オースティン, 1813年 感想 | お金持ちの青年を散々けなして結局結婚する

    🔽ログ🔽
    Pride and Prejudice
    Jane Austen, 1813年
    高慢と偏見
    ジェーン•オースティン
    367 pages
    2025年1月読了

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    高慢と偏見 上 (岩波文庫 赤222-1) [ オースティン,J.(ジェーン) ]
    
    
    
    
    
    🔽🔽読書記録🔽🔽
    古典中の古典。超クラシック。ストーリーはすでによく知られているけど、会話に滲み出るこのユーモアが「もっとも愛されている本」に数えられる理由。

    典型的なイングランド、英国。ライフスタイルもユーモアも。登場人物は皆生き生きとしていて、ストーリーはシンプルなのに次が気になって仕方がない。どの国のどの境遇の人をも魅了する物語だけど、もう王道を突っ走りすぎて、これに感化されていないラブストーリーを見つけることの方が難しいかも。

    いつかちゃんと映画も見ないと
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Pride and Prejudice" Jane Austen (1813) Review | How to humiliate a rich guy and marry him
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    高慢と偏見 上 (岩波文庫 赤222-1) [ オースティン,J.(ジェーン) ]


    高慢と偏見 下 (岩波文庫 赤222-2) [ オースティン,J.(ジェーン) ]


    Pride and Prejudice PRIDE & PREJUDICE REV/E (Penguin Classics) [ Jane Austen ]

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    高慢と偏見 (中公文庫)


    Pride and Prejudice, Annotated (Penguin Classics) (English Edition)
    
    
    
    







  • 『Smash and Grab』 Sunanda K. Datta-Ray 1984年 感想 | シッキム王国の壮絶な歴史

    『Smash and Grab』 Sunanda K. Datta-Ray 1984年 感想 | シッキム王国の壮絶な歴史

    🔽ログ🔽
    Smash and Grab
    Annexation of Sikkim
    Sunanda K. Datta-Ray, 1984
    433 pages
    読了=2025年1月
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    何年も探した結果やっとデジタル本で友人に送ってもらった。結局紙媒体の本はインド政府に出版停止された本なので、探してもない。
    いやというか発売禁止にすると余計に盛り上がるから、印刷停止命令を出したそう。結果は同じこと。
    (追記;アマゾンで今年2025年から電子書籍として入手できます。リンクは↓)

    別のシッキムについての本で完全に魅了され2023年にシッキムまで行きました。
    あの辺は本当に不思議。ヒンドゥー教徒が過半数なのに(ヒンドゥー教のネパール系は80%以上)、寺院は仏教のお寺が多い。

    インド政府が出版後にすぐ停止させた理由は良くわかる。
    これは絶対に読んでもらいたくない。

    チョギャル(チベット系シッキム国王)を個人的に知っていたジャーナリストが書いたいわゆる暴露本で、彼が聞いたこと、見たこと、交わした会話、肌で感じたこと、当時の新聞記事など、この数年間の様子がこと細かく記録されている。

    シッキム王国の歴史の基本的な知識がないとこの本は難しい。
    その歴史自体についてちょっと簡単にいうと。
    シッキムはインドの北東部、ネパール、チベット、そしてダージリンのあるインド西ベンガル州、ブータンと各国に囲まれている、すごい立地。ヒマラヤ山脈の麓で冬は厳しいけれど豊かな地。
    長い間チベット系をトップに現地民レプチャ族と静かに暮らしていたけど、英国の紅茶産業がダージリンで始まり、18世紀に働き手としてものすごい数のネパール人が流れ込んできて、上流階級が少数民族となり、大半を占めるネパール系が差別されるという不思議な形に。(これはいまでもグルカ運動が続いていて解決されていない問題)
    1947年インド独立時にダージリンやカリンポンなどはインド西ベンガル州になるが、シッキムはそのままシッキム王国を維持。
    チョギャルが若いアメリカ人女性と再婚し東洋のグレース・ケリーと話題になったことで知られているかも。

    シッキム王国がインド、シッキム州になったのは1975年。
    インドは英国の植民地主義に苦しみ、独立を勝ち取って30年もしないうちに、インド自らがシッキム王国を植民地化したわけで、この史実は非常に都合が悪い。
    嘘、マインドコントロール、偽りの約束、賄賂にフェイクニュースになんでもあれ。
    そして圧倒的で一方的な暴力。
    Smash=ぶち壊して、grab=奪え。
    道徳的にまずいことは全部あった。
    インドはメディアをコントロールしてシッキム国王を悪者に仕立て上げ、増え続けるネパール系と権力を持つチベット系の社会問題を悪用し、慎んだ生活をしていた人々を騙して、インド側は見事に嘘に嘘を重ね、反対派を暴力で押さえつける。
    ふと気がつけば、シッキム国民たちは自分達が進んでインドに吸収されることを望んでいるかのようになってしまい、最後はインドが軍隊を送り込み、あっという間に国はなくなった。
    まさに植民地主義の鏡の様なやり方。少数の外国人が強すぎる権力を振りかざす。
    インドの政治は複雑で私は勉強不足の部分も多かったけど、それでもあからさま。
    シッキム国王は確かにネパール系を差別していたけれど、シッキム王国内で解決方法はあったかもしれない。
    でも、それでも、インドはシッキム王国のあの立地が欲しかった。数年かけて重要人物たちを手懐け、確実にインドのものにしたかった。
    どんな手を使ってでも。
    このインドの暗い現代史を今のインド人はどこまで知っていて、どう思っているのか。
    多分知らない。シッキム国民たちは自らの意思で正当な方法で素晴らしい国インドの一部になれた、と教えられているから。


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