カテゴリー: 1950-1959

  • 『ティファニーで朝食を』 トルーマン カポーティ, 1958年 レビュー | 読者も彼女に恋をする

    『ティファニーで朝食を』 トルーマン カポーティ, 1958年 レビュー | 読者も彼女に恋をする



    ティファニーで朝食を
    トルーマン カポーティ, 1958
    Breakfast at Tiffany’s
    Truman Capote
    2020.05 読了
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    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 華やかな若き天才作家と呼ばれた著者
    ✔ 田舎から出てきてニューヨークで自由に遊ぶ日々の女の子
    ✔ 村上春樹も翻訳

    ★★★★☆ オードリーヘップバーンの映画はみんなが知ってる。確かにこの物語に恋をする。主人公ホリーは自由奔放で実は繊細。恋するけれど、誰か彼女のことを大切にしてくれるだろうか。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    オードリーヘップバーンの映画はみんなが知ってる。
    でも映画はこんなに暗い感じだったけ?
    たぶん映画はもっと明るくしてたと思う。

    確かに、この物語に恋をする。
    主人公ホリーは自由奔放でありながらも実は繊細。
    まだ20歳の彼女は間違いを犯しながらもさっさと次へ次へと進んでいく。
    みんなが彼女を愛する、でも誰か彼女のことを大切にしてくれるだろうか。

    短編集なんだけど、日本語は村上春樹の訳とは、それは贅沢。
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    English review
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    ティファニーで朝食を (新潮文庫)


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  • 『黒い皮膚・白い仮面』 フランツ・ファノン, 1952年 レビュー | 劣等感と優越感の心理的構造

    『黒い皮膚・白い仮面』 フランツ・ファノン, 1952年 レビュー | 劣等感と優越感の心理的構造



    黒い皮膚・白い仮面
    フランツ・ファノン, 1952年
    Black skin, white masks
    Peau noire, masques blancs
    Frantz Fanon, 1952
    2020.05 読了
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    🔽 本の紹介と一言レビュー 🔽

    ✔ 人種差別の裏にある心理的構造と恐怖を説く
    ✔ 植民地マルティニーク出身の精神科医
    ✔ 留学中の当時のフランスにおける人種差別に向けて

    ★★★★★ 黒人は白人社会に身を置いて初めて黒人となる。その植民地主義の世界で黒人は常に自らを否認しながら生活する。複雑で解決方法がなくても、目を背けない、そのためにこの本を読む。

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    ポストコロニアリズムの古典。
    黒い皮膚を持ちながら白人として生きるとはどういうことか。
    いやもっというと、白人としていきたいと思うこととは、どういうことか。

    著者ファノンはフランスの植民地マルティニーク出身の精神科医。
    精神科医ということは潜在意識の専門家であり、つまり制御された欲求、つまり性的欲求、もしくは恐怖の専門家。

    黒人は、白人社会に身を置いて初めて黒人となる。
    白人社会とは植民地主義の世界であり、黒人は常に自らを否認しながら生活する必要がある。
    自己否定を避けることができても、主体的にはならない。
    逆に白人は、自分たちが勝手に作り上げた黒人像に怯えながら生活する必要がある。
    野蛮で、なにより性的に強力な黒人像。
    面白いのは、恐怖症という怯えは実は深いところにある欲求から生まれるという論点。
    つまり、差別主義者は心の奥では黒人に脅かされたいという欲求がある、と。

    もう一つ面白い点は、彼はフランスの植民地主義について語るという点で、奴隷制度の廃止はアフリカ人が戦って得たものではなく、白人のご主人様から与えられたものだという観点。

    もちろん、黒人だけでなく私自身のように白人社会で生きる白人以外の人間は常に自分の皮膚の色がもたらす余計な意味について意識しながら生活するわけで、どこにいても白人が一番優位である事実は避けられない。
    日本は植民地化されていないので、日本にいる限り自分の肌の色から生まれる原罪を意識することはほとんどない。
    むしろ日本人特有のコンプレックスでアジアにおける「黄色い皮膚・白い仮面」というちょっと違う側面もあるが、それはここではさて置き。

    あと、上記にもちょっと書いたように、もちろん映画や娯楽、アート、文化において黒い皮膚というのは悪と描かれるので、アジア人を含む共同的なイマジネーションにおいて、その歴史を知っていなくても「黒=悪」という方程式が植えつけられる。

    ファノンは、植民地主義に植民地化されたくないという。
    黒人は劣等感から解き放たれ、白人は優越感から解き放たれるべきだと。

    そして70年以上たった今。
    人種を超えたコミュニケーション、友情、恋愛関係は普通になって、人種差別をする人間は見下される世の中になった。
    でも、私たちは本当の意味で人種から自由になったのか。

    ファノンの苦悩はなくならなかった。
    例え知識人として知的な発見をしたとしても、サトウキビ畑で労働を強いられている8歳の子の生活は変わらないと。
    問題は単純に皮膚の色だけでもない。
    白人社会で生きるミドルクラスの黒人の苦しみと、その日の生活がやっとの黒人の苦しみ、二人の問題は同じものではない。
    人種の問題は多くの段階を含み、層を含み、複雑である。

    でも、それでも、たとえ複雑であっても解決方法がなくても、目を背けない、そのためにこの本を読む。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    tag 植民地主義
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    フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い仮面』 2021年2月 (NHK100分de名著)
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  • 『白い人・黄色い人』 遠藤周作, 1955 感想 | 人種と宗教の境界線

    『白い人・黄色い人』 遠藤周作, 1955 感想 | 人種と宗教の境界線

    🔽 基本情報 🔽
    白い人・黄色い人
    遠藤周作, 1955
    208 ページ
    2020.01 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    キリスト教と人間の悪。

    「白い人」
    自らの醜さを理解し、親の教育をすり抜け、劣等感を超えての空想の優越感を覚える。
    悪は普遍的であり、政治的であり、相手を潰す力を持つ。
    ついに運命の時がやってくる。
    級友を踏みにじることは全ての偽善者を踏みにじることであり、そしてこの娘を汚すのは全ての処女を汚すこと。
    これは絶対的な神を持つ文化で生きる白人の道徳の中に沸き出す悪だという事だろう。
    それを信じて耐える人間になるか信じずに悪に酔う人間になるか。


    「黄色い人」
    これは、ある意味もっと辛い。
    著者本人の一番のテーマである「日本人のくせにキリスト教信者」の矛盾がもたらす醜さ。
    戦争を生きる信者の青年は全てに疲れきっていた。
    私たち黄色い人間には、貴方達のような白い人間が恐れる神を本当は信じられない。
    私たち黄色い人間には、原罪はない、罪を背負って生きない、どうせ聖母マリアはこの国にいない。
    今日は疲れた、明日行こう。
    神を裏切った元神父はやっとこの国に住む黄色い人のその疲れた目に宿る真実に気づく。
    生も死も恐れない、罪もない、一つの神を信じない彼らの世界では罪人もそのまま救われる。
    自分たち白い手を持つ人間はこの黄色い人に近づくことができるのか。

    「黄色い人」は信じるか信じないかの二択から解き放たれた人たちのただただ疲れた瞳、諦め、そして罪のない身軽さを描く。


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    English review “White Man, Yellow Man” Shusaku Endo (1955) Review | Between the races >>
    tag 宗教/Religion

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  • 『野火』大岡昇平, 1952 感想 | なぜ納得してしまうのか >>

    『野火』大岡昇平, 1952 感想 | なぜ納得してしまうのか >>

    🔽 基本情報 🔽
    野火
    大岡昇平, 1952
    224 ページ
    2021.10 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    読みたくても読みたくなくて、やっと読んだときは、早く読んでしまって記憶から消したい、それが率直な感想。

    人間、生か死かという極限でどう生き延びるか。
    信じるか、信じないか。
    その信頼の対象は自分であったり他人であったり。

    現実にその極限を生き延びた人は今どうなるのか。
    もうその時代の人は少しずつ亡くなって行くけれど、帰還して平和な生活を送れたのか。その後の世代は同じ過ちをしないのか。

    これほどにも読んで悪い気分になるものはそうない。
    それは、ただその事実がショッキングだというわけではない。
    私を含め多くの人は決して似たような経験はないはずなのに、納得してしまうからである。

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    English review “Fires on the plain” Shohei Ooka (1952) Review | Crossing the line as a human
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  • 『呪われた村』ジョン・ウィンダム, 1957 感想 | 居心地の悪さ>>

    『呪われた村』ジョン・ウィンダム, 1957 感想 | 居心地の悪さ>>

    🔽 基本情報 🔽
    The Midwich Cuckoos
    John Wyndham, 1957
    呪われた村
    ジョン ウィンダム
    240 ページ
    2022.12 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    友人に薦められるままに読んだので内容を知らなかったので最初は混乱状態に。
    なにこれ。
    SF小説をあまり読まないので他と比べようがないけれど、何度も映画化やドラマ化されている静かに恐ろしい一冊。

    静かな町である日、住民が全員意識を失い目が覚めると女性たちは妊娠していた。
    一斉に生まれた子どもたちは親に全く似ていないがお互いが似ていた。特に光った目。
    そして子どもたちは恐ろしいほどに賢く強く育っていく。
    何かがおかしい、この子達は何者なのか、どうすればいいのか、何が正しい方法なのか、どうやって止めるのか。

    居心地の悪い怖さの理由は、こんなことが本当はどこかで静かに起きて静かに消されているんじゃないか、というそのリアルさ。

    SFって昔は宇宙人の仕業だった。
    わかりやすい敵が外にいるいい時代だったのか。
    今は身内である人間が怖い。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review “The Midwich Cuckoos” John Wyndham, (1957) Review | Uncomfortable


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  • 『ハバナの男』グレアム・グリーン 1958年 感想 | どんどんややこしくなる

    『ハバナの男』グレアム・グリーン 1958年 感想 | どんどんややこしくなる

    🔽 基本情報 🔽
    Our man in Havana
    Graham Greene, 1958
    ハバナの男
    グレアム・グリーン
    256 pages
    2023.07 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    不思議なスパイコメディー小説。
    冷戦下のキューバ、平凡な掃除機屋の主人公はなぜか英国スパイにスカウトされる。
    ことごとく浪費癖のある娘のせいでお金に困っていたし悪くはないとこの話にのって、勘違いや大げさな反応や状況の馬鹿らしさに流されていると、話がどんどんとややこしくなっていく。

    信じられないような話なのに、でもありえなくもないかも、と思えてくる。
    スパイって現在もいるし(ロンドンでは意外とよくスパイのニュースがあります、MI5の求人募集の話とかも)、彼らの情報の重要さは誰もが承知、でももしこの小説のように意図的にテキトーなことを報告していたら?
    スパイ小説も映画もコメディも多いけれど、これはかなり異色。

    気がついたらもう手に負えないくらいおかしなことになってて、でももうここまで来たら嘘でもなんでも通してしまおう、もう政府相手だろうがなんだろうが、ななげやり感もすてき。

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    “Our man in Havana” Graham Greene (1958) Review | All tangled up
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    ハバナの男


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  • 『或る「小倉日記」伝』松本清張 1952年 感想 | もつれと絶望感

    『或る「小倉日記」伝』松本清張 1952年 感想 | もつれと絶望感

    🔽 基本情報 🔽
    或る「小倉日記」伝
    松本清張, 1952
    396 pages
    2023.07 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽

    やっと読んだ、芥川賞受賞の短編集。
    これ以降は当時朝日新聞勤務であった松本清張は小説に専念するようになったそう。
    彼特有の、人間の嫌なところをうまく描くというスタイル、それが静かに燃えている感じ。

    有名な小倉日記では、外見と裏腹に知的で研究熱心な主人公。
    でもどうみても障害を持っている見た目では社会が簡単に受け入れない。
    他の短編集では、社会的地位の低さによって運命が決められているということ、もしくは結婚相手が凡人であるがゆえに天才肌の女性が徐々に狂っていくということ、もしくは小さな貸しにより弱みを握られると言うこと。
    殺人とか事件とか大袈裟なものじゃなく、普通に誰もが経験しうることをテーマにしていて、やっぱり面白い、すごい。

    そしていつも、支える人がいるのもストーリーとしてテーマとして興味深い。
    全身全霊で息子を想う母、普通の幸せを望む夫、結局は離れざるを得ない恩人、文句をいわずに付き添う愛人、巻き込まれる愛人。
    そういうドロドロで劇的で、でも読んでいる誰もが心の底では理解できる人間関係のもつれと絶望感。
    さすがです。

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  • 『(屋根の上の部屋)』 ラスキン・ボンド, 1956年 感想 | 繊細な少年時代

    『(屋根の上の部屋)』 ラスキン・ボンド, 1956年 感想 | 繊細な少年時代

    🔽 基本情報 🔽
    The Room on the Roof
    Ruskin Bond, 1956
    (屋根の上の部屋)
    ラスキン・ボンド
    184 pages
    2024.08 読了
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    ラスキン・ボンド、日本ではあまり知られてないんですね。
    インド生まれ、インド育ちのイギリス系白人の彼はインドではその優しい文章と切ないノスタルジアに包まれたストーリーで人気。その彼が17歳の時に書いたデビュー作。

    彼自身の少年時代を描いたような小説で、イギリス系インド人の主人公の少年の英国人の保護者やインド人の友人との生活、なんだけど、典型的白人主義の家庭には馴染めず、かといって明らかに見た目も階級も違う自分は地元の友だちと同じ生活ができない。

    少年時代というのは誰もが「ここに馴染めない」と思うんだけど、彼の場合はその悩みはリアルで明確で、どれだけ彼自身が望んでも変えることはできない。

    いつかきっとと思っていた願いは非現実的に見えた。
    著者本人はイギリスに移住するも結局インドに帰ってくる。
    彼の愛する故郷はインドしかない。

    繊細な少年時代を描く一冊。

    日本では下記の作品集に含まれています

    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The Room on the Roof" Ruskin Bond (1956) Review | Sense of belonging
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    小学館世界J文学館 青い傘ほか ラスキン・ボンド作品集

    この作品集に含まれています


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  • 『イタリア民話集』イタロ・カルヴィーノ, 1956年 感想 | 民話は残酷

    『イタリア民話集』イタロ・カルヴィーノ, 1956年 感想 | 民話は残酷

    🔽 基本情報 🔽
    Ten Italian Folktales
    Italo Calvino, 1956
    Fiabe italiane
    イタリア民話集
    イタロ・カルヴィーノ
    96 pages
    2024年6月 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    イタリア民話集という本当はもっと大きな短編集からの抜粋10話。
    民話集ということでそれぞれは短く、道徳的な教えもある。
    ただ、眠っている姫と寝て自分を王様にしたりとレイプを正当化する話もあって生々しい。
    不幸なことや残酷なことも綴られている。
    ちゃんと本編もいつか読まなきゃ、評価も何ともいえない。
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    English review
    "Ten Italian Folktales" Italo Calvino (1956) Review | Misfortunes and cruelties
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  • 『死者の奢り 飼育』 大江健三郎 1958年 感想 | 閉塞感むきだし

    『死者の奢り 飼育』 大江健三郎 1958年 感想 | 閉塞感むきだし

    🔽基本情報🔽
    死者の奢り 飼育
    大江健三郎 1958
    320 pages
    2024年5月 読了
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    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    先延ばししていた、短編集。
    確かにすごい世界。
    戦争の悲劇というのは、もちろん酷い形で死者を出すこともあるけれど、人間の精神をここまで削り取るということでもある。
    死者、死体、死、ストーリーとして面白いし読みやすいんだけど、精神状態が安定してないときには避けたほうがいい。

    普通、世界が広がるという言い方をするけど、これは世界が狭まっている。
    閉塞感むきだしで、そのなかにある生身の人間関係。
    社会性とか柔らかい人間性とか博愛とか、今日明日の生存に無駄なものを削ぎとったギリギリの状態の人間性。
    そこには明らかな反戦のメッセージや、偽善者に対する嫌悪感があり、私達を締め付ける。


    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Lavish are the Dead, Prize Stock" Kenzaburo Oe (1958) Review | Confinement, hopelessness
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    死者の奢り・飼育 (新潮文庫)




  • 『キャロル』パトリシア・ハイスミス, 1952年 感想 | 少女は大人の女性と恋に落ちる

    『キャロル』パトリシア・ハイスミス, 1952年 感想 | 少女は大人の女性と恋に落ちる

    🔽基本情報🔽
    Carol
    By Patricia Highsmith, 1952
    The Price of Salt
    キャロル
    パトリシア・ハイスミス
    307 pages
    2024年4月 読了
    
    
    
    
    
    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    映画にもなったキャロル。まだ見ていないけど、確かにケイト・ブランシェットはこの雰囲気にピッタリ。
    発表当時はあからさまな女性同士のラブストーリーに世間が騒いだと思う、けどこれがパトリシア・ハイスミスの名前で出ていたらもっと騒がれたと思う。
    つい最近サラ・ウォーターズを読んだのでどうしても比べてしまいたくなるけど、キャロルの方はミステリーやサスペンスではなく、恋愛小説。

    クリスマスの運命の出会いからお互いに惹かれ、あてのない逃走劇も始まる。でも純粋な恋愛かどうか。どうも、愛する二人が醸し出すピンと張った空気とは違うテンションがある。ある少女が女性になる過程にようなテンションが。

    少年がおとなになるという物語はよくあるけど、これも同じような雰囲気。
    そういうほろ苦さのある雰囲気。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Carol" Patricia Highsmith, (1952) Review | Bittersweet love story

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  • 『太陽がいっぱい』 パトリシア・ハイスミス, 1955年 感想 | 冷淡で神経質

    『太陽がいっぱい』 パトリシア・ハイスミス, 1955年 感想 | 冷淡で神経質

    🔽 ログ 🔽
    The Talented Mr. Ripley
    By Patricia Highsmith, 1955
    太陽がいっぱい
    パトリシア・ハイスミス
    252 pages
    2024年4月 読了
    アマゾンで見る

    🔽🔽 読書記録 🔽🔽
    「太陽がいっぱい」
    この和訳のタイトルもいい、オリジナルもいい。

    有名な映画の原作。映画は古いアラン・ドロンのもアメリカのマットディロンのも見てストーリーは知っているのにそれでもハラハラドキドキで面白い。「キャロル」を書いた同じ女性作家ということは知らず、これはシリーズというのも知らなかった。

    リプリーの頭の中のことでいっぱい、いかに彼が冷淡で神経質で、そしていかにイタリアの青い空と対照的か、それがわかる読了後には日本語タイトルがピッタリだとわかる。
    追い詰められ、さらりと逃げ、また繰り返す。まさに心理スリラーの傑作、最近もネットフリックスでリメイクがあったはずだけど、これは何度も語り継がれる物語。
    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "The Talented Mr. Ripley" Patricia Highsmith (1955) Review | Cold and nervous
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  • 『日本残酷物語1 貧しき人々の群れ』宮本常一 他 著 1959年 感想 | その生活は残酷である

    『日本残酷物語1 貧しき人々の群れ』宮本常一 他 著 1959年 感想 | その生活は残酷である



    🔽🔽読書記録🔽🔽
    宮本常一さんといえば(大好きです)普通の日本人の近代史を語らせれば右に出るものはいない民俗学者。
    そして普通の大半の日本人というのは、貧しかった。
    他の国からの旅行者も口を揃えてその貧しさを書き残しているけれど、宮本常一民俗学とは、とにかく歩いてその土地の人の話を聞くことだけど、この本もすごい。
    百年ちょっと前の日本人の大半が貧しさに苦しみ、盗みや殺し、身体を売り家族を文字通り捨て、肉親だろうが我が子だろうが背には腹を変えられぬ底辺の生活をしていた。

    一般的に学校で習う歴史は社会の強者だけが記録され語られていて、弱者というか普通の人の生活は見えない。
    でもここには大衆の、普通の人のいくつもの例が掲げられている。

    それは残酷である、あるんだけど、残酷という言葉で終らせていいのか。
    子を間引きする親に他に生き延びる方法はあったか、行政はなにをしたのか。
    ただ食べるため赤の他人の船や旅人を襲う村人は残酷なのか。

    ここには女性の例が多くあるのがありがたい。
    女性はその人生をかき荒らされ、女だからと穢れとして下にみられ、一人の人間とは見なされず、家庭での立場も常に戦場で、しかも妊娠をする、そしてなぜかその責任を負わされる。
    炭鉱の女性の章もよかった。
    いかに家庭も社会も背負う女性がたくましいかがはっきりとかかれている。

    本来日本人なら義務教育で知っておきたい、知るべきな、日本の歴史。


    🔽 関連ページ 🔽
    English review
    "Japan cruel stories 1, flock of poor people" Miyamoto Tsuneichi (1959) Review | The history of the majority
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